070217書評
本の紹介
主要所見から学ぶ 救急現場のケーススタディ
~見逃しを回避するためのワンポイントレッスン~
東京法令出版
¥2520
2006年10月初版発行
アマゾン,セブンイレブンにはまだ載っていないようです。
構想段階から耳にしていた救急症例アトラスです。当初の予定では写真→1行説明、で一種のすごみを感じる本になる予定だったのですが,発行段階までにこのような解説本に落ち着いたようです。
この本の特徴は第1章として救命士国家試験のような症例写真問題があって、第2章から病態別に解説が1症例(1病態)見開き2ページで述べられています。解説は救急隊員(救命士限定ではなく一般の救急隊員)に知っておいてもらいたいことが簡潔明瞭に記されていて,出動のあと、「あの事例の処置はこれで良かったのかな」と振り返るのに最適です。必要なことはちゃんと載っていますし,余計なことも書かれていません。
フルカラーで値段が2500円というも大きなアドバンテージです。写真を眺めたあと,本棚の肥やしになっても後悔することはありません。
欠点としては,解説編では写真が載っていないページが多くあります。症例アトラスとして購入するには今ひとつ押しが弱い。それとクルーゾン病(小児の先天性頭蓋骨形成異常)など、救急隊が知らなくてもいいようなことも書かれています。項目の今一度の整理が必要と思われます。
総合評価として
- 内容、値段から「買い」
- 全ページ症例写真で埋め尽くされ症例の濃淡を付けた改訂第2版に期待
私のつたない書評を読んで本を買う方がいると聞いて嬉しく思っています。
この本は吉田寿美(歌登)に見せられて、自分の原稿の参考になると思い買ってみました。
この本の最大の特徴は「たとえ話」。それに尽きます。マヨネーズや回転寿しを例にして感覚で理解できるようになっています。ひどく感心しました。見習わないと。
内容は循環・呼吸のあとに心電図に飛んだり、意識評価がないのに小児の項目(たった4ページだけ)があったりと、強い癖を感じます。目新しいことも載っていません。救命士学校の現役の先生方なので、学生の弱いところを抽出した結果この内容になったのでしょう。
楽しみながら生理学を理解したい救急隊員にお勧めです。2625円と値段も手頃です。知識を求める人には不向きです。
OSCEを取り入れた救急隊員臨床教育
監修:畑仲哲生・吉田素文
編著:EMT研究会
株式会社メディカ出版
¥3150
EMT研究会内執筆メンバー
森出智晴(札幌)
EMT研究会内執筆メンバー
関根和弘(野田/右端)
EMT研究会内執筆メンバー
西岡和男(熊
本/右端)
こちらにも紹介ブログがあります(女性のようなので誰かはすぐ見当がつきます)。本人も書いている通り表示が重いので気長に待って下さい。
手元に届きました。風邪引いて点滴していた吉田寿美(歌登)と記念撮影。
2006-2-18 sat 11:35
表紙はメディカ出版にしては地味
でも中身はレイアウトも配色もまぎれもなくメディカ出版です。
表表紙を開けると執筆者の一人である森出智晴(札幌)のサイン入り。
指導者から何かを学び始めてから、ひとり立ちしていくまでに人は、『守』・『破』・『離』という順に段階を進んでいきます。
- 『守』最初の段階では、指導者の教えを守っていきます。
- 『破』次の段階では、指導者の教えを守るだけではなく、破る行為をしてみます。
- 『離』最後の段階では、指導者のもとから離れて、自分自身で学んだ内容を発展させていきます。
今回の救急活動マネジメント実践トレーニングですが、本の内容自体は、あまり難しくありません。というかあえて医学的な解説は極力省いています。自分で他の本で調べてねっていう不親切な本です。
本のトレーニングの内容自体は救急標準課程修了者に焦点を当てています。トレーニングを実施するのは、標準課程者ということです。でも本のトレーニングだけやっちゃうと、ものすごく、辛いテスト三昧になると思います・・・。 実際にやってみるとわかります。
チェックシートを用いて部下(学習者)を評価するのではなく、チェックシートを例にして、学習内容の段階・階層を意識しつつOSCEを行い、学習者自身に「自分の不足している部分はなにか」を気がつかせるような導き(指導)であるべきということです。さらに言えば促すということでしょうか。この本の真意は、購入者は指導者層であろうということからその購入した指導者に現場活動でのマネジメント能力向上とさらに部下指導のマネジメント能力をつけようとする内容なのです。
まずは、指導者は、マネジメントの理解も含めてコミュニケーションの理解は必須かと思います。コミュニケーションなしにマネジメントなし、と言う考えです。
- ステップ1は、とっても簡単そうに見えますが、実は、フィードバックが最も難しいだろう、と感じています。簡単なスキルゆえに、指導者が、しゃべることが多くなりがちです。喋ることが多くなるということは、学習者自身の気づきが少なくなり、押し付けの教え(教育)になりがちです。
- ステップ2は基礎知識と基礎技能に若干の判断を伴います。
- ステップ3は、病態の知識の問題になるので、ここは、確認程度ですが、問題は、ステップ4の「シナリオ」です。
- ステップ4のゴール(シナリオのゴール)は、救急隊の現場活動のゴールそのものに非常に近くなっています。それが、理解出来てない指導者が指導してしまうと、ただのシミュレーションになる恐れがあります。
この違いを理解できてないと、これまでの、シミュレーションとか、実技試験とかと何の違いもないように学習者が感じます。(実際、指導者が理解してないと、実は、チェックリストが上手く使えないと思います)
メディカ出版主催で、救急活動マネジメントセミナーも行われておりますので気になる方はメディカ出版ホームページでチェックしてみて下さい。
———ここまで
内容は
「I 初めに」で臨床教育理論が述べられており、「II トレーニングのファシリテーション」で救急活動のマネージメントの概念が記載されています。III以降は実際にこうやって実地訓練(この本ではOSCEと言ったりトレーニングと言ったりしています)を行いましょうという指導の仕方が書いてあります。
この本が狙っている購買層は救急隊員を指導する立場にある人たちです。トレーニングの項目である箇条書きを読んで、すぐ理解できる人達が、部下の指導法の一つとして読むものです。指導の点からいけば、評価表やシナリオもついており、そのままコピーして今日からの訓練に使えそうです。
逆に言えば、指導される側にはすこし難しい内容です。指導項目の医学的説明は全くありません。この本の肝である「I 初めに」「II トレーニングのファシリテーション」は読む気も起きないでしょう。
この手の本が救急隊向けに出るのは初めてで画期的なことだと思います(看護婦さん向けにはいっぱいある。さすがメディカ出版)。売り上げに注目しましょう。
その他気の付いたところ
- I, IIでは英単語が結構出てくる(ファシリテーション?? facilitation 促進だそうです)
- 表ばかりで図がほとんどない。写真は3枚しかない
- 誰がどこを書いたか分かるようにして欲しかった(責任の所在が曖昧)
「所属の第一号救命士にはいいと思います。教える方法が載っていて。今ハマっています。得した気分です」
ちなみに、森出智晴(札幌)のサインは同じ守破離だったそうです
2006-2-19 sun 20:15
08.6.11/0:29 PM
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