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191001[投稿・研究] 9日間で3度のアレルギー発作を起こした小児の1例 伊予消防等事務組合消防本部 神田貴章

プレホスピタル・ケア 2019年8月20日号

9日間で3度のアレルギー発作を起こした小児の1例

神田貴章

伊予消防等事務組合消防本部

著者連絡先

神田貴章

かんだたかあき

伊予消防等事務組合

救急救命士

〒799-3111 愛媛県伊予市下吾川950-3

電話: 089-982-0119

はじめに

10歳の男児が9日間で3度のアレルギー発作を起こしたにもかかわらず、患者情報を事前共有していたことが奏功し、いずれも発症早期の段階でエピペンが投与され、軽症であった症例を経験したので報告する。

症例

10歳男児。現病歴は気管支喘息。アレルゲン検査ではエビ、カニ、豚肉、蜂刺傷を指摘されている。

(1)初回

自宅でチョコレートを食べた後、呼吸苦と右耳の腫れが出現した(図1)とのことで救急要請。エピペンを処方されており、母親がかかりつけ医に相談したところ、処方しているエピペンを打つよう指示されたが怖くてできなかった。

主訴は呼吸苦、右耳介腫脹、掻痒感、腹痛である。皮膚発赤なし、嗄声なし。呼吸苦については呼吸数が30回でそれほどの重篤感はなかった。

観察結果を表1に、時間経過を表2に示す。収容依頼の際、エピペン投与について医師に相談すると、救急隊の判断に任せるとのことであったため、容体悪化を防ぐために家族と相談の上処方されているエピペンを救急隊長が投与した。投与後、症状は改善し、悪化することなく病院収容となった。


表1

初回の観察結果

意識:JCSⅠ-1

呼吸数:30回/分

脈拍数:86回/分

血圧:132/84mmHg, 再検にて121/67mmHg

SpO2 :95%(Room air), 100%(8L酸素投与下)

体温:36.9℃


表2

初回の時間経過

発症:1時間前

覚知:0分

接触:+11分

現場出発:+17分

エピペン投与:+27分

病院到着:+49分


図1

初回の症状一覧

(2)2回目

1回目から5日後、学校での給食は白飯、牛乳、磯煮、野菜コロッケ、胡麻酢和えであった。食事開始後30分で呼吸苦の症状が現れ、様子を見ていたが、背部、腹部に掻痒感が出現し顔色が悪くなったと(図2)のことで救急要請。要請直前に小学校の教師がエピペンを使ったため、投与時刻は覚知より前になっている。

観察結果を表3に、時間経過を表4に示す。接触時の主訴は若干の呼吸苦のみである。接触時には既に回復傾向であり。搬送中に呼吸苦も改善して病院収容となった。


表3

2回目の観察結果

意識:清明

呼吸数:やや呼吸苦

脈拍数:120回/分

血圧:172/67mmHg, 再検にて140/46mmHg

SpO2 :99%(Room air), 100%(2L酸素投与下)

体温:37.0℃


表4

2回目の時間経過

食事開始:-1時間

発症:-31分

エピペン投与:-1分

覚知:0分

接触:+8分

現場出発:+13分

病院到着:+45分


図2

2回目の症状一覧

(3)3回目

2回目の3日後。通報1時間前からアレルギー症状があるとのことで救急要請。

ここでは通信指令員が通報してきた母親に口頭指導を行っている。覚知から1分後に母親がエピペンを投与した。

観察結果を表5に、時間経過を表6に示す。観察では血圧が高いくらいであった。最終の食事が昼頃で卵とアスパラを食べ、夕方に発症するまで患児の話では何も食べていないということであった。通報前は呼吸困難があったが、接触時には安定した状態であり、搬送中も特に変化はなかった。


表5

3回目の観察結果

意識:清明

呼吸数:24回/分

脈拍数:97回/分

血圧:144/58mmHg, 再検にて110/51mmHg

SpO2 :96%(Room air)⇒100%(8L酸素投与下)

体温:36.6℃


表6

3回目の時間経過

最終摂食:-4時間20分

発症:-1時間

覚知:0分

エピペン投与:+1分

接触:+19分

現場出発:+26分

病院到着:+1時間8分


考察

対策として、当消防本部では管内の教育機関(幼稚園・保育園から高校まで)に情報提供を依頼し、保護者の了承を得てエピペンが処方されている児童生徒の情報を通信指令課と全救急隊で共有し対応ができるようになっている。3回目で通信指令員が母親にエピペンの口頭指導を行ったのはその成果である。

図3は本事例の患児について母親が記入したものである。その他のところに「アレルギーに対して敏感になっており、上記以外でも症状が出る可能性がある」とある。さらに患児の弟も同じようなアレルギーがあり、消防本部で情報を受け取っている。

本事例はいずれも大事に至らず軽症であった。今回のエピペン投与者はいずれも異なるが、情報共有化し活動環境を整えていたことが軽傷で済んだ要因と考える。今後は教員や保護者対象の救命講習時にエピペンの使用方法を取り入れるなどして、本人、また家族等が躊躇することなく投与できる環境を整えていくことが必要と考える。

図3

患者情報票

本患児のもの

結論

(1)9日間で3度のアレルギー発作を起こした小児の1例を報告した。

(2)1回目は救急隊が、2回目は教師が、3回目は母親がエピペンを投与した。

(3)学校からの情報提供と消防本部内での情報共有が、3度の発作全て軽症で済んだ要因と考える。

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