雑誌 健康教室 応急処置アップデートQ and A
2024年05月号(2024/04/10発行号)p64-5
目次
Q1
不整脈触知がどんな感じか心音等で知りたい。(ゆっくりになったり早くなったりはよく感じるのでそれが不整脈なのか取るのが下手なのか…と思っています。)
Q2
内科健診で、不整脈で要精密検査になる生徒が毎年2、3名います。ほとんどが精密検査では異常なしです。精密検査で異常なしだから大丈夫かなと思ってますが、大丈夫なのでしょうか。
A
脈がただ速いのが頻脈、脈のリズムが一定ではないものが不整脈です。一部の疾患を除いて、自覚症状が軽微な場合は様子を見ていて構いません。
不整脈は犬や猫で高率に出ますので、高齢のペットがいればその胸に耳を当てれば不整脈を聞くことができます。
解説
循環器は加齢の影響がとても大きい領域です。幼稚園や学校に通っている年齢なら、問題となる症例は早くから疾患が発見されていることがほとんどです。
1.不整脈が出る仕組み(001)
心臓の筋肉(心筋)は単独でリズムを持って収縮する仕組みを持っています。なので放っておくとバラバラに心臓が動いてしまい血液を流せません。幸いにも、心筋は自分より速いリズムで動けと命令されるとそれに従う性質を持っていますので、上位からの信号を受けて規則正しく拍動します。ここで上位からの信号が切れたり無視する心筋が出現すると、拍動のリズムが狂います。これが不整脈です。
2.頻脈や徐脈になる仕組み(002)
心臓は交感神経と副交感神経の両方の支配を受けます。運動や緊張で脈が早くなり、休憩や就寝で脈は遅くなります。この場合はリズムは一定です(002)。一般的には、1分間に100回以上を頻脈、50回未満を徐脈といいます。スポーツ選手の場合は心臓の機能が発達して脈拍が毎分50回に達しない人がたまにいます。
3.受診が必要な不整脈
たまに「トン」と脈が飛ぶことは誰でも経験します。これを期外収縮と呼んでいます。一回だけ脈が飛んで、その後は規則正しく心臓が収縮するのなら心配はいりません。連続して何回も脈が飛ぶ場合や胸部不快感や自覚症状が強い場合は受診を勧めます。
健康診断で要受診とされるのは不整脈以外にも軸偏位(心電図で計測した心臓の電気軸が正常とは異なる方向に向いているもの)や心肥大(右心室や左心室の電気的活動が正常より強いもの)など多岐に渡ります。検診医は少しでも疑いがあれば要受診としますので、精密検査で異常がなければそのまま経過観察となります。
4.加療が必要な不整脈・頻脈(003)
若年者で頻脈発作を起こす病気がいくつか知られています。このうち、心臓内部に原因があるものは、積極的に心臓カテーテル手術が行われるようになってきました。
5.そのほかの質問と回答
(1)授業中に「なんか胸がドキドキする」と来室。体育をしたわけでもないのに、脈拍が120~140くらいあることが何度かありました。
(2)安静時の脈拍が120位の状態が数日間続いていた生徒がいました。おそらく心因性で本人は慣れてしまっているようなところがあり、なかなか病院受診へと繋がりません
→自覚症状が強くないなら急ぐ必要はありません。何度も繰り返す場合は24時間心電図をつけられる可能性がありますが、通常は普通の心電図をとって何ともなければそのまま返されるでしょう。
(3)インフルエンザ等で発熱する前、脈が早いことがあると聞いたことがあります
→発熱する前でも交感神経は緊張するので頻脈になる可能性はあります。
(4)バトミントン部の男子が、部活の途中に倦怠感で来室。脈を測ったところ180回/分くらいありました。運動のせいなのか、とも思いましたが、念のため受診を勧め、後日受診したところ、(なんとか)頻脈という病気でした。運動時の脈拍の異常は、どうしたらわかるのでしょうか。
→本人の自覚症状が最も重要です。脈に関しては、正常人でも毎分150を超えることはないので、180は明らかに病的です。本男子の場合は、WPWもしくはLGLという心臓の電気信号を伝える電線が多い病気が最も考えられます。電線が多いとショートしてしまい電気信号がくるくる回って病的頻脈になります。
(5)自分(50代女性)のことです。平静な状態でバクバクする時があり、そのうち収まるのだけれど、これは老化の一つの現れなのか病的な初期症状なのか知りたいです。
→心房細動の可能性が高いです。発作時に飲めば直ぐ効く薬がありますので、循環器内科を受診して下さい。
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