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200418救急活動事例研究(36)路上墜落分娩の1例 (松山市消防局救急ワークステーション 松原 強)

近代消防 2020/3/10号 救急活動事例研究(36)

路上墜落分娩の1例

松山市消防局

救急ワークステーション

松原強

著者連絡先

松原強

まつばらつよし

松山市消防局中央消防署

〒790-0811愛媛県松山市本町6丁目6-1

電話:089-926-9222

松山市消防局の紹介

松山市は愛媛県の県庁所在地(中核市)である。県ほぼ中央の松山平野に位置し(図1)、温暖な瀬戸内海気候であり住みやすく恵まれた環境にある。人口は513,207人で四国一の大都市である(平成30年4月現在)(図2)。

松山市消防局は1本部5課・4消防署・5支署・2出張所・1救急ワークステーション(WS)からなり、消防隊は4消防署・5支署・2出張所・1救急WSの計14隊である。職員数459名で救急隊員107名、救急救命士は75名で女性は3名含まれる(平成30年4月現在)(図3)。

松山市救急ワークステーション(WS)は平成27年10月から派遣型から常駐型へ移行した。派遣型から常駐型へ移行した形式は日本初、常駐型の形式は中四国初である。

高度救命救急センター(愛媛県立中央病院)隣接地に位置し、救急隊1隊(隊長・指導救命士、隊員・救急救命士)を配置を配置している。WS設立の目的は「重症症例に対する救急車への医師同乗」「救急隊員の生涯教育」「医療との連携強化」の3つを調和させることで救命率の更なる向上を図り、市民の安全安心に貢献することにある。

図1

松山市の位置と周辺図

図2

松山城

図3

松山市消防局と松山市消防局マスコットキャラクター「はっぴーカバー君」

症例

23歳女性(妊娠38週、初産婦、定期受診あり)

5月某日覚知17:28。気温24℃天候晴れ。通報は「路上で子供が生まれた、泣いていない」であった。現場直近の救急隊と救急ワークステーション隊が出場した(表1)。時間経過を表2と図8に示す。覚知から約10分後に現場直近救急隊が現着し、それから8分後に医師同乗したWS隊が現着し、傷病者を医師の管理下に置いた。現場直近救急隊が母親を、WS隊が新生児を、それぞれ医師の指示で総合周産期母子医療センターまで搬送した。現場直近救急隊が現着時、新生児の心肺停止(CPA)を確認し、WS隊が現場出発直前に心拍再開を確認している。

表1

出場部隊の資格

表2

時間経過

図4

時間経過の比較図

先着した現場直近救急隊の現着時の状況を述べる。

母親は路上に右側臥位(図5)、母親のニットパンツの大腿部分が膨らみ(図6)、完全娩出状態であった。中等量の出血も認めた(図7)。意識は清明で、頻呼吸、やや苦悶状態、下腹部の疼痛を訴えた(図8)。

救急隊により新生児を露出させ観察を実施、心肺停止(CPA)(図9)であったため直ちに心肺蘇生(CPR)を開始し、それと同時に臍帯のクリッピングを実施した(図10)。

先着救急隊到着から8分後、WS隊現着時には母親は路上に右側臥位の状態で、その隣で先着救急隊が新生児にCPRを実施していた。医師が臍帯切断後、新生児にはCPRを継続しながら車内収容。母親は看護師が静脈路確保を実施後に車内収容した。

新生児に対しては車内収容後直ちに口腔、鼻腔の吸引を実施(図11)、酸素投与下でのCPRを実施(図12)した。医師により右下腿部に骨髄穿刺が行われ、薬剤が投与された。現場出発直前に弱く自発呼吸が発生、右上腕動脈が触知可能となったため、酸素投与中止。胸骨圧迫も中止し、吸引および人工呼吸を継続しながら病院へ搬送した。新生児の自己心拍再開後、搬送中の心電図を図13に示す。現場到着時はCPAでアプガースコア0点であったが、自己心拍再開後はアプガースコアは3点となった。

母親については、車内収容後から病院到着まで意識は清明で容態変化はなかった。下腹部痛を激しく訴えていたため、状況の詳細については聴取できなかった。

母親は、5日後に退院。新生児(出生体重3,019g)も約2週間の入院治療後、後遺症なく退院し順調に成長している。

図5

母親は路上に右側臥位

図6

母親のニットパンツの大腿部分が膨らんでいた

図7

中等量の出血

図8

母親の意識は清明で、頻呼吸、やや苦悶状態、下腹部の疼痛を訴えた

図9

新生児は心肺停止

図10

心肺蘇生開始。同時に臍帯をクリッピングした

図11

口腔、鼻腔の吸引

図12

酸素投与下でのCPRを実施

図13

新生児の自己心拍再開後、搬送中の心電図

考察

心拍再開の要因として、

(1)救急隊の適切な観察や有効なCPRの継続、

(2)早期の医師管理下での救命処置,

(3)医師、看護師とのスムーズな連携活動の3点が挙げられる。

課題としては

(1)屋外での事案でありプライバシー保護はどうするか

(2)傷病者2名かつ新生児などの情報から応援要請を考慮すべきであった。また、

(3)分娩と新生児CPAというレアケースであったため、隊員の心理的動揺が見られた。

今回のようレアケースでは、現場経験の伝承と教育の継続が不可欠である。具体的には

(1)検証で問題点を抽出し、改善プランを救急隊員で共有(図20)。

(2)改善プランを基にしたWSでの個別教育の充実や、集合教育を実施(図21)。

(3)分娩や集団救急等のレアケースな経験を、若い救急隊員に伝承するシミュレーション訓練会の実施(図22)

(4)医療機関と顔の見える関係の構築と医療機関と消防の連携強化

これらが「安全・安心」なまちづくりに貢献できる組織であるうえで重要である。

図14

検証で問題点を抽出

図15(女性指導者の顔が載らないようにトリミングしてください)

WSでの個別教育の充実や、集合教育を実施

図16

若い救急隊員に伝承するシミュレーション訓練会の実施

結論

(1)路上墜落分娩の1例を報告した。

(2)救急隊と医師らによる適切な処置によりCPAであった新生児は現在順調に成長している

(3)レアケースをどう伝え教育しているか考察を加えた

【プロフィール】

名前:松原 強(まつばら つよし)

所属:松山市消防局 中央消防署

出身地:愛媛県松山市

消防士拝命年:平成14年

救命士合格年:平成28年

ここがポイント

患者としては心肺停止の新生児1例、褥婦1例の2症例が同時に発生したものである。初産婦、しかも満期産であるにもかかわらずなぜ路上で墜落分娩に至ったかについては筆者らは触れていない。

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新生児の蘇生については近代消防2019年6月号p〇〇「今さら聞けない資機材の使い方」で詳しく解説している。それによると蘇生の初期処置として(1)保温、(2)体位保持、(3)気道開通、(4)皮膚乾燥と刺激、の4項目を行い、次に呼吸・心拍の有無を確認し、人工呼吸と胸骨圧迫を1:3で開始するとなっている。テンポは1分間に120回。「1、2、3、バッグ(バックバルブマスク換気)」「1、2、3、バッグ(バックバルブマスク換気)」と声を出して行い、30秒ごとに呼吸・心拍の確認を6秒間で評価する。この機会に確認しておこう。

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