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220913最新救急事情(225-2)体外循環補助を用いたCPR

プレホスピタルケア 2021/12/20日号

最新救急事情(225-2)

 

はじめに

 
体外循環によって患者を蘇生させる方法がある。装置の小型化・高性能化に伴って実施症例も増えているようだが評価は定まっていないようだ。


体外式心肺疎生術

 
正式名称をExtra(=外側)corporeal(=身体上の) cordiopulmonary (=心臓と肺)resuscitation(=疎生術)といいECPRと略される。理解しやすいようにeCPRと書いた文献もある。心肺疎生ガイドライン2020では「成人の二次救命処置」の節で「体外循環補助を用いたCPR」と書かれている。
患者の動脈と静脈に太い管を入れ、血液循環はポンプで、呼吸は膜型肺で行うことで脳循環を維持し蘇生させるものである。患者の心臓も肺も不要なので、脳さえ大丈夫なら体外循環を回し続ける限り生かせておける。心臓手術のために開発された技術で長い歴史があり、装置の小型化によってベッドサイドでも行われるようになった。記事を検索するとアスファルトの上でECPRをしている写真もあるので驚く。なお、新型コロナでテレビでも取り上げられるようになったECMO(Extracorporeal membrane osygenation, 体外膜型酸素化)は体外循環のうち肺機能の補助を目的とした装置である。

患者のふるい分け

 
心停止患者全例に人工心肺をつけていては医療費がいくらあっても足りない。厚生労働省研究班のECPR導入基準では・年齢20〜75歳・初療室到着までの時間が45分未満、との条件が付いていた1)が、実際に研究班に登録された症例では年齢制限のない施設もあるし、時間制限のない施設もある2)。だが最初の心電図波形が除細動可能波形で、通常の心肺蘇生に反応しない患者であることは共通している。
兵庫県災害医療センターからは心電図についての検討報告が出ている3)。筆者らは最初の心電図解析で除細動可能な波形がてでいることがECPRで回復できる因子であると述べ、しかしECPRを導入する前に除細動不可能な波形に変化することがあるので、そのECPRを導入する直前の心電図と転帰を調査した。対象となったのは2010年から2020年まででECPRを受けた患者102例。患者は2つの群に分けた。心停止群はECPRを導入するどこかの時点で除細動不能な波形を記録したもの33例、非心停止群はずっと除細動可能な波形であったもの69例である。評価は病院内死亡率とした。
 
全体として、神経学的に重度の後遺症を負った患者は76例(74.5%)で最終的には全体の47例(46.1%)が死亡している。死亡率は心停止群が69.7%, 非心停止群が34.8%であり有意差を認めた。
 

効果はある

 
効果について心肺疎生ガイドライン2020では「ECPRは、実施可能な施設にいおて一定の基準を満たした症例に対し、従来のCPRが奏功しない場合に行う救命治療として提案する(弱い推奨、エビデンスの確実性:非常に低い、Grade 2D)となっている。エビデンス Grade 2Dとはエビデンスがあるかないか不明の最低レベルである。
このECPRについてメタアナリシスの論文がアメリカから出ている4)。筆者らはECPR論文のうち、病院凱心停止患者に対して無作為患者割り当てを行なっている44論文3097例について検討を加えた。患者の平均年齢は52歳で男が79%、心電図で最初に確認した波形の60%は心室細動か心室頻拍であった。生存退院率は24%, 神経学的に良好な状態で生存退院したのは18%であった。30病日と90病日での生存率は18%であった。この結果を受け筆者らはECPRの効果は確実であるが集中治療についての資源を消費するようになるだろうと述べている。
 

急性腎傷害が起きる

 
蘇生に関しては有用とされているECPRだが、費用以外にも問題はある。ドイツからは急性腎障害について報告が出ている5)。2016年1月から2020年12月まで筆者らの施設でECPRを受けた患者95例について検討を加えている。このうECPRの後に急性腎障害をきたした患者は60例、全体の63%にもなる。43例(45%)は透析を必要とした。急性腎障害になった患者は入院当初からクレアチニン、尿素窒素、クレアチニンキナーゼの値がならなかった患者より高く、ECPR導入24時間後のクレアチニンキナーゼの値も高かった。人口肺導入の割合も急性腎障害になった患者で高かった。死亡率は急性腎障害の有無で有意差はなく、非腎不全患者で86%、腎不全患者で70%であった。筆者らは入院時の尿素窒素の血中濃度が腎障害の予測因子となるとしている。
 

目標体温管理を見ているようだ

 
今まで救えなかった人をECPRが救ってくれるのは間違いない。だが、この治療法が始まって少なくとも20年は経っている1)のにまだ評価が定まらないのは不思議だ。目標体温管理(脳低体温療法)のように評価がガラッと変わる可能性もあるのかとも思う。
 

文献

 
1)心臓 2014:46(6):687-90
2)Acute Med Surg 2021;8(1): e647
3)Shock 2021 Nov 1;56(5):701-8
4)Am J Emerg Med 2021 sep 2;51:127-38
5)Gaisendrees C: Perfusion 2021 Oct 9; Online adead

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