190313応急処置アップデート(11)骨折

 
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基本手技

雑誌 健康教室 2019年2月号

応急処置アップデート

骨折

目次

ポイント

1.押したところと別のところが痛いときは骨折を疑う

2.腫れや痛みが引かないときは骨折を疑う

今回は骨折です。足や手がぐにゃりと曲がっていれば誰でも骨折と分かるのですが、手足の指の骨折は分かりづらいものです。

1.骨折したらどうなるか

骨の多くは円柱になっています。表面は骨膜という感覚神経に富んだ膜があり、円柱の内部には骨髄細胞と脂肪からなる骨髄を入れています(図1)。骨髄の中では血液の元となる幹細胞が存在し、それがどんどん分裂することで赤血球・白血球・血小板が作られてます。血液の細胞が骨髄で作られるのですから当然多数の血管と骨髄は繋がっています。

 

骨折すると敏感な神経が集まっている骨膜が損傷し、激痛が発生します。次に折れたところから血液が周囲に流れ出します(図2)。

この出血の量は例えば大腿骨(太ももの骨)なら1Lも流れ出るとされています。当然折れた部分は不安定になりますので、骨折点から遠い部分に外力がかかっても折れた部分が痛むと同時に、骨髄から血液が周囲に流れ続けることになります。その結果

・変形している

・どこを押しても同じ部分が痛い

・皮膚が赤黒く腫れ上がる

・いつまでも痛みと腫れが引かない

ことになります。

関節内骨折でも基本は同じです。ひどい突き指で関節の中の骨が欠けた場合は、指の軸が変位し、動かすと関節に激痛が走ります。また関節は大きく腫れます(図3)。痛みと腫れは少なくとも1週間は続きます。

骨折の割れ口で神経を傷つけた場合は傷つけた神経に応じた運動・感覚障害が出ます。また割れ口が皮膚を破って外に出て来る場合もあります。こうなると感染の危険が高まり、治療に難渋することになります。

2.骨折の見分け方

一目で分かるような骨折の場合は、余計なことをせずにそのまま固定して病院へ行って下さい。触ったりすることで出血や神経障害を引き起こす可能性があるからです。

(1)受傷直後

・尋常でない痛みや腫れがある

・加重できない(下肢の場合)

・どこを触っても同じ場所が痛い(図4)

・ちょっと動くだけでも激痛が走る

・息を吸うと同じ場所が痛い(肋骨骨折の場合)

骨折が疑われる場所を直に触らないようにしましょう。痛みのためその後の処置の協力が得られなくなるためです。

(2)受傷後数日経って(図5)

数日経ってから骨折が分かるのは手や足の甲や指です。受傷直後は打撲した周辺が広く痛くなるのですが、時間が経つにつれて痛みは限局してきます。

・痛みや腫れが引かない(目安は1週間)

・どこを触っても同じ場所が痛い

3.固定方法

・その形のまま

・上下を広く固定(図6)

するのが原則です。

足が90°に曲がっていては搬送が困難なのですがその場合でもそのままの形で固定を試みます(図7)。整復を試みると、骨の破片で血管や神経が傷つく恐れがあるからです。また、変形が高度なら全例で救急車を呼ぶはずですので、救急隊が到着するまでは手で変形部位を抑えておくのもいい方法です。

救急隊や医者は骨折部位より末梢を引っ張りながら真っすぐにして副え木を当てて弾力包帯でぐるぐる巻きにして病院に運びます。

副え木で固定する場合は、折れている部分の上下の関節も一緒に固定します。指の関節内骨折ならば指に副え木を当て、隣りの指と一緒にテープでぐるぐる巻きにします。

4.病院では

骨折の場所その程度に加え年齢で治療方法が異なります。例えば上腕骨が真ん中で折れた場合では、若ければ若いほどギブス固定だけで骨は付いてしまいますが、年齢が高くなればそれでは骨が付きませんし周囲の関節も固まってしまうため手術でプレートを入れる手術をします。それに対して鎖骨の骨折ではすれが少なければ高齢者であってもバンド固定で治癒することが多くあります。

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