雑誌 健康教室 2022年3月号
応急処置アップデート the movie
#24
最終回
救急隊の初期評価
目次
動画解説
2年間にわたってお届けしてきたこの連載も今回が最終回です。救急隊がどのように重症度・緊急度を判断しているか「ABCD」の順でご紹介します。以前は「意識ABC」と言っていて、実際の患者診察でも「わかりますか?」と呼びかけるなど意識の確認が最初になるのですが、覚えやすさを優先し「ABCD」としたものです。
001
A:Airway
気道の確認です。普通に喋れれば大丈夫。息をするたびにゴロゴロと音がしたり、喉に何か詰まっているようなら、顎先を上げるなどの気道確保を行います。
002
B:Breathing
呼吸を見ます。呼吸をしているか、しているならそのリズムや深さに異常はないか観察します
003
C:Circulation
脈拍を確認します。手首の動脈を用います。手首で脈がよくわからない時には、足の付け根や首の動脈を触ります。脈の速さや強さを観察します。
004
D:Dysfunction of Central Nervous System
「中枢神経の機能不全」という意味です。自分は誰でどこにいて、何をしていたのか尋ねます。
005
判断に迷うときは救急車を呼びましょう。専門知識を持つ救急隊員が的確に判断してくれます。
アップデート
1.「先生!大変です!」から
私が過去に出版した「先生!大変です!救急車を呼びますか!!」(東山書房)に、救急隊が学校の先生に求めることを書いていたので再掲します。
救急車が到着したら
・サイレンが聞こえたら誘導をします
・患児の様子、事故の概要を伝えます
・内因性の病気では既往やかかりつけの医師の情報を伝えます
・応急手当の継続や資機材の搬入手伝いなどは救急隊員の指示に従ってください
救急車に同乗する先生は
・保護者の連絡先など、その子の個人情報を持参します
・大きな処置には保護者の同意が必要となるため、迅速に連絡をとります
・病院で待機する場合は医師・看護師がわかる場所にいましょう
2.連携・協力・情報
旭川近郊のH先生によると「職場の同僚達の連携、協力が大事ですよね。保護者への連絡はもちろんのこと、救急車誘導や周囲の子への配慮、保健室から玄関先への動線確保、所持していく子どもの荷物の用意など。養教は患児につききりになりますから、周囲のスムーズな協力に感謝です」
「最近では、個別の食物アレルギー情報も持参できるようにしていますが、一度給食便りを持参しようとしたところ、「詳細な食材情報(積算表)を持参した方がよい」と救急隊の方にアドバイスされたことがあり、なるほどなぁと思いました。」
3.連載終了にあたって
動画の連載が2年間、その前の文字と絵の連載を含めると4年間。ずいぶん長いこと書きました。「健康教室」の非常に滑舌の良いアナウンサーのような女性編集者からは連載の継続を求められたのですが、書きたいことは書いてしまったので、今回で連載は終了します。
動画撮影と編集を担当した原口良介救急救命士は、去年は養護教諭の研修会で講演し、この春からは県立病院内救命士として唐津消防から出向することが決まるなど、着実に活躍の場を広げています。佐賀県の皆さん、消防さんは講演料取りませんからどんどん呼んであげてください。モデルのやまぐちちょうすけ君はずいぶん大きくなりましたね。
いつも登場する旭川近郊のH先生はベテランの先生で綺麗な方です。動画撮影の前、絵コンテの段階で感想をもらい、それを原稿に織り込んでいました。現場の声を聞かせていただき感謝しています。
またの機会に皆様にお会いできる時を楽しみにしております。
文献
1)J MIcrobiol Immunol Infect 2021 Aug;54(4):541-6
2)Am Fam Physician 2014 Jun 15;89(12):965-70
3)Health Technol Assess 2021 Nov; 25(63):1-116
4)Ann Palliat Med 2019 Sep;8(4):372-80
監督
原口良介(はらぐちりょうすけ)
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唐津市消防本部消防署救急第一係
消防士長
消防士拝命:平成21年4月
救命士運用:令和元年7月
趣味:カメラ、動画編集
医学監修・解説
玉川進(たまかわすすむ)
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旭川医療センター病理診断科
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