基本手技
小児の救急医療・理論と手技(動画あり)
水落建輝
歌登町国民健康保険病院 小児科
動画コーナー(QuickTimeムービー。見られない方はここからダウンロード)
撮影:川久保悟(歌登)
小児の心肺蘇生法CPR・良いデモンストレーション(2.5MB)
小児の異物除去方法・ハイムリック法(立位/仰臥位)(2.3MB)
小児のバイタル
体温 成人より0.5~1.0℃高い。37.5℃までは、一般的に発熱とは言えない。38℃以上を発熱と考える
脈拍 橈骨・頚・大腿動脈の触診や、心臓の触診・聴診でみる。
明らかな頻拍 徐脈
新生児 200回/分以上 70回/分以下
乳児 150回/分以上 60回/分以下
幼児 120回/分以上 50回/分以下
脈拍は、体温1℃上昇で10回/分上昇する。
呼吸 新生児・乳児は腹式呼吸。
2歳以上になると胸腹式。
3~4歳より胸式呼吸へ。
血圧 仰臥位、右上腕動脈の血圧を指標とするのが一般的。
年齢 | 脈拍数/分 | 呼吸数/分 |
新生児 | 125(70-190) | 40(30-50) |
乳児 | 120(80-160) | 30(20-40) |
2-4歳 | 100(80-130) | 25(20-35) |
6-10歳 | 90(70-115) | 20(15-25) |
収縮期 | 拡張期 | ||
乳児 | 3ヶ月 | 88 | 51 |
12ヶ月 | 92 | 52 | |
幼児 | 18ヶ月 | 92 | 54 |
36ヶ月 | 96 | 54 | |
小学生 | 1-3年 | 88-94 | 59-65 |
4-6年 | 97-100 | 47-58 | |
中学生 | 102-110 | 70-73 |
心肺蘇生法(ABC)
A 気道確保(Airway)
�@ 呼びかけ、刺激に反応がない場合。
→頭部後屈下顎挙上法
�A 頚椎損傷が考えられる場合。
下顎把持法
B 呼吸(Breathing)
呼吸しているかどうかの確認は、
胸やお腹の動きを目で ⇒見る!
呼吸の音を耳で ⇒聴く!
呼吸の風を肌で ⇒感じる!
呼吸があれば、気道の確保を続け、顔色不良やSpO2低下あれば酸素投与を開始する。
* 呼吸がない場合
�@ 器具なし(mouth to mouth)
対象 | 1回吹き込み量
(/1-1.5秒) |
間隔 |
成人 | 800-1200mL | 5秒ごと |
小児 | 胸が軽く膨らみ胃膨満が発生しない量 | 4秒ごと |
乳幼児 | 3秒ごと |
�A バッグ・マスクによる気道確保と人工呼吸
1) 4種の必要物品(マスク、バッグ、酸素、吸引)を用意。
2)マスクを顔面にフィットさせる。
母指と示指は、Cの字を描くようにしてマスクを把持する。そして、そのマスクで鼻と口全体を過不足なく覆う。マスクは顔面に垂直にあて、マスクの周りからのエアリークがないようにする。エアリークのないようにマスクを患者の顔面にフィットさせることは意外に難しく、マスク・バッグ換気が有効にできない原因となることが多い。常日頃から練習を心がけたいポイントである。
3)下顎保持、頚部伸展によって気道を開通させる。
母指と示指以外の3指は、Eの字の形をとるように下顎角を保持し、やさしく頚部を伸展させる。乳児の場合は頭部が大きく、喉頭隆起が発達しており、そのまま仰臥位にすると頚部が前屈して気道が閉塞することがある。この場合には、薄めの肩枕を入れることにより自然な頚部の位置が保たれることがある。また、手指全体で患者の下顎を鷲掴みにすると、気道軟部組織を圧迫して気道閉塞を起こすことがあるので注意する。あくまで、母指と示指以外の3指で下顎角(骨のみ)を保持するよう心がける。
以上の2,3をC-E保持法という。
C 循環(Circulation)
まず心拍の確認を行う。ここで心拍が本当にないのか、あるいは自分が触知できないだけなのか、ということは大きな問題である。日頃から、いろいろな年齢の小児の脈を触知して慣れておくことが大事である。迷う場合には、循環徴候(自発呼吸・咳・体動)を確認する。脈拍の触知に自信がなくても、循環徴候のある患者は、少なくとも心停止状態ではありえない。脈が触知されない場合、乳児や循環動態の悪い小児で脈が60回/分以下の場合、また、循環徴候のない場合は心臓マッサージを開始する。
