250410_VOICE#102_どんな時でも重症者の早期搬送!

主張
DSC_0855

月刊消防 2024/07/01, p80

月刊消防「VOICE」

 


どんな時でも重症者の早期搬送!

 多数傷病者が発生した災害に出動した経験はありますか。多数傷病者発生事案後の振り返りや検討会では、「活動の流れがうまくいかなかった・・・」、「重症者を早期に搬送できなかった・・・」等の反省があるかと思います。私が先着救急隊として出動した体験をご紹介します。


先着救急隊は、大規模災害対応救急隊(救急隊の統括を担う小隊)の到着まで、出動している複数の救急隊に対し救急指揮活動を行います。私が経験した事案は、大規模災害出動指令(救急隊16隊出動)が入り、先着救急隊として活動し素早く重症者を病院搬送したものです。


それは平成28年5月にJR三ノ宮駅近辺で発生した事案です。

私は救急隊長として大規模災害指令を聞き、出動場所が駅であったため、列車事故もしくは駅構内で災害が発生したと思いました。消防署から駅までは2分程度、自隊は最先着する救急隊でした。自隊が先着救急隊であることを無線で出動隊へ情報共有、ドクターカーの出動要請、医療情報の取得を管制室へ依頼しました。部署位置は救急指揮の取りやすさ、災害状況の把握、円滑な搬送導線から駅南側に部署予定でしたが、出動途上の付加情報で119番通報の入電が多数あり、駅北側で乗用車が暴走し多数の負傷者が発生との内容であったため、駅北側へと変更しました。現場到着すると、負傷者が歩道や道路に点在、救急隊を呼ぶ声が周辺にこだましていました。私はまず事故と負傷者の人数状況の把握のため現場周辺を確認しました。負傷者が点在する中、私から10m程度離れた道路上に倒れて動かない2名が目に飛び込んできました。負傷者の衣服を見ると、破れや汚れが目立ち乗用車に接触後、跳ね飛ばされ車両に巻き込まれたと推測しました。この2名が重症と判断し後着した救急隊に対応を指示しました。他の負傷者にあっては自隊の隊員を向かわせ、順次到着した救急隊に観察及び処置等を対応させました。負傷者を確認したところ5名、出動救急隊は16隊であったため、消防力優勢と判断し負傷者1名に救急隊1隊で対応させました。大規模災害対応救急隊が到着し状況を説明後、救急指揮権を移行し指揮補助として活動しました。

中等症以下の3名は、救護所に集約させ、2次トリアージ、処置、搬送を行い重症者は円滑に三次医療機関へ搬送され事案は終息。消防力優勢であったことにより、傷病者対応が円滑に行えた事案でした。もし傷病者数と救急隊数が逆であった場合は、ここまで円滑に対応できたかどうかわかりません。

神戸市消防局では、JR福知山線の脱線事故をうけ、平成17年から大規模災害対応救急隊を創設し、大規模災害に対応できるように救急救命士に対して訓練を実施してきました。令和3年度から大規模災害対応の標準化を図り、統一された現場対応が展開できることを目的に、「大規模災害・多数傷病者対応研修・訓練」を実施しています。どのような場面でも救急活動の質を低下させることなく、これからも「重症者の早期搬送!」を心に刻み頑張ります。

名前       圓尾 隆晴(まるお たかはる)
所属       兵庫県 神戸市消防局垂水消防署消防防災課救急係
出身地      兵庫県たつの市御津町
消防士拝命日   平成13年4月1日
救急救命士合格年 平成18年
階級       消防司令補
趣味       硬式テニス
主張
スポンサーリンク
opsをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました