2002/02/01(Vol.95)号「腰の痛み(1)」

 
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2002/02/01(Vol.95)号「腰の痛み(1)」

2002/02/01(Vol.95)号「腰の痛み(1)」

●「麻酔科の話」

皆さんこんにちは。もう2月です。だんだん日も長くなってきました。いまは家庭でも大学でも田中真紀子さんの話で持ちきりです。納得している人は少なくとも私の周りにはいません。今回の決定は小泉さんにとってきわめて危険なものであったのは間違いないでしょう。

腰の痛み1

今回から腰の痛みについて話をします。

今まで腰に痛みを感じたことのない人はまずいないでしょう。腰の痛みは生まれてから死ぬまでに60〜90%の人が一度は経験するもので、また45歳未満の労働者が休む最大の原因です。試算によると腰痛で被る被害は日本全国で1兆6千億円となります。腰痛は人間が立って歩いているからだという説が流布していますが、犬や猫でも腰を抜かしたり触ると鳴くところを見ると、腰痛はどうも人間だけではなさそうです。

若い人で多いのは椎間板ヘルニアです。椎間板は背骨と背骨の間にありクッションの役目をするものですが、普通想像する軟骨とは違い、真ん中に髄核という柔らかい玉があって、まわりをバームクーヘンのように幾重にも紐(線維輪)が卷いている構造になっています。その紐がほつれずにしっかりと卷かれているように椎間板のまわりには頑丈な靭帯が取りまいています。椎間板は体重に耐えるだけでなく、曲がったり、押されたり、伸ばされたりします。特に中腰になってものを持ち上げるときには椎間板には過大な圧力がかかるため、もし靭帯が弱いところがあればそこから椎間板がにょろっと出てくることになります。これが椎間板ヘルニアです。

不思議なのは、出てくるのは紐ではなく、玉(髄核)が出てくることです。出てくる方向はだいたい決まっていて、背骨の斜め後ろ、ちょうど足への神経が走っているところに出ます。この場合には腰の痛みに加えて足が痺れる、足に力が入らない、階段で転ぶなどの症状が出ます。ひどくなると足が痩せてきます。もし真っ直ぐ後ろに出たときには、おしっこの神経を押すためにおしっこをしたい感覚がなくなります。出ている玉の大きさと症状の程度は通常一致しますが、たまにものすごい玉であっても症状がほとんどない場合があります。

腰が痛くて、足が痺れていて、日常生活に支障を来す場合には手術を勧めます。現在は1cm程度の小さな穴から出っ張っている玉だけを取り出す内視鏡手術も行われるようになり、患者は手術の翌日から歩けるようになりました。出ている玉が大きい場合には内視鏡で取れないので皮膚を5cmくらい切って直接玉を取り出します。

玉川 進(たまかわ すすむ)

旭川医科大学第一病理学講座


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