成人および年長児 | 1-8歳 | 乳児 | 新生児 | |
脈拍確認 | 頸動脈 | 頸動脈 | 上腕動脈
(大腿動脈) |
臍動脈
(胸部聴診) |
押す部位 | 胸骨体下半分 | 胸骨体下半分 | 胸骨体下半分、左右乳首を結んだ線より1横指下 | 胸骨体下1/3
左右乳首を結んだ線直下 |
使う手の部位 | 手のひらの下半分にもう一方の手を重ねる | 手のひらの下半分 | 両拇指を胸骨前に他8指を背面に
または片手第3、4指を胸骨前に |
両拇指を胸骨前に、他8指を背面に |
深さ | 4-5cm | 背中までの距離の1/2-1/3 | 背中までの距離の1/2-1/3 | 背中までの距離の1/3 |
回数(毎分) | 100 | 100 | 最低100 | 心マ+換気の合計が120 |
心マ:換気 | 5:1 | 5:1
3秒間に5回心マ1回呼吸 |
5:1 | 3:1 |
ここが押すところ
胴体を両手で包み込んで両方の親指で押す。
教科書には片手と書いてあるが力が入らず疲労も大きい
前のめりになって全身で押す。3秒で1サイクル。非常に速い
全身で押すこと。
腕が曲がっては有効に押せない
もっと前のめりにしないといけない。腕も曲がっている。
(動画が入ります)
救急処置が必要なことが多い小児の病気
1. 痙攣
衣服を緩め、気道確保をしっかりと。嘔吐にも対応できるような体位で。
痙攣既往があり、抗痙攣剤(ダイアップなど)を持っていればすぐに使用し来院する。痙攣は早く止めるに越したことはない。
発熱の有無は?
痙攣のタイプは?
持続時間は?
2. 溺水
心肺蘇生に尽きる。病院到着時の状態が、その子の人生を左右する。
3. 異物誤飲
吐かせてはいけないもの…意識消失、昏睡、痙攣のある児。
石油、灯油、シンナー、ガソリンなどの揮発性物質。
強酸・強アルカリなどの腐食性物質。
水や牛乳を飲んではいけないもの…タバコ。
異物の除去方法
乳児に対しては、背部叩打・胸部圧迫を。それ以上の年齢の小児には腹部圧迫(ハイムリッヒ法)を行う。いずれも胸腔内圧を上げることにより急速な呼気をつくり、異物を除去する。
�@ 背部叩打法
患児を救助者の前腕に腹臥位にして乗せ、手で顎を支えて頭部を固定する。
救助者は自分の前腕を大腿の上に乗せ安定をはかる。
両側の肩甲骨の間をめがけて
患児の頭部が体幹より下になるようにし、掌の付け根で5回、1回1回区切りながら力強く叩打する。
�A 胸部圧迫法
患児を救助者の前腕を仰向けにして乗せ、手で頸部および後頭部を支えて救助者の大腿上で安定をはかる。
患児の頭部を体幹より下になるようにし、心臓マッサージの方法と同様に、患児の胸骨の下半分を2本指で圧迫する。約1秒ごとの間隔で、1回1回区切りながら5回圧迫を行う。
�B 腹部圧迫法(ハイムリッヒ法)
立位による腹部圧迫法⇒意識のある患児に行う
患児の後ろに立つか、ひざまずき、患児の脇の下に両腕を通して抱きかかえるようにする。一方の手で拳をつくり、もう一方の手を上に添える。
拳の親指の付け根で、腹部正中線上の臍よりやや上部を上方に向けて5回、1回1回区切りながら圧迫する。内臓損傷を起こす可能性があるため、剣状突起や肋骨弓を圧迫してはならない。
仰臥位による腹部圧迫法⇒意識のない患児に行う
患児を仰臥位にし、下肢の上にまたがって両手を重ねる感じで腹部正中線上、臍上部を手のひら付け根で
素早く5回、やや上向きに圧迫する。圧迫は1回1回区切りをつけて行う。
その際、剣状突起や肋骨弓を圧迫してはならない。
�C 直視下で異物を取り除く方法
母指と他の4本の指で、患児の舌と下顎をつかみ上方に引き上げ、喉の奥を確認し、
異物が見えたら、もう一方の手の示指で引っ掛けて取り除く。異物をさらに押し込む危険性があるので、盲目的に行ってはならない。
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