120527実践ガイドライン2010(10)小児

 
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実践ガイドライン2010

第10回

小児

イラストで覚える救命処置と応急手当

2012/6/15近代消防社から発売

税込み315円

 

 

 

 

 

名前 米木 直人(よねき なおと)
所属 富良野広域連合富良野消防署南富良野支署
出身 南富良野町
消防士拝命年 平成20年4月1日
趣味 野球、キャンプ

○はじめに

実践ガイドライン2010も残すところあと少しとなり、今回小児の救命処置について担当させていただくこととなりました。少しでも読みやすいよう努力しましたので読んで下さい。

そもそも小児とは1歳から思春期以前(目安としておよそ中学生まで)を小児としています。日本における小児の死亡原因第1位は自動車事故・溺水や異物誤飲等の「不慮の事故」であり多くの不慮の事故は予防可能であるため、まず心がけるべきは事故を防ぐことです。G2010では一般市民が小児に対して心肺蘇生を行う場合は成人と同じ一次救命処置を行います。ただし、一般市民のうち小児にかかわることが多い人(保育士や学校の先生など)は小児の救命処置を学ぶことが奨められています。

○小児のガイドラインの変更点

G2010では胸骨圧迫を速く行うことと中断を最小限にすることで救助者の訓練の有無に関わらずCPRができるよう手順をわかりやすくしました。


小児アルゴリズム

G2005からG2010の変更点は下記の通りです。

・CPRの実施を促すため、成人と同様に胸骨圧迫から開始する。ただし小児の心肺停止症例においては人工呼吸の有効性が明らかなため準備ができしだい早急に人工呼吸を開始する。

・心停止を判断するための脈拍の確認は信頼性がないため、心停止か否かは、傷病者の反応と正常な呼吸の有無から判断する。

・現場の便宜を図るため、小児パッドの使用年齢の上限を未就学児(およそ6歳)までとした。

となりました。

正直変更点を並べられてもわかりませんよね。小児BLSのアルゴリズムにそって説明したいと思います。

○反応の確認と緊急通報

 まず最初に周囲の安全を確認します。これは自分自身の安全を確保するために行います(写真1)。

自分が危険にさらされたら意味がありません。次に軽く肩を叩きながら大声で呼びかけ反応の確認をします(写真2)。

何らかの反応や目的をもった仕草がなければ「反応なし」とします。反応がなければ、その場で大声で叫び周囲の注意を喚起しましょう(写真3)。

このとき周囲の人に「119番通報とAEDを持ってきてください」と依頼します。

○心停止の判断
 呼吸の確認に10秒以上かけないようにします(写真4)。

G2005では気道確保を行い、「見て、聞いて、感じて」10秒かけ呼吸確認を行い、普段通りの呼吸をしているかを確認し心停止の判断をしていましたが、G2010では「見て、聞いて、感じて」が削除されました(写真5)。

「見て反応がなく、かつ呼吸がない、あるいは異常な呼吸(死戦期呼吸といい心停止直後に認められるしゃくり上げるような不規則な呼吸のこと)があれば心停止と判断し、ただちにCPRを開始します(写真6)。医療従事者や救急隊員は呼吸の確認時に気道確保及び脈拍の有無を確認しても構いませんがこれらを行うことによりCPRの開始が遅れないようにしましょう。
○CPR

 G2010においては小児も成人と同じくG2005の気道確保(Airway)、呼吸確認(Breathing)、胸骨圧迫(Circulation)でA-B-CからC-A-Bへと変更になりました。ただし、小児では人工呼吸を胸骨圧迫30回待たずに準備が出来次第行います。初めから人工呼吸できるのであれば人工呼吸から行いましょう(写真7)。

 胸骨圧迫については成人と同じく胸骨の下半分(胸の真ん中)(写真8)を「強く(小児は胸の厚さ約1/3・約5cm)、速く(1分間最低100回のリズムで)絶え間なく(中断は最小限に)」を心がけ実施しましょう。小児の胸骨圧迫では胸の厚さ1/3を押すことができれば両手・片手のどちらでも構いません。

先ほど書いたとおり人工呼吸は出来るだけ速く行います。その理由として小児では呼吸停止に続いて心肺停止になることが多いため人工呼吸が重要とされています。人工呼吸回数は2回で1秒かけ胸が上がる程度(写真9)吹き込みます。回数は変更ありません。

また、人工呼吸時にはフェイスシールド等の感染防御資材は不要となりました(写真10)。しかしフェイスシールド等が使用可能であれば使用したほうがよいと思います。

胸骨圧迫回数と人工呼吸の回数は30:2で成人と変わりありません。しかし2名でCPRを行う場合は1名が胸骨圧迫、もう1名が人工呼吸を行い15:2で実施します。

○AED

 AEDが到着次第パッドを装着します。G2010では小児用パッドの使用年齢が未就学児(およそ6歳)となりました。なお、小児パッドがない場合成人パッドを代用することは今まで通りとなっています。パッドの貼付位置については前胸部と側胸部で成人と同じです。傷病者の体格が小柄な場合は前胸部(写真11)と

背面(写真12)に貼付します。

AED装着後は自動的に心拍を解析し電気ショックが必要か音声で指示があります。倒れている人に触れている人がいないことを確認し通電ボタンを押します。電気ショックを行った直後または電気ショックが不必要な場合は引き続きCPRを行い、これを2分おきに繰り返します。このときも「強く・速く・絶え間ない」胸骨圧迫を忘れないようにしましょう。

○一次救命処置の継続

 一般市民では傷病者に十分な循環が回復するか救急隊等に引き継ぐまでCPRを継続します。とはいえ救急車が到着するまで平均約8分かかります。胸骨圧迫だけでもかなりの体力をつかいます。なので疲れて来る前に胸骨圧迫を交代(写真13)します。

○気道異物による窒息

 小児の気道異物による窒息では背部叩打法(写真)

腹部突き上げ法(写真)、

胸部突き上げ法(写真)を用いて異物除去を試みます。腹部突き上げ法は、傷病者の後に回り片手で握りこぶしを作って親指側を「へそ」の上方、みぞおちより十分下に当てその上をもう一方の手で握り手前上方に向かって圧迫するよう突き上げます。また気道異物の窒息により反応がなくなった場合は直ちにCPRを開始しましょう。

○おわりに

以上がG2010における小児の救命処置になります。小児では成人と違い人工呼吸を重要としています。しかし基本は成人と同じく「強く・速く・絶え間ない」胸骨圧迫です。わからなくなったり迷ってしまったら胸骨圧迫を優先しましょう。あとは訓練あるのみです。私自身まだまだ勉強不足なのでこれから訓練を重ね救急隊員として多くの人のために活躍できたらと思います。


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