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181104最新救急事情(206)長生きしたければトップを目指せ

月刊消防2018/11、p74-75
長生きしたければトップを目指せ

8月に北見市で養護教諭の全道大会が行われ、私が2時間講演をしてきた。応急処置の講演だったが最後に質問してみた。「平社員と社長さん、普通の人とお金持ちでもいいですけど、どちらが長生きすると思いますか」私は半々くらいかなと思っていたが、手を挙げてもらったところ2/3以上が平社員が長生きすると答えた。平社員が長生きすると答えた人に理由を聞いてみると「社長さんはストレスが多いから」とのことだった。しかし、疫学調査では異なった結果が示されている。

収入が多いほど長生き

ウオールストリートジャーナルの日本語版2014年4月22日号1)に、所得水準と平均寿命の関係が掲載された。55歳になった時点で、自分の所得が全体の何%に当たるかによって余命が決まるという。これは全米の2万6000人を対象としたコホート研究である。1940年に生まれた男性が55歳になった時点で所得が上位10%(日本では年収580万円以上)に入っていればあと35年、つまり90歳まで生きられる可能性が高い。逆に55歳になった時点で下位10%、日本でいれば生活保護レベルならあと24年しか生きられない。余命の差は11年もある。これに対し女性の場合は、収入レベルが上位10%と下位10%では9.5年の差が出ている。注目すべきは、男性はどんな収入レベルでも1920年生まれの人よりは余命が延びているのに対し、女性は下位10%だと1920年生まれより1940年生まれの方が余命が短くなっていることである。底辺の女性では喫煙率が高いことがその原因と筆者は考えている。

学歴が高いほど健康

これは日本で報告がある2)。2012年から2013年に大阪大学が行ったアンケート調査を元にしており、7000人が回答を寄せている。報告によると大卒者とそれ以外の人を比べると、大卒者は主観的健康度が良好であり、肥満、飲酒、喫煙率が低く、スポーツを行う割合が高い。また女性より男性の方が大卒者の健康度合いが高かった。筆者はこの傾向は50歳以上で顕著であり、49歳以下ではやや限定的と述べているが、これは進学率が関係しているらしい。2012年の時点で50歳以上の人の大学進学率は25%未満であり「選ばれた人」の色合いがあるためである。

社会的地位が高いほど長生き

社会的地位と寿命の関係も報告されている3)。170万人を13年以上追いかけ、この間に死亡した人は31万人にもなるという大規模コホート研究である。これによると社会的地位が低い人は高い人に比べて死亡リスクが男性では1.42倍、女性では1.17倍であった。死亡のリスクファクターとして地位が低い人は高い人に比べ男女とも喫煙率が2倍、糖尿病が1.7倍、大量に酒を飲む割合が1.5倍、高血圧が1.3倍であった。ただ肥満は男性1.04倍、女性1.17倍とそれほど高くはなかった。

なぜお金持ちは長生きできるのか

救急要請で数多くの傷病者宅を見てきた消防職員なら、答えは簡単だろう。自分を律することができるからである。律する力を持っているから社会的地位もお金も、そして健康も手に入る。大学進学については生まれた環境に依存する面はあるものの、バイトして学費や生活費を作ることができるし、成績優秀なら奨学金ももらえる。つまり大学に行く・大学を卒業することも自分を律せなければ不可能なのである。

社会的地位が上であるほど自分の思った通りに行動できる。東京都知事だった石原慎太郎は在任中の勤務時間が一日平均4時間だったと報じられているが、知事だから許されるのであって一般の都職員だとすぐ免職である。養護の先生たちが思っている「社長さんはストレスが多い」というのは一面に過ぎず、「ストレスよりもやりがいが勝る」のが正解である。

トップを目指せ

以前からおつきあいのあった消防職員が次々と定年退職している。今は定年後も再任用で消防に残ることができるのだが、署長クラスになると請われて新たな仕事に就く人もいる。その人たちを見ていると、新しい職場でも実に伸び伸びと思い通りに働いている。どんな小さな組織でもトップになる人はそれだけのものを持っているのだ感心する。

冒頭の平社員と社長の質問。手を挙げてもらって気が付いたことがある。それは「社長のほうが長生き」と答えた先生たちの年齢が総じて高いことである。校長や教頭を長年見ていく中で感じるものがあるのだろう。

文献

1)The wall street journal 日本語版2014年4月22日

2)社会保障研究 2017;2:379-92

3)Lancet 2017;389:1229-37





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