消毒剤あれこれ
メールいただきました
以下を拝見させて頂きました。
https://ops-old.tama.blue/ops/tech/shoudoku/shoudoku.html
(消毒剤あれこれ)
この中に
>ブライト。ハイターやミルトン、ピューラックスも同じ次亜塩素酸ナトリウムである。
という説明」がありますが横の写真には「手間なしブライト」 が記載されています。
「手間なしブライト」塩素系ではありません。
http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/033/02.htm
現在「ブライト」の名が付く製剤は塩素系では無くなってきています。
細かい事ですが専門的なホームページでの間違いは好ましくないので修正した方が良いと思われます。(2010年1月11日 22:44:27:JST)
御指摘ありがとうございました。書き直しました
滅菌と消毒は患者を感染症から守るだけでなく自分自身を感染症から守るためにも重要である。今は沈静化したとはいえいつ再び猛威を振るうか分からないSARS対策の一環として、今回は分かっているようで分かっていない滅菌と消毒について勉強しよう。
感染を予防するための微生物除去法として,「滅菌」と「消毒」がある。「滅菌」とは,すべての微生物を殺してしまうまたはは除去する,つまり,無菌の状態にすることである。これに対して「消毒」とは,有害な微生物だけを殺滅し感染力をなくすことであり,無菌にすることではない。「殺菌」は微生物を死滅させることだが実際には「消毒」と同じような意味合いで使われている。
今回尋ねた消防署ではここに並べただけの消毒剤を用いている。
まず手指消毒用薬剤から。
消毒用エタノール。代表的な消毒剤として皮膚消毒から器材の消毒まで広く用いられている。最も殺菌力が高いのは70-80%のものとされている。化学的に安定で希釈がいらず、芽胞と一部のウイルスを除きほんの数秒で強力に殺菌する優れものである。蒸発しやすいので残留を無視でき、毒性も低い。欠点としては燃えること、粘膜に刺激があること、それに高価なことが挙げられる。注意点としては、刺激が強いのでけがをした部分や粘膜には使わないこと、大量の蛋白に対しては効果が減弱することである。器材を消毒する場合には表面の血液や膿汁などの蛋白質を十分洗い落としてから浸けるようにしよう。
消毒用エタノールは高価なので、少し効果は劣るものの安価で揮発が遅いイソプロパノール(イソプロピルアルコール)を用いることもある。アルコールの付いた酒精綿をパックで売っている製品のほとんどがイソプロパノールを使っている。
消毒用エタノールを主剤としたスプレーが市販されている。簡単に使えてあとがべたつかないので一本備えておくのもいいだろう。写真は横浜油脂工業の「アルパス」。
ウエルパス。今や定番となった手指消毒剤。内容は第四級アンモニウム塩(逆性石けん)である塩化ベンザルコニウム0.2%が含まれた消毒用エタノールである。塩化ベンザルコニウムは毒性が低いのに効き目を現す細菌が幅広く、特に食中毒の原因となるブドウ球菌に高い効果を示す。
逆性石けんとは陽イオン界面活性剤のことであり、普通の石けんが陰イオン界面活性剤であるため逆性と呼ばれる。陰性に帯電している細胞表面に付着し細胞膜を破壊することで効果を現す。またもともと界面活性剤であることから、洗浄作用や角質溶解作用も持っている。
利点は簡単で確実な効果が期待できること。欠点としては高いこと。300mLで2500円する。ほとんど同じ内容のヒビスコール(サラヤ株式会社)の方が500mL1800円とずっと安い。また、ベンザルコニウムの特性として、普通の石けんと合わせると殺菌力が低下するので、手洗いの後はよく石けんを流し去ってからウエルパスを噴霧すること。
イソジン。病院では最も使われている消毒薬。他の優れた消毒薬があると分かっていてもあの黄色が消毒をした気にさせるので簡単には離れられない。
本体はポビドンヨードあり、そこから遊離したヨードが殺菌作用を現す。一部の芽胞以外をカバーし、広く効き目を及ぼす。
欠点は刺激性があること。皮膚や粘膜を通して吸収されやすいので毎日大量に使う熱傷患者では中毒に注意する。
よく普及しておりいろいろ種類がある。傷の消毒用だけでなく手洗い用・うがい用など用途に合わせて購入しよう。また石けんと併用すると作用が弱まるので石けんを洗い流してから使用する。
ここの消防では出動後のうがいに使用しているとのこと。プラスチックのコップの横に置いてある。
ここからは器材と環境の消毒。
ブライト。ハイターやミルトン、ピューラックスも同じ次亜塩素酸ナトリウムである。芽胞以外の広い対象を強力に死滅させる。
(注意:写真の「手間なしブライト」は酸素系です)
この製品の特徴は何と言っても安いことで、しかもどこでも手に入る。安全性も高く蛋白と接触すると食塩になる。欠点は効果の低下が速いことと塩素のにおいがすること。使用中の換気には気をつけよう。また金属や繊維を腐食させることもあるので、長時間の浸け置きは避ける。
器具の消毒には0.02%を用いる。救急車内の消毒にも同じ濃度でつかえる。この消防ではミルトンを購入して使っている。
クレゾール。昔の保健室のにおいがする。今時クレゾールと思うのだが、蛋白質で効果が減弱しない数少ない消毒薬なので、得体の知れない排泄物には3%液を振りかけておくと安心。器材や室内の消毒には1-2%液を用いる。
室内消毒用グッズ。調整した消毒薬と噴霧器、カット綿が入っている。
LAG(塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)とは両性界面活性剤の一種で、1分子中に陰イオンと陽イオンを含むため、陰イオンの洗浄作用と陽イオンの殺菌作用を備えている。逆性石けんと比較すると殺菌作用の速効性は劣るが幅広い領域で殺菌効果がある。低濃度(0.05-0.1%)で実用十分の効果をもたらし、高濃度(0.2~0.5%)にすれば結核菌にも殺菌効果を示す。効果が幅広く臭いもほとんどないため、車内消毒などにおいてクレゾール石ケン液の代わりに繁用されている。
利点としては安いこと。効果が長時間続くのも魅力である。腐食作用が少ないので金属にも安心してつかえる。蛋白質や普通の石けんと結合して殺菌力が低下するので注意しよう。
車内消毒の様子。
消毒液を噴霧できるところは丁寧に噴霧する。通常はLAGで十分だが、患者の嘔吐物で汚染された箇所ではクレゾールを使ったほうがいい。
器材の消毒の様子。
浸け置きできないものはこのように綿に消毒剤を漬して使用する。
オートクレーブ。121度30分の高温に器材を曝して滅菌するもの。簡単で確実に滅菌できる。
この機械では乾燥もしてくれるのでありがたい。
器材を入れる時には取り出し時に不用意に触れないようにはじめから金属タッパーに入れるなど工夫をしよう。
消毒薬は一つの棚にまとめて入れておき外から鍵をかける。消毒剤の種類と効果を書いた紙を貼っておき、薬効を常に確認するようにしよう。
協力:吉田寿美、井森和夫(南宗谷消防組合歌登支署)
10.2.6/12:19 PM
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