ラリンゲアルマスクを足側から挿入する方法の研究

 
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HTMLにまとめて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします


ラリンゲアルマスクを足側から挿入する方法の研究

旭川市消防本部南消防署 山田 博司
旭川市厚生病院麻酔科  玉川  進

目的

 ラリンゲアルマスク(以下LM)の挿入方法としては、術者が患者の頭側に位置し人差し指を用いて口腔内に挿入する方法が一般的に紹介されている。しかし、救急現場においては、傷病者が狭隘な場所に倒れているなど術者が患者の頭側に位置できないこともあり、従来の方法による手技が困難なことも予想される。

 そこで、福留ら1)によって紹介されたLMを術者が患者の足側に位置して挿入する方法について、頭側に位置して挿入する方法と比較することによりその有用性を検証した。

対象と方法 医師から十分な説明を受け同意した全身麻酔事例5例(女性2例、男性3例)を対象とした。はじめに、救急隊員テキスト「救急現場活動要領」2)に準じてLMを頭側から挿入した。カフに空気を入れ換気確認した後にLMを抜去し、足側から再度挿入した。足側から挿入する方法は、次のように行った1)。

 術者が患者の胸部の横に位置するように立つ。右手でLMのカフとシャフトの接合部を持ち、シャフトの根本を右手の親指で硬口蓋に押しつけながら親指が全て口腔内に入るまでカフを挿入する(図1)。

 次に、左手でシャフトのコネクター部分を持ち、挿入した右手親指を引き抜くことなく、シャフトを硬口蓋に押しつけながらシャフトをさらに挿入する(図2)。カフに空気を入れ、換気確認する。

 二つの方法で挿入の難易度について比較した。

結果 全例で二つの方法とも挿入可能であった。

 3例はどちらの方法でも容易に挿入できたが、2例はどちらの方法でも比較的挿入困難であった。(表1)これは、口腔内にカフを挿入する際にカフを押し込む指が歯にあたるためで、再挿入の際にもう一方の手により下顎を広げ開口した結果、挿入が容易となった。

考察 LMを術者が患者の頭側に位置し挿入する方法と、術者が患者の足側に位置し挿入する方法について比較検討したが、難易度に較差は認められなかった。また、比較的挿入困難な症例においては、いずれも再度下顎を広げ開口することで挿入が容易となった。加えて、足側に位置する方法では、挿入する指(拇指)以外の指で傷病者の顔を押さえつけ自然に開口させること、シャフトを硬口蓋に押しつけることよって、より挿入が容易となった。

 二つの方法で難易度に較差がないことから、術者が患者の足側に立ってLMを挿入する方法は、福留ら1)が紹介したように、術者が頭側に立てない場合は有効な方法であると考えられる。

 救急現場では、例えば交通事故などで傷病者が救出不能であり、尚かつ傷病者の頭部側に活動スペースがないような場合がある。また、LM挿入前後の換気を患者の頭側に位置する救命士以外の隊員によって行われる場合に、救命士がLMの挿入を患者の足側から行うことにより、それぞれの作業位置を分けることができる。 なお、患者の口腔内確認については手指のみにより開口し確認する場合、術者がどの位置でも差はないと考えられるが、この研究に際しては手術予定者を対象として実施しているのでLM挿入に際し口腔内確認はしていない。

結語 LMの挿入方法として、術者が患者の頭側に位置し挿入する方法と患者の足側に位置し挿入する方法があり、いずれの方法でも挿入が可能であった。


文献
1)福留武朗、天羽敬祐:ラリンジアルマスク(LMA)使用上の変更点について.麻酔1998,47(6):754-755
2)救急問題研究会:第2節気道確保.東京消防庁救急部編.目で見る救急現場活動要領,東京法令出版,東京,1994,pp129-138.


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