200925あなたは大丈夫? バイタルサインの基礎とTips (第2回) 血圧 (北海道留萌消防組合 小平消防署)

 
  • 1312読まれた回数:
基本手技

プレホスピタルケア 2020年6月号p1-3

連載タイトル「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」

担当

北海道留萌(るもい)消防組合小平(おびら)消防署

 

第2回

血圧

 

目次

〇はじめに

今回「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」を担当させて頂きます、北海道留萌(るもい)消防組合小平(おびら)消防署の浅井俊喬(あさいしゅんすけ)と申します。第2回は「血圧」について執筆させて頂きます。


 

〇血圧とは

血圧とは、心臓から送り出された血液が、血管の壁に与える圧力のことであり、全身の細胞、組織にどの程度の血液が供給されているかの指標となる値です。心臓が収縮し血液を送り出した時の圧力を収縮期血圧、心臓が広がって血液を受け入れている時の圧力を拡張期血圧といい、収縮期血圧は心収縮力を、拡張期血圧は末消血管抵抗を反映します。

 

〇血圧の正常値、異常値について

血圧の正常値は、成人では表1の数値とされています。

救急活動時に留意することは2点あります。

  • 絶対値: 平時の収縮期血圧が150mmHgなのに現在60mmHgなら低血圧状態でありショックが疑われます。同様に200mmHgを越えているなら危機的な高血圧であり、脳血管や大動脈の異常が疑われます。
  • 推移:接触時に収縮期血圧が120mmHgだったのに5分後60mmHgまで下がれば、直後に心停止するかもしれません。一方、30分経って110mmHgなら状態は安定しているといえます。。

 

表1

正常血圧

 

 

〇測定の種類、方法について

原則、上腕にマンシェットを巻いて測定を行います。前腕、手首、大腿、下腿でも測定することが可能です。また、脈拍が触知できる部位によって、収縮期血圧のおおよその目安(表2)がわかります。多くのマンシェット・機種が入手できますので、傷病者の状況に合わせて使い分けます(001,002)


 

表2

脈拍が触知できる部位と収縮期血圧のおおよその目安の関係

 

 

 

001

マンシェットは幅が違うものが4種類ある。測定部位の太さで使い分ける

 

002

当消防署にある携帯型血圧計

 

 

1)聴診法(コロトコフ法)

聴診器を用いて動脈の拍動音(コロトコフ音)を聴診し測定します。

  • 触診法

加圧部の末梢動脈を触知し、測定します。拡張期血圧も測ることができますがコツが必要です。

3)オシロメトリック法

マンシェットに伝わる血管の拍動を機械が感知して血圧に変換します.振動や傷病者の体動によって測定結果が不正確になる場合があります。その時には触診法を併用します。

今回は、聴診法の測定方法を説明します。

  • 傷病者(関係者)から普段の血圧を聴く。
  • 上腕を心臓と同じ高さに置いて上腕を伸展させる。
  • 上腕動脈と橈骨動脈の触知を確認する。(003)
  • 正しいマンシェットを選択する(上腕の長さ2/3)。
  • マンシェットを皮膚に密着させ、下端が肘関節の約3㎝上、マンシェットと上腕の間に指が2本入る程度の強さで巻く。(004)
  • 橈骨動脈を触知しマンシェットを加圧する(触診法の場合はそのままマンシェットを減圧し測定する)。(005)
  • 聴診器を上腕動脈に当て、マンシェットを減圧し測定する(1心拍ごとに2~3mmHgの速さで減圧する)。(006)
  • コロトコフ音を聴診し、収縮期血圧と拡張期血圧を測定する。

 

003

上腕動脈と橈骨動脈の触知を確認する

004

マンシェットと上腕の間に指が2本入る程度の強さで巻く

005

橈骨動脈を触知しマンシェットを加圧する

006

聴診器を上腕動脈に当て、マンシェットを減圧し測定する

 

◯Tips

・聴診器の膜型ヘッドで聞こえないときは、ベル型ヘッドで試みると聞こえることがあります。

・測定する時に無理に服を脱がせなくても、服の上からマンシェットを巻いて測定しても、それほど測定値が変わりません。

・救急車内で測定する時は、聴診器のホースがストレッチャーのガイド等エンジンの振動を受けているものに触れていると、雑音がひどくなるので注意が必要。

 

〇留意点

  • シャント

血液透析用のシャントがある場合、シャントのある上肢ではなく反対の上肢で測定を行います。シャント側の上肢で測定すると、加圧によってシャントの破損や血栓生成を生じる可能性があります。両側にシャント痕がある場合は下肢での測定を試みます。

  • 創傷

創傷のある部位での測定は避けます。加圧されると痛みが増強します。

  • 麻痺

麻痺の症状がある場合、反対側で測定を行います。麻痺側では廃用萎縮により血流が悪くなっているため、性格な値が出ない可能性があります.

  • 乳がん手術歴

乳がんの手術歴があるときは、反対側での測定を行います。病側のリンパ節を切除され、リンパ流が悪くなっている場合があり、加圧がその増悪を招く可能性があります。

 

〇最後に

血圧は、循環を管理する上では重要な数値になってきます。多くの救急現場で活用される指標でもあるので今一度、注意点等を再確認していただきたいと思います。

私自身も血圧に限らず、資機材の機能や使用方法を習熟できるよう日々精進していきたいと思います。

 

次回は「心拍数」です

 

 

著 者

氏名:浅井俊喬(アサイ シュンスケ)

年齢:30歳

所属:留萌消防組合小平消防署

出身:石狩郡当別町

趣味:ソフトテニス

消防士拝命:平成23年4月

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました