プレホスピタルケア 2021年2月号p14-15
連載タイトル「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」
担当
北海道留萌(るもい)消防組合小平(おびら)消防署
第6回(最終回)
「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」
6.経皮的動脈血酸素飽和度
バイタルサイン
#6:経皮的動脈血酸素飽和度
目次
筆者
所属:北海道留萌消防組合小平消防署
年齢:34歳
出身地:北海道苫前郡羽幌町
消防士拝命:平成20年
趣味:フットサル
○はじめに
連載の第6回目を担当させていただきます留萌消防組合小平消防署の斉藤と申します。4月から始まりました本連載も、この第6回を持ちまして最終回となります。
今回掲載させて頂きます「SpO2」はバイタルサインの項目には含まれていませんが、現在救急現場において、「バイタルを取る」と言えば、意識・呼吸・脈拍などを観察するほかに、SpO2の測定が含まます。今回はバイタルサインの1つと言っても良いSpO2について解説いたします。
○SpO2とは
SpO2とは、「Oxygen(酸素)のSaturation(飽和度)をPercutaneous(経皮的)に測定する」という意味で、経皮的動脈血酸素飽和度のことを言い、パルスオキシメータを用いて測定した場合にSpO2と言われます。酸素飽和度は赤血球中のヘモグロビンと酸素が結合し割合をパーセンテージで示したものであり、「サチュレーション」と呼ばれたり、「サーチ」などと略されたりもします。一般的な健常者のSpO2値は96%~99%の範囲にあります。
○評価
呼吸不全の定義として空気呼吸下でのPaO2(動脈血酸素分圧)が60mmHg以下の場合と定義されていますが、PaO2の測定は医療機関にて血液ガス分析装置を用いた検査でなければ測定することができません。PaO2とSpO2(SaO2)との関係は酸素解離曲線(表1)として示されています。そこではPaO2が60mmHgの場合にSpO2が90%相当となり、呼吸不全の状態と判断されます。
パルスオキシメータによるSpO2測定は、酸素化の目安として使われることが多いのですが、末梢の循環不全や一酸化中毒においては、測定不能や不正確となることもあるので注意が必要です。また、振動や寒冷などにも左右されるため、機器本体の数値のみではなく、傷病者に現れた症状など見落とさないように観察し、呼吸や循環状態を正しく評価したうえで酸素投与の適応を判断しましょう。
表1
酸素解離曲線
○測定方法
パルスオキシメータを用いた測定は、傷病者の指尖にプローブを装着する方法が一般的でありますが、傷病者の状態によっては正確に測定出来ないこともあるかもしれません。ここでは測定方法や注意点について再確認してみましょう。
1.プローブの種類、装着
1)テープ固定プローブ(図1、2)
LED部分と受光部が対向するように装着すること。LED部分が爪の付根付近に来る
ように装着しましょう。中心からずれると指の縁を通過する光も検出し、信号の脈動が減少します。特に「太い指」や「細い指」に装着する際に不適切な装着とならないように注意しましょう。また、プローブの固定をする際にテープの締め付けがキツ過ぎる場合では、血管の圧迫により脈動が小さくなるため、正確に測定が出来ない場合があり、逆に緩すぎると体動や振動によるプローブのずれや脱落が起こりやすく、測定に支障をきたしますので注意しましょう。
2)クリップタイプ(図3)
指尖部を奥まで挿入し、爪の付根付近に受発光部が位置すること。
先端部に隙間ができると光が一部組織を通らず検出され、正確な測定ができません。ペナンブラ効果とも呼ばれます。
2.新生児・乳児への装着(写真1、2)
第一足趾が比較的脈動成分が大きくとれます。また、足背部分で測定する場合は第四足趾の付根付近を挟み込むようにプローブを装着すると測定しやすいです。
3.その他
近年ではファッションの1つとしてネイルチップ(付け爪)を使用している女性が多く
見られます。マニキュアなどの塗料であれば除光液を使用することで測定が可能ですが、接着剤を使用するネイルチップの場合、容易に剥がすことは出来ず測定に苦慮することもあるかと思います。耳朶で測定ができる耳用プローブを使用することで測定が可能ではありますが、耳用プローブを積載していない場合にはマルチプローブ等を活用することで測定することも可能です。(写真3、4、5、6)
○おわりに
今回でバイタルサインの基礎とTipsについて連載が終わりますが、過去の掲載内容も含め、救急隊員のみなさんのお力になればと思い、掲載させて頂きました。私自身も一、救急隊員として今後の現場に活かしていければと思っております。
約1年間、全6回の連載を私共が所属する小平消防署で担当することができ、心から感謝しております。ありがとうございました。
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