260807_今さら聞けない資機材の使い方_150_LINE WORKSを用いて病院連絡時の円滑な情報伝達を行う_安来市消防本部_川井康平

基本手技

近代消防 2026/01/15 (2026/02月号)p42-4


LINE WORKSを用いて病院連絡時の円滑な情報伝達を行う

川井 康平1、秋間 健太1、池田 啓孝2、伊澤 里美2

安来市消防本部1・安来市立病院2

安来市消防本部の紹介

当消防本部が管轄する安来市の人口は約3万5千人で、職員数は90人です。そのうち31人が救急救命士です。また、昨年、令和5年中の救急出動件数は、2111件でした。

管内には安来市立病院と安来第一病院という2つの二次病院があります。ただ、三次病院は管内にはなく、直近の三次病院は、隣接する鳥取県米子市にある鳥取大学医学部附属病院高度救命救急センターになります。

ツール導入の経緯

安来市では、自治体DX推進事業を行っており、その一環として、タブレット端末が消防にも配備されました。そのタブレット端末の効果的な活用方法の1つとして、災害現場において確実で迅速な情報共有を目的として、安来市の情報セキュリティーポリシーの基準をクリアしたLINE WORKS(以下「アプリ」とする)を導入し、活用していました。さらに救急医療において病院連絡時の円滑な情報伝達を目的として、アプリの活用を検討し令和6年4月から運用を開始しています。現在情報共有を行っている医療機関は、管内の二次病院である安来市立病院と安来第一病院、また、直近三次病院である鳥取大学医学部附属病院高度救命救急センターの3つの病院です。

運用方法

まず、救急隊が傷病者の状態(001)や現場状況(002)から搬送先病院の選定を行い、携帯電話にて病院連絡を行います。病院連絡と並行して、隊員が傷病者の状態や現場状況、その他必要な情報をタブレット端末からアプリを使用して、病院側に送信します(003)。

そして、アプリにて送信した情報を確認した医師が受入れの可否を判断します(004)。

受入れ可能となった後も、搬送中など、必要に応じてアプリを使用してバイタルサインの変化や詳細な身体所見などをやり取りします(005)。

001

傷病者の状態の把握

002

現場状況の把握

003

アプリを用いて病院に送信

004

アプリにて送信した情報を確認した医師が受入れの可否を判断

005

バイタルサインの変化を報告

006

詳細な身体所見を報告

注意事項

(1)撮影した写真や動画は、目的以外には使用しないこと

(2)使用しているアプリは、セキュリティーも担保されたものを使用していること

(3)使用後は、端末に残っているデータを削除すること。

以上3点を傷病者及びその家族に説明し、了承を得てから使用することを徹底しています。

セキュリティー

今回導入したアプリは国際基準に適したセキュリティー性能を持ち、ユーザーデータ及びバックアップは日本国内で管理されています。また、アプリ自体に備わっているセキュリティー機能として(1)アカウントへのアクセス制限(2)管理者におるトーク履歴などのモニタリング機能などが備わっています。

奏功事例

施設入所中の傷病者が構音障害があるとの通報がありました。救急隊は、脳卒中の観察を行いましたが、明らかな麻痺等はなく(007)、構音障害に関しても、救急隊は明らかな異常とは感じず、施設職員が普段より少しおかしい気がするという程度のものでした。

そこで、麻痺の様子や実際の話し方の様子を管内二次病院である安来市立病院へ送信しました(008)。

搬送後担当の医師からは「口頭で伝えられるより程度がわかりやすく、受入れの参考になった」とご意見をいただきました。

007

明らかな麻痺等は認めない

008

二次病院へ情報を送信した

病院側と救急隊側の反応

実際にアプリを使用したところ病院側から以下のようなご意見をいただいています。

・傷病者の表情や全身状態、ケガの程度などが写真で確認できて分かりやすい。

・お薬手帳やバイタルサインを写真で送信してもらうことで、一つ一つ読み上げてもらう必要がなく、スムーズに共有ができる。

・病院側から情報が欲しい時に救急隊と連絡が取れる双方向の連絡手段が手に入った。

などです。

また、実際に救急隊からも以下のような意見がありました。

・お薬手帳、バイタルサインなど、1つ1つ読み上げる必要がなくなり、言い間違え、聞き間違えがなくなる。

・外傷の受傷部位や受傷程度など、伝え方に困る症例でも写真で共有でき、情報共有がしやすくなった。

・医師の目線から見てもらうことで、医師側からも意見がもらえる

などです。

今後の展望

アプリの活用は、傷病者の受入れに役立っているだけでなく、受入れ要請の段階から傷病者の状態がより正確に分かるため、搬送後、早期に治療を開始することができ、治療面にとっても傷病者に有益なものとなっていると考えています。

また、更なるICT技術を利用し、病院前救急医療体制の強化に努めていきたいと考えています。

プロフィール

 名前   :川井 康平

 読み仮名 :かわい こうへい

 所属   :安来市消防署伯太分署

 出身地  :島根県安来市

 消防士拝命:平成27年

 救命士拝命:令和 3年

 趣味   :キャンプ

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