190325__12誘導心電図伝送が早期の冠動脈再灌流に有効だった症例

 
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症例

プレホスピタルケア 2019年2月20日号

12誘導心電図伝送が早期の冠動脈再灌流に有効だった症例

長谷川和宏

愛知県豊橋市消防本部

著者連絡先

長谷川和宏

愛知県豊橋市消防本部

〒440-8501 愛知県豊橋市今橋町1番地 (豊橋市役所 西館5階) 

電話番号/0532-51-3105 

 

目次

はじめに

愛知県豊橋市は愛知県南東部に位置する人口38万人の中核市である。救急隊8隊で14,447件(平成28年)の出動に対応している。また平成28年9月には市内の心筋梗塞対応4医療機関と12誘導伝送システムの運用を開始ており、28年9月から29年2月までの伝送件数は312件であった。

本稿では12誘導心電図伝送が早期の冠動脈再灌流に有効だった症例について報告する。

症例

66才男性。

自宅で急に冷汗を伴う締め付けられるような胸痛を発症した。様子を見ていたが改善せず、連絡を受け帰宅した妻が救急要請した。発症から救急要請まで30分経っている。

既往歴:胃潰瘍

接触時の状況

救急隊接触時、傷病者は玄関の踊場にいた。主訴は冷汗を伴う胸部締めつけ感。嘔吐もしていた。

意識は清明。呼吸:24回/分、脈拍:55回/分、血圧108/50mmHg (自動血圧計)、SpO2:98%。通報内容から急性冠動脈症候群を疑い、12誘導心電図を装着したところV2~V6でST低下、II、III、aVFでST上昇を認めた(図1)。直ちに医療機関に連絡し収容依頼するとともに12誘導心電図の伝送を行なった。

図1

12誘導心電図。V2~V6でST低下、II、III、aVFでST上昇を認めた

 

病院では心電図を確認し、急性下壁心筋梗塞の診断にてただちに冠動脈再還流の準備に着手した。病院到着時には救急玄関から心カテーテル室へ直接傷病者を搬入した。冠動脈造影にて右冠動脈#1の100%閉塞を確認した(図2)。直ちに再還流に着手し、閉塞解除に成功した(図3)。

図2

来院時の冠動脈造影。右冠動脈#1の100%閉塞

 

図3

再還流後。閉塞解除に成功した。

 

救急隊および病院における時間経過を図4に示す。接触から3分で心電図を病院と共有した。ここから病院での受け入れ準備が始まった。予定していたカテーテル患者の入室を調整したり、カテーテルチームの確保、またCoronary Care Unit (CCU)への連絡等をおこない、万全の態勢で救急隊の到着を待ち構えることができた。

傷病名は第2病日にCCUを退室、第11病日で退院した。

 

図4

時系列

 

考察

本症例では現場と医療機関で12誘導心電図を共有することで、再灌流までの時間を最大限短縮することができた。傷病者を待ち受ける医療機関では、救急隊からの言葉による情報だけでカテーテルチームを動かすことは容易ではない。救急隊からの情報の中に12誘導心電図が加わる事で医療機関到着前に医師の診断がなされ、搬送時間が医療機関での準備時間となり、再還流までの時間短縮に繋がった。

今回の心電図では、筆者はV2~V6のST低下は認識したものの、II, III、aVFでのST上昇については現場では認識できなかった。つまり筆者一人で従来の標準肢誘導をチェックていたのなら、医療機関到着まで心筋梗塞と気づけなかった可能性があった。このことは12誘導心電図伝送の有用性を示すとともに、筆者にさらなる学習を迫る症例であったといえる。

結論

(1)12誘導心電図伝送が早期の冠動脈再灌流に有効だった症例を経験した

(2)12誘導心電図伝送は傷病者の利益になるとともに、救急隊員にさらなる学習を迫るものである

 

 

 

 

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