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210929最新救急事情(221-1) 新型コロナが心肺蘇生に与えた影響

プレホスピタルケア 2020/04/20日号 p86

最新救急事情(221-1)

新型コロナが心肺蘇生に与えた影響

新型コロナは変えたものの一つに救急医療体制がある。救急隊にとって身近なところでは厚生労働省の通達によりバイスタンダーCPR(cardiopulmonary resuscitation, 心肺蘇生)で人工呼吸が禁止されたことであろう。Hands-only CPRが出てからも細々と教えられてきた人工呼吸であったが、新型コロナにより完全廃止になってしまった。

現場では新型コロナによってどう変わっただろう。文献を調べてみた。

バイスタンダーのやる気が低下

アメリカ・カリフォルニア州から2021年1月に出た論文である1)。新型コロナ出現以前の2019年4月1日から5月31日までと、新型コロナ第1波の真っ最中の2020年3月1日から5月31日までを比較している。

アメリカの新型コロナ患者は第1波として2020年3月から発生し始め、2020年4月9日に一日34699人の感染者発生でピークを迎え、6月3日に19987人まで感染者が減少した。しかし翌日6月4日には再上昇を始め2020年7月24日をピークとする第2波へ切れ目が見つからないまま突入している。カリフォルニア州は人口が多いこともあり、新型コロナ感染者数は常にトップもしくはそれに準ずる州になっている。しかしながら論文が書かれた地区の病院外心停止患者の発生率は変化はなく、新型コロナの感染者数もこの報告が書かれた地区では10万人当たり140人程度でニューヨークの10万人当たり3000人とは数が桁違いに少ない。つまりこの論文はバイスタンダーの心理状態を反映したものである。

さて、その第1波でカリフォルニアはどうなったか。まずバイスタンダーCPRを受ける割合が有意に減った。以前は61%の患者がバイスタンダーCPRを受けていたのだがこれが51%になった。バイスタンダーがAEDを使う割合も5%から1%へと有意に減少した。覚知から現場到着までの時間は6.6分から7.6分へ有意に遅延し、生存退院率は14.7%から7.9%へ有意に減少した。

患者が卒倒する場所は次の報告2)にある通り9割が家庭もしくは施設であり、倒れるのは見知った人である。それでも手を付けられなくなるのだから新型コロナの恐怖は凄まじいものがある。

救急隊が蘇生しない割合が上昇

同じ時期のミシガン州での救急隊の活動も見てみよう。ミシガン州は五大湖に面したアメリカ北東部の州であり、州都は自動車で有名なデトロイトである。ミシガン州の外出禁止令(stay-home order)は2020年3月23日から5月31日まで発令されていたので、この期間の病院外心停止患者に対する救急隊の活動を2019年の3月23日から5月31日と比較したものである2)。

院外心停止患者数は2019年が1162例、2020年が1854例であった。この死亡数増加は新型コロナによるものと筆者らは考察している。患者背景で有意差のあるものは、外出禁止令下では男性が増加、白人の割合が上昇した。外出禁止例にも関わらず倒れた場所に差はなく、家庭内が7割弱、福祉施設が2割であった。蘇生に関してはバイスタンダー・救急隊員問わず心肺蘇生を受けた割合は2019年が50%, 2020年が46%と減少はしているもののp=0.06で有意差なし。器具を使った気道確保は46%から21%と半減している。発見時に死亡している(death on scene)割合は53%から76%へ有意に増加、心肺蘇生を行わなかった割合も23%から29%へと有意に増加している。

死亡者数が1.6倍になり、しかもその増えた分は新型コロナ患者なら、このような結果になるのは十分理解できる。

救命講習を開かない国が半分

新型コロナが広がり、バイスタンダーにも感染の可能性が危惧される現状で救命講習はできるのか。ヨーロッパの状況を調べた報告がある3)。質問は2020年10月の時点だからそれほど前の話ではない。

筆者らがアンケートを送ったのはヨーロッパの心肺蘇生を管轄する組織で18カ国。その全てから回答を得ている。その結果、一般市民を対象とする救命講習開催を中断しているのが50%、制限をかけて開催しているのが50&であった。制限で最も数が多かったのが人工呼吸禁止と胸骨圧迫のみの蘇生術を教えることであった。これに対して医療従事者に対する救命講習では53%が制限をかけ開催、30%が従来通りの講習を開催、17%が開催を中断していると回答した。

いつまで続くのか

この前自分の病院の日直を久しぶりにした。最初の患者は発熱した86歳の女性で、施設入所中であった。施設で救急車を呼んだのだが10か所近くの病院に断られて(当院も一度断っている)、1時間以上電話をかけ続けてようやく当院に運ばれてきたものであった。発熱の患者は民間病院は受け入れてくれない。民間病院で新型コロナを扱うのはリスクが高すぎるし、2類感染症だから断る自由がある。

新型コロナも発生から1年半経ち相当のことが分かってきた。個人的には今の2類感染症、中身はSARSや鳥インフルエンザ、赤痢、0-157といった誰でも死亡する分類はやめてはしかやエイズ並みの5類相当に落とすべきと考えている。この原稿が出る時点で扱いはどう変わっているだろうか。

文献

1)JACC Clin Electrophysiol. 2021 Jan;7(1):6-11
2)JAMA Netw Open. 2021 Jan; 4(1): e2032331.
3)Resusc Plus. 2021 Mar;5:100075. doi: 10.1016, Epub ahead

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