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200309救急活動事例研究(34)15回の除細動と約1時間の胸骨圧迫を要し、社会復帰した難治性心室細動の一例( 十日町地域消防本部 玉田正樹 )

近代消防 2020/2/10号 救急活動事例研究(35)

15回の除細動と約1時間の胸骨圧迫を要し、社会復帰した難治性心室細動の一例

玉田正樹

十日町地域消防本部

1.十日町地域広域事務組合の位置・地勢

この圏域は新潟県の南西部に位置し、東西32㎞、南北43kmの広がりをもち、総面積は760.60km2で新潟県の6.1%を占める地域である。周囲は長岡圏、柏崎圏、上越圏、魚沼圏及び長野県の北信圏に隣接している(図1)。圏域の南東側県境は魚沼圏との境界として標高2,145mの苗場山を中心とする山岳地帯に連なり、西側は上越圏との丘陵境界に標高540mの鍋立山がある。圏域の中央部を信濃川が長野県境より北に貫流している。圏域の最南東部は清津峡(図3)をはじめとして上信越高原国立公園に指定されているほか、信濃川によってもたらされた雄大な河岸段丘は変化に富んで美しい自然環境をなしている。また国内有数の豪雪地でもある。

図1

管内図

長岡圏、柏崎圏、上越圏、魚沼圏及び長野県の北信圏に隣接している

図2

清津峡

2.十日町地域消防本部の概要

当組合の構成市町は、1市1町(十日町市、津南町)で、人口は62,147人(H31.3.31現在)(図3))。消防本部は1消防署、2分署の構成で、職員数は115名となっている(H31.4.1現在)。職員のうち救急救命士が33名(薬剤認定救命士33名、気管挿管認定救命士12名、処置拡大認定救命士33名、ビデオ喉頭鏡12名、指導救命士3名)である(平成30年4月1日現在)。平成30年中の救急出動件数は2,953件であり、前年に比べ36件増加している。

図3

管内図。構成市町


3.症例

(1)概要

心肺蘇生法を知らない一般市民に対して行われる口頭指導からはじまり、15回の除細動と約1時間の胸骨圧迫ののち社会復帰した難治性心室細動症例を経験した。

(2)症例

70歳男性。5月某日朝7時37分「呼びかけ反応なし、呼吸なし」との119番通報があり救急隊1隊3名で出動した。既往は心筋梗塞。通信司令員により直ちに心肺蘇生の口頭指導が開始された。早朝でドクターヘリ運行時間外であったためヘリの依頼は行なっていない。

救急隊現場到着時3階建て一般住宅の2階フローリングのリビングで家族が胸骨圧迫を実施中。傍らのスマートフォンからスピーカーで口頭指導が続いていた(図4)。家族によれば目撃のある心肺停止である。バイスタンダー心肺蘇生は良好。心肺停止を確認し、心肺蘇生法を開始。パッド装着後心室細動を確認した(図5)。直ちに除細動を行い、心肺蘇生法を続けるとともに、特定行為指示要請を行った。自動心肺蘇生器「クローバー3000」(図5)を装着(図6)し2回目の除細動を実施後現場離脱した。離脱後車内収容までに3回目、4回目の除細動を行った。

車内収容直後に5回目の除細動を行い、静脈路確保を実施(図7)。6回目の除細動後一時心拍再開となるが、すぐに心室細動出現のためアドレナリン投与を行い、7回目の除細動ののち、二次病院収容となった。

院内では自動心肺蘇生器「クローバー3000」を継続使用し、院内で処置実施を補助した。院内では気管内挿管、8回の除細動や各種薬剤投与が医師から行われ(図9)、その後心拍再開・体動出現でドクターヘリにより従来のかかりつけ病院へ転院することとなった。

ドクターヘリランデブーポイントへの搬送は輸液ラインや気管内挿管の抜管などに注意した。その後ドクターヘリへ引き継ぎ帰署した。その後傷病者は後遺症なく社会復帰した。

時間経過を表1に示す。

図4

バイスタンダー心肺蘇生。傍らのスマートフォンからスピーカーで口頭指導が続いていた

図5

接触時の心電図

図6

クローバー3000

図7

クローバー3000を装着したところ

図8

静脈路確保

図9

院内処置概要

表1

時間経過

(3)考察

本事案は、計15回の除細動を実施し、直近二次病院に収容し心拍再開後、ドクターヘリによる従来のかかりつけ病院へ搬送された事例である。しかし、覚知時でのドクターヘリ要請については、運行開始前の時間帯であり、三次病院までは陸路搬送で30分、心筋梗塞対応可能な別の三次病院は陸路搬送で60分かかる。

心肺蘇生ガイドライン2015では除細動やアドレナリン投与で解除できない心室細動は抗不整脈薬の投与やさらには体外循環式心肺蘇生法も検討されるが、本症例では長い陸送時間を除細動とアドレナリン投与で対応するしか方法はなかった。

長時間の心肺蘇生を要した患者の多くは死亡するか生存退院しても神経学的に後遺症を認めるが、まれに転機良好となる事例も確認できる。今回は後者の例であり、救急隊として、今後の活動のモチベーション向上に繋がる症例であった。

(4)結論

1)心肺蘇生法を知らない通報者への口頭指導から始まり、約1時間に及ぶ心肺蘇生と院内処置、合計15回の除細動が行われましたのちに社会復帰した症例を経験した。

2)長時間に及ぶ心肺停止状態の傷病者が無事社会復帰したことは、救急隊として今後の活動のモチベーション向上に繋がる。

プロフィール

名前

玉田正樹(たまだまさき)

所属

十日町地域広域事務組合

出身地

新潟県十日町市

消防士拝命年

平成14年

救急救命士合格年

平成14年

趣味

料理

ここがポイント

目撃のある心肺停止で家族が胸骨圧迫をしていたことが社会復帰できた最大の理由である。15回も除細動を行えば動くか泊まるかすると思うのだが、それだけ胸骨圧迫が有効だったのだろう。
難治性心室細動への除細動方法として、Double Sequential External Defibrilationが試みられている1)。これは2台のAEDを一緒に放電させる方法である。電極は心臓を挟むように前胸部と背部につける。AEDが2台なので電極は4枚つけることになる。ビデオを見ると、操作する人は2台の放電スイッチを同時に押している。2019年に出た論文1)によれば除細動が1回で成功する率は従来法と同じ、放電回数が4回から8回の難治性心室細動では2台放電の方が停止率が高い。難治性心室細動に対しては日本でも広まる可能性がある。

1)Resuscitation 2019;139;275-81

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