181208救助の基本+α(第31回)応急はしご救出

 
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基本手技

月刊消防 2018/12月号 p28-31

救助の基本+α

目次

1 はじめに

  このたび、「救助の基本+α」を担当させていただきます彦根市消防本部特別救助係 の西村、青木と申します。今回は、火災現場の救助活動で最優先される「応急はしご救出」について取り上げさせていただきます。

  まずは彦根市消防本部のご紹介から。彦根市は、滋賀県北東部・近江盆地の東部に位置し、東西を日本最大の湖「琵琶湖」と鈴鹿山系に囲まれ、豊かな自然に恵まれた地域です。(図1

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彦根市は、滋賀県北東部・近江盆地の東部に位置し、「琵琶湖」と鈴鹿山系に囲まれた自然豊かな地域です

 

古くから「城と湖とみどりの街」として栄え、今は名神高速道路や東海道新幹線が通り、近畿圏・中部圏を結ぶ大動脈となっています。

また、彦根市のランドマークとして彦根城を有し、昨年は築城410年を記念したイベント等の開催や、市のキャラクター「ひこにゃん」(図2)人気により、多くの観光客が訪れ活気に満ちています。

2

ご存知 ひこにゃん

2 応急はしご救出

  さて、「応急はしご救出」と言えば消防職員であれば誰しもが訓練をしたことのある救助手法だと思います。また、「応急はしご救出」は消防において三つ打ちナイロンロープ、三連はしご、放水を組み合わせた消防と救助のコンビネーションが必要とされる救助活動であると同時に、迅速性が最も求められる救助方法ではないでしょうか。

  そこで、消防職員には釈迦に説法ではありますが、今一度この救助操法について理解を深めていきたいと思います。

  消防救助操法の基準第186条における「応急はしご救出」について写真を基に解説していきます。

応急はしご救出(手順)

手順1

使用資器材および人員の配置。

(三連はしご、救助ロープ)

手順2

1,2番員は協力し、三連はしごを架梯する。

手順3

指揮者の指示により1番員が進入する。なお、体を保持しながら強度確認を行い目標に進入する。

手順4

3番員は指揮者の指示により救助ロープを整理し、三重もやい結びを結索し補助さんおよび横さんを介し表側に引き抜く。

手順5

3番員は必要な長さのロープを引いたのち自己のバンドにロープを通し登梯を開始する。

三重もやい結びの落下防止のため、折り返し部分を結索の下に通し、ロープの自重で押さえる。

手順6

指揮者が指定した支持点に救助ロープを通し、要救助者の縛着を開始する。

手順7

指揮者の指示を受け、表側に回り確保姿勢に入る。

三連はしごに正対し、基底部をしっかりと押さえる。

手順8

指揮者の点検後、1、3番員は三連はしごを持ち押し出す。

要救助者の下に手が入らないように注意。

 手順9

指揮者の指示により救出を開始。

三連はしごの転倒に注意を払い、迅速に救出。

 

3 現場に即した応急はしご救出

  現在、消防救助操法は三つ打ちロープを利用した救助方法となっていますが、当隊では近年、多くの消防本部(局)が取り入れている編みロープの利点を活かし応急はしご救出セットとして活用していますので、ご紹介します。

写真1

応急はしご救出セット

(1)編みロープと三つ打ちロープの比較

強度(KN)

融点(

伸び率(%)

三つ打ちロープ(12mm)東京製綱ロープ

38.7

225

34.7(20.6KN時)

スタティックロープ(11mm)エーデルリッ

34

255

3.4

    編みロープの特徴としては、伸び率が三つ打ちロープと比較し小さく、撚れが発生しにくいことが挙げられ、高さが必要とされる場面では非常に有効です。しかし、伸び率が低いが故に衝撃を吸収しにくいことや災害現場様々な環境による制約から、状況に合わせた素早い判断と的確な活動が求められます。そこで様々な状況、要救助者の容態に応じた救助方法をご紹介します。

4 状況に合わせた救助方法

(1)簡易縛帯を活用した救助方法

写真2

簡易縛帯を活用した救助方法

消防救助操法で作成する三重もやい結びの代用として、既製品で販売されている簡易縛帯を利用した救助方法です。三重もやい結びを作成しないことから迅速な救助が対応可能となります。一方で、腰高窓など高さを必要とする場合、三重もやい結びのように輪の大きさを変えられることができないため、カラビナを使用し支点の高さを稼ぐ必要があります。

また、簡易縛帯を応用的に使用することにより、要救助者を縦吊りの状態で救出することも可能です。

写真3

縦吊りの状態で救出することも可能

(2)三連はしごの支管を利用した救助方法

三連はしごを使用して屋内進入する場合、開口部が小さいため進入が困難であったり、状況によっては開口部内に三連はしごを架梯できない。といった経験をされたことはないでしょうか。

写真4

開口部内に三連はしごを架梯できないことがある

この様な場合、開口部横若しくは開口部下枠に三連はしごを設定し進入することで隊員は進入が容易になります。

しかし、ひとたび要救助者を発見し応急はしご救出をする場合、通常であれば三連はしごの横桟にロープを介して隊員2名が梯子を押し出すのですが、梯子を開口部横壁面若しくは開口部下枠に架梯していることから架梯位置の変更を余儀なくされます。

そこで三連はしごを開口部横壁面に架梯し支管を利用することで上記のように押し出す必要はなく梯子を架梯したままで地上に救出できます。、

さらに荷重が三連はしごに対して下に掛かるので転倒の可能性も低く救出が可能となります。

写真5

三連はしごを開口部横壁面に架梯し支管を利用する。荷重が三連はしごに対して下に掛かるので転倒の可能性も低く救出可能

 

この方法の欠点は、足場から窓枠までが遠く進入時に不安定になり隊員が危険に曝されることにあります。

写真6

足場から窓枠までが遠く進入時に不安定になることが欠点

(3)ピタゴールを活用した方法

(1)、(2)の救出方法は、簡易縛帯を使用した救助方法で要救助者への負担が大きく掛かります。そこで要救助者の負担軽減を考えた救助方法が次の方法です。

都市型救助資器材のピタゴールを使用することで、要救助者の背部全体で包むことにより負担が少なく、要救助者の意識の有無に関わらず使用が可能です。

写真7

都市型救助資器材のピタゴールを使用すれば要救助者の背部全体で包むことができる

5 最後に

今回、「応急はしご救出」をテーマに取り上げましたが、災害現場は様々な状況が想定されます。そこをどのような救出プランで行い、ミッションを終えるか。

消防として真価が問われるのではないでしょうか。

今回ご紹介しました救助方法の中には資器材を応用的に使用した方法もあり、これらは私達なりにこれまでの訓練、現場経験から導き出したものです。

最後になりますが、これらの紹介内容が全国の消防本部(局)におきまして活動の一助になれば幸いです。

【担当者】

 

西村 伝一郎(にしむら でんいちろう)

所属

彦根市消防署本署特別救助係

出身

滋賀県彦根市

消防士拝命

平成19年4月

青木 涼平(あおき りょうへい)

所属

彦根市消防署本署特別救助係

出身

滋賀県愛知郡

消防士拝命

平成24年4月

 

撮影協力

彦根市消防本部消防署本署第2部





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