雑誌 健康教室 応急処置アップデートQ and A
2024年03月号(2024/2/10発行号)
応急処置Q and A
緊急時にはどこを受診する?
目次
Q
顔のけがでは、後遺症が残ったり、顔に傷が残ったりするという心配があり、どこの科を受診すればいいか悩みます。
例1:ドッジボールをしていて、転がったボールを追いかけることに夢中になり、鉄棒に鼻と歯をぶつけた。
→鼻は腫れて骨折疑い、前歯は折れていた。どちらも診てもらえる総合病院を受診(小学校)
例2:ソフトボールをしていて、バットがキャッチャーの顔面に当たった。(キャッチャーミット等の防具は着けていなかった)→出血があり、歯が唇を貫通していたため、押さえて止血をした。形成外科のある総合病院を受診(中学校)
例3:体育でソフトボールをしていて、飛んできたボールを受け損ない、眼に当たった。→顔が腫れ上がり、眼は開かない状態で鼻出血もあった。また頭痛と吐き気を訴えた。頭痛や吐き気があったため、救急要請した。
A
受診および処置の順番は以下の通り
命に関わる→機能に関わる→容姿に関わる
同列なら、待てないものが前、待てるものは後になります。
(001)
解説
Qの内容は「重症度緊急度の評価」といって、救急隊員が研修で叩き込まれる重要な項目です。また医師にとっても悩まされる項目でもあります。今回は大まかな流れを示します。
1.命に関わる病態は救急車
心臓が止まった、喘息発作で顔が紫色になってきた、出血しているのに止血できない、などの命に関わるものは全て救急車対応になります。救急車が来るまでは職員全員で応急手当てをします。
2.機能に関わる病態とは(002)
目、鼻、口、それに骨折もここに含まれます。それらが複数怪我している場合は、処置を急ぐものから担当科に送り込みます。目と鼻と口を負傷している場合は、鼻出血や口腔内出血で窒息の可能性があればまず耳鼻科医師もしくは口腔外科医師に止血してもらい、次に失明の可能性があれば眼科医師の診察が必要です。目が何ともないのなら、もう一度耳鼻科で鼻骨骨折の処置を受けます。
3.容姿は最後になる(003)
醜形が残るのは本人にとっては苦痛です。幸いにも今は技術が進み、多くの醜形に対してそれを緩和する方法を提案できるようになりました。
4.Qの受診科を考えると
総合病院へ行っても、病院内では初診医師が処置の順番を考えて医師に連絡をつけます。
例1は鼻骨骨折と歯牙損傷です。鼻出血さえ止まれば両方とも急ぐ外傷ではないので、鼻血を止めつつ耳鼻科と歯科の先生を呼びます。
例2は歯牙による口唇の杙創です。歯が折れているようなら口腔外科もしくは歯科、折れていなければ口腔外科、歯科、耳鼻科、形成外科のいずれも対応可能です。
例3は頭が心配ですので脳外科などが対応しますが、意識があるのなら一番初めに視力に異常がないか確認します。頭痛と吐き気は顔面を打撲したためであって頭蓋内病変の可能性は少ないと考えるからです。頭蓋内病変を否定した上で眼科や耳鼻科の診察に回ります。
養護の先生が経験した症例
5月下旬の放課後、グラウンドに遊びに来ていた本児(小3)とその兄(小5)と兄のお友達数名で、トスバティングをしていた。本児はその近くで遊んでいた際、バットを(金属)を振っていた子の後ろに行ってしまい、本児童の左尻のあたりにバットが当たり負傷した。グラウンドに駆け付け、意識があることが確認でき、止血しながら保健室へ歩いて移動した。左眼瞼が(1~2ミリ程度)切れていたが圧迫止血ですぐ止まり、ガーゼを当て包帯を巻いた。瞳孔異常や眼球運動は正常で、複視もなかったが、眼瞼の腫れがひどく、痛みの訴えも強くあった。ガーゼの上から冷やし、連絡を取った保護者の到着を待った。同時に、兄の方の担任が兄やその友達たちに状況を聞き取り、それによるとフルスイングではないというとこがわかった。
母は連絡がつかず、父も時間がかかると祖父が来校した。眼科への受診を勧め、(祖父はかかりつけ医がわからないので)眼科学校医へ連絡をとり受け入れをお願いしたが、手術日で受診することができなかった。次の眼科への受診も考えたが、夕方で診療時間が終わるのではと考え、腫れの様子や顔の打撲をしていることもあり、救急搬送した。搬送直前に父が到着。
CTに異常なく、傷は医療用のテープを貼り、翌日は登校できた。
当初、目元のけがで眼科受診を考えたが、祖父の不安感もあり、救急搬送した。目元の打撲によるけがの際に勧める科はどこが適切だったのか、次の眼科へかかるよう勧めるべきだったのか。このけががもし鼻なら、耳鼻科に勧めるべきかなどこの事故のあといろいろ考えました。
玉川より:バットがお尻に当たったことで顔から転んだものです。問題となるのは眼瞼の切創だけですので、眼科を勧めたのは適切でした。眼瞼の傷は縫い方によっては後で目が閉じなくなるので、眼科、もしくは形成外科で縫合してもらいます。
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