近代消防2021/8
今さら聞けない資機材の使い方
傷病者を包むシールド
B
メインストレッチャーカバーを有効活用した感染防止システム
神田佐登司
尼崎市消防局
目次
著者
神田佐登司プロフィール
氏名:神田佐登司
B_kanda.jpg
読み仮名:かんださとし
所属:尼崎市西消防署
出身地:兵庫県尼崎市
消防士拝命:平成5年
救命士合格年:平成19年
趣味:野球、サイクリング
1.はじめに
傷病者を収容したメインストレッチャー全体をメインストレッチャーカバーで覆い飛沫感染を防止するシステムを考案しました(B_001)。このシステムは、今あるメインストレッチャーカバーを有効活用することで、費用対効果を図りました。また、ジョイント部分はセッティング時の容易さを考慮し、全て塩ビパイプを使用し、軽量化を図りました。さらに、メインストレッチャーの機能を損なうことがないように設置し、コスト及び製作時間を極限に低くしたものです。パイプやジョイント部分は塩ビ製、小ねじはステンレス製、また紐付き洗濯バサミはプラスチック製のモノを使用し軽量化を図っています。
B_001
メインストレッチャーカバーを有効活用した感染防止システム
2.作成方法
(1)使用資機材(B_002,B_003,B_004)
PF管片サドル14φ×4個
ストレート塩ビパイプ14φ50㎝×2個
塩ビパイプキャップ14φ×2個
塩ビパイプジョイント14φ×2個
これらを接続するステンレス小ネジセット×2セット
紐付き洗濯バサミ×2個
既存のメインストレッチャーカバー
B_002
PF管片サドル・ストレート塩ビパイプ・塩ビパイプキャップ・塩ビパイプジョイント・ステンレス小ネジセット
B_003
紐付き洗濯バサミ
B_004
メインストレッチャーカバー
(2)組立
メインストレッチャーの頭部側サイドステー両方に先ほど説明した資材を完全固定装着します(B_005)。そしてストレートパイプを嵌め(B_006)、メインストレッチャーカバーをかけて完成です(B_007)。
B_005
メインストレッチャーの頭部側サイドステー両方に資材を固定
B_006
ストレートパイプを嵌める
B_007
完成
(3)使い方
感染の恐れのある傷病者に対しては救急車内収容時にも車内活動時メインストレッチャーカバーをかけたままで救急活動を行います。メインストレッチャー操作や車内収容(B_008)はスムーズに行えます。車内収容後のバイタル測定(B_009)でもメインストレッチャーカバーを外すことなくバイタル測定が実施できます。また、坐位の傷病者に対しても使用できます(B_010)。軽量かつ透明であることから、傷病者の容態変化に直ちに対応できます。
感染リスクのない場合には、メインストレッチャーカバー及びストレートパイプを外して活動します。
B_008
救急車内収容時
B_009
車内活動時
B_010
坐位の傷病者に対しても使用できる
3.考察
今回、考案したシステムについては、このコロナ禍で救急隊員がこれまで以上に感染防止対策を講じて活動している中で、さらに感染リスクを無くすため至急に考案したものであります。
既存の安価なメインストレッチャーカバーを使用していることから、仮に陽性患者を搬送した後には、ディスポ感覚で破棄できるため、消毒時間の短縮にも繋がり、早期の出動態勢の構築、ひいては市民サービスの維持向上に努めることができると考えられます。
さらに、今回の資材については、全てホームセンター等の一般小売店舗で購入が可能であること、コストが非常に安価であること(因みに約600円)、ほとんどのメインストレッチャーに数分で装着可能であることから、他隊への普及も容易と推察されます。
今後も、救急活動を実施する上で、今回のような資材を傷病者のために考案し、安全で、より効果的なものへと改良していきたいと思います。
コメント