近代消防2021/8
今さら聞けない資機材の使い方
傷病者を包むシールド
C
ディスポーザブルレインカバーを使用したアイソレーターの作成
福田早紀、本上 圭一 、稲垣 隆士、飯干 冠輔、平江 潤児 佐藤 好美、伊志嶺 天堂、藤本 賢司、佐藤 洋行
横浜市消防局 瀬谷消防署
目次
著者
福田 早紀
フクダ サキ
C_fukuda.jpg
所属 横浜市消防局 瀬谷消防署救急係
出身 横浜市
消防士拝命年 平成30年
救命士合格年 平成30年
趣味 読書、料理、プラモデル
1.はじめに
瀬谷消防署では経路は不明ですが救急隊員の新型コロナウイルス感染があり、非常に危機感をもって感染防止に努めてきました。
そこで特定の感染症傷病者を搬送する際に使用されているアイソレーターをより安価で簡単に作成することはできないか、と考え、皆でアイデアを出し合い、作成することになりました。
2.作成方法
感染防止の観点から単回使用とし、安価なディスポーザブルレインカバーを使用しています(C_001)。薄手のビニール製で傷病者の表情が見えるように顔の部分は透明になっています(C_002)。ストレッチャーの頭側と足側に半円状のフレームを取り付け(C_003)その上にレインカバーを被せます。レインカバーには処置窓を設置したためバイタル測定や酸素投与などの処置が可能です。処置窓は①ベルクロ②マグネット③密閉のチャックの3種類を試作しました。
レインカバーにフレキシブルなダクトを取り付け、救急車内の換気扇に接続し、レインカバー内のエアロゾルを含む空気がダクトを通じて救急車外に排出される構造です(C_004)。このダクトは筒状の厚紙を輪切りにしてビニールを巻くことでフレキシブルな構造となっています。今回、バドミントンの羽が入っていたケースを輪切りにしてダクトを試作しました。
ダクトは換気扇に接続します。車内の換気も行う必要があるため換気扇の半分を車内換気としています。半円状の紙が換気扇の陰圧で張り付いています(C_005)。換気扇が稼働していれば手を離してもダクトは落ちないで張り付いています。
簡易感染防止搬送用具内でエアロゾルに見立てた煙を発生させ、煙が充満した(C_006)ところで換気扇を作動させダクトを接続すると、簡易感染防止搬送用具の内部は完全な陰圧になりませんでしたが、ダクトを通じて救急車外に煙が排気されていることが確認できました(C_007)。実験中の救急車を外から見ると排気口から煙が出ているのが分かります。
また、摸擬傷病者を乗せた使用実験では、息苦しいなど不快感を訴える意見はありませんでした。
C_001
ディスポーザブルレインカバーを使用
C_002
顔の部分は透明
C_003
ストレッチャーの頭側と足側に半円状のフレームを取り付けてレインカバーを被せる
C_004
ダクトを救急車内の換気扇に接続して、レインカバー内のエアロゾルを含む空気がダクトを通じて救急車外に排出する
C_005
換気扇の半分を簡易感染防止搬送用具内の換気に、もう半分を車内換気に当てている
C_006
換気実験。簡易感染防止搬送用具内に煙を充満させる
C_007
ダクトを通じて救急車外に煙が排気される
3.考察
救急車内という密閉された空間で感染症傷病者を搬送した場合、救急隊員への感染リスクがあることから、個人防護具による感染防止策と併せて、簡易感染防止搬送用具を使用し、エアロゾルや飛沫物等の拡散を防止し汚染されるエリアを限定的にすることにより、二次感染防止、隊員の精神的ストレス軽減の観点からも有効であると考えます。
今後の課題としては、車内換気扇の能力に問題がないかの確認と気密性の向上です。メーカーと連携した検証やレインカバーの気密性を高めるための検証を引き続き継続していきたいと考えています。
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