230212_VOICE#78_「現場のニオイ」を言語化する

 
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主張

月刊消防 2022/06/07, p61

月刊消防「VOICE」


氏名:南波慶己(ナンバヨシミ)

所属:久留米広域消防本部

出身:長崎県佐世保市

拝命:平成14年4月1日

救急救命士研修:平成21年救急救命九州研修所第25期

指導救命士養成研修:平成30年第2期

趣味:旅行、サッカー

 

230728今さら聞けない資機材の使い方 115 「現場のニオイ」を言語化する救急活動リフレクションシート 久留米広域消防本部久留米消防署東出張所 南波慶己
近代消防 2022/11/11 (2022/12月号) p78-81 【プロフィール】氏名:南波慶己(ナンバヨシミ)所属:久留米広域消防本部久留米消防署東出張所出身:長崎県佐世保市拝命:平成14年4月1日救命士合格:平成21年救急救命九州研...
230212_VOICE#78_「現場のニオイ」を言語化する
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「現場のニオイ」を言語化する

「おい!ヨシミ!こっちへ来い!こっちの車両の傷病者状態を診てくれ!」
17年前、私が救急隊員となって1年目。「高速道路上で車3台が絡む多重衝突事故により7名負傷。1名は車外放出。」との指令に、救急機関員として出動しました。現場は騒然としており、焦る気持ちから、何から手を付けてよいか戸惑っている時、救助隊の頼れる先輩が私を呼んでいます。事故車両に近寄ると、50歳代女性が苦しそうにしており、頸部と腰部の痛みを訴えていました。「この人ヤバくないか?」と、先輩は言ったが、私は「いや、そうでもなさそうです。頸部と腰部の痛みを訴えているので、ネックカラーとショートボードを使用して救出します。」と伝えました。その後、その女性は搬送優先順位が低いと判断され、最後に2次医療機関へ搬送されました。事案終了後、その女性は骨盤骨折による循環血液量減少性ショックの診断により、高度救命救急センターへ転院搬送となったことを知らされました。

後日、私は悔しさのあまり先輩に電話をかけ、「自分には判断できませんでした。なぜ先輩は、あの傷病者が一番重症であることがわかったんですか。」と泣きながら訴えました。すると先輩からの答えは「現場のニオイ」との一言…。「現場のニオイって何ですか!先輩はヤバいと感じて、なぜ自分にはわからなかったんですか!」先輩は、「現場状況、傷病者が座っていた場所、車両の損傷箇所、痛みの部位、顔色、表情」とだけ答えました。

いま、私は救急救命士になって13年が経過し、指令内容、ファーストコンタクト(表情や顔色、皮膚所見)、過去の経験から、あの時先輩が口にしていた「現場のニオイ」を感じています。この「ニオイ」を救急隊員にも伝えたい。経験の浅い隊員が感じる漠然とした「ニオイ」を言語化することで、はっきりと「現場のニオイ」を感じるようになってもらいたい。その思いから、「救急活動リフレクションシート」(REFシート)を考案しました。隊員達にはREFシートの目的として、想定傷病名と確定診断名を一致させることではないことを強調しています。我々救急隊の目的は、迅速に適切な医療機関へ搬送することです。その際に最も注意すべきことは何か。「それはアンダートリアージを極限までなくすこと。」です。鑑別(想定)すべき疾患がわからなければその疾患に応じた観察をしない。観察をしなければ所見が取れない。所見が取れなければ判断ができない。これらを理解した上で使用することが重要です。

私自身、REFシートの普及が最終目的ではなく、皆が時間軸に沿った検証を習得することと考えています。この検証方法を習得できれば、(項目を埋めていくだけの)REFシートは必要でなくなると思っています。なぜその疾患を想定したのか。なぜ緊急度が高いと判断したのか。この症状(身体所見)の時に鑑別(想定)すべき疾患は何か。最終的に根拠を説明できるようになれば良く、その思考過程を会得するためのツールとしてREFシートが存在すると考えています。

 ダウンロードはこちらです。ダウンロードした方の責任において使用して下さい。

https://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/shobo/202207/reflectionSheet.xlsm

 

主張
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