雑誌 健康教室 2021年5月号p58-9
応急処置アップデート the movie
#14
失神
今回は失神です。2011年度合同研究班報告によると、失神とは「一過性の意識消失の結果、体勢が保持できなくなり、かつ自然に、また完全に意識の回復が見られること」と定義されています。頻度は結構多く、文献では小児の40%で見られると書かれているものもあります1)。
失神については健康教室2021年3月号p42-45に三村由香里先生も詳しく書かれていますので、そちらもご覧ください。
目次
動画
001
失神する患児は失神を繰り返します
002
初めての失神なら、重大な疾患が隠れている可能性がありますので必ず医療機関を受診させます。
003
失神は通常短時間で意識を回復します。回復までの間、回復体位を取らせ見守ります。
004
ごくまれですが意識が回復しない時があります。その場合は119番通報をし、万が一に備えて心肺蘇生の準備をします。
005
失神から回復までの時間や、失神に伴う随伴症状を医療機関に伝えてくれれば診断の助けになります。
失神のアップデート
1.学校での失神事例
旭川近郊のH先生によると、倒れるのは脳貧血(起立性低血圧)が多いとのこと。朝会で長時間話を聞いていた時や,卒業式の歌の練習中に脳貧血を起こし保健室に運ばれるパターンです。ですが運動会練習中に倒れけいれんを伴っていて後日てんかんの診断が付いた例や、患児が授業中に急に机上に突っ伏し,意識がなくなってH先生が呼ばれた例も経験しているそうです。
2.立位誘発性反射性失神2)
表1に若年者に起きる起立性低血圧の分類を示します。朝会で倒れるのは立位誘発性反射性失神といわれるものです。以下この疾患について記載します
表1
若年者に起きる起立性低血圧の分類
文献2), p10表9からの抜粋
(1)病態生理
一過性の徐脈と一過性の血圧低下のいずれか、もしくは両方が出現することによって失神を起こします。失神する直前には前駆症状として頭重感・頭痛・複視・嘔気嘔吐・腹痛・眼前暗黒感といった前兆があり、その直後に意識を消失します(zu001)。
図1
前駆症状
(2)誘引
常時間の立位や座位のほか、不眠、疲労、恐怖、痛みなどの精神的・肉体ストレス、さらに人混みや閉鎖空間といった環境要因が重なって発症します。また、下記の検査で陽性となった患者、特に比較的若年者と女性ではうつの程度が高いことが知られています。
これらの誘引は全て自律神経の異常を引き起こすものであり、生活指導の対象となります。
(3)診断
実際に寝ている患者を立たせるか、台に寝かせて台ごと起き上がらせることで血圧がどの程度下がるかを見ます(zu002)。起立3分以内に
・収縮期血圧20mmHg以上低下
・収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下
・拡張期血圧が10mmHg以上低下
のいずれかを満たした場合に起立性低血圧と診断されます。
図2
検査方法
(4)治療
病態を理解し、前駆症状が出たらすぐしゃがみ込んで失神と怪我を避けるように指導します。次に誘引となる生活習慣・心理状態について生活指導を行います。失神の頻度が高い場合には薬物治療が行われます。
文献
1)Am J Cardiol 2003;91:1006-8, A8
2)2011年度合同研究班報告:失神の診断・治療ガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2012_inoue_h.pdf
監督
原口良介(はらぐちりょうすけ)
hataguchi.jpg
唐津市消防本部消防署救急第一係
消防士長
消防士拝命:平成21年4月
救命士運用:令和元年7月
趣味:カメラ、動画編集
医学監修・解説
玉川進(たまかわすすむ)
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旭川医療センター病理診断科
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