月刊消防 2022/10/01号 p74-5
最新事情
ショックボタンのないAED
この連載の2022年8月号で、ショックボタンのないAEDについて書いた。そのAEDを借りることができた。
目次
オートショック
001が今回借りた日本光電製のAEDである。ショックボタンがあったところに「オートショック」と書いてあり、赤く点滅する見慣れたボタンはなくなっている。また以前は「小児」「成人」と記載されていたモード選択スイッチは「未就学児」「小学生~大人」に変更されている。液晶はカラーで大きく、救助者が行うべきことを順に示してくれる。液晶に書かれている内容はスピーカーからも流れてくるので、目の不自由な人も耳の不自由な人も使いやすい。
002は人形を使って訓練を行った時のもの。心電図解析のため体に触らないようにAEDから呼びかけられたあとは、適応があれば救助者は何もせずに放電が行われる。
001
日本光電 自動体外式除細動器 AED-3250
002
訓練の様子。借りたのは本物のAEDだったので放電までは確認できなかったが、どのように動くのかは見ることができた。
買い替えにはオートショックAEDを
AEDのショックボタン、一般の人にすれば押すことにすごく抵抗があるらしい。教職員向け講演会では、「ボタンを押してください」のアナウンスで例外なく教員たちが顔を見合わせるとか、ボタンを押すのは校長か養護の先生に限られるとかの話を聞いたことがある。
いつもショックボタンを押している人にとっては最大のイベントがなくなって物足りない気がするだろうが、それ以外の大多数にとっては、人に電流を流すという恐ろしいことを機械が肩代わりしてくれるのでありがたい機械である。
AEDは耐用年数は6年から8年と決められている。買い替えやレンタル品の更新では、ちょっと値は張るがオートショックを選ぶようにしよう。わずかでも心肺蘇生のストレスを軽減できるだろう。
AED2台打ち
5年くらい前から一人の患者にAEDを2台つけて同時に放電することが行われている。後ろ向きの研究では1台打ちに比較して2台打ちは自己心拍再開率が増やし、その効果は卒倒から時間がたつほど顕著になることが示されている1)。
2台つける利点は(1)高エネルギーを放出できる(2)1度目の放電後は除細動されやすくなる(3)二人分のパッドを使うことにより広範囲に電流を流すことができる、の3つが挙げられる2)。これに対してJRC蘇生ガイドライン2020では「連続した2回の電気ショックをルーチンに使用しないことを提案する」3)としている。内容を読むと、2台打ちで除細動に成功したと言っても、それが1台だったら失敗したのか、2台でなければ成功しなかったのかがわからないためらしい。現在カナダで前向き研究が行われている4)ので、どんな結果が出るか楽しみである。
文献
1)Resusucitation 2019 Jun;139:275-81
2)Mark Ramzy, Patrick G. Hughes:StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2022 Jan.
2021 Sep 12.
3)一般社団法人日本蘇生協議会:JRC蘇生ガイドライン2020.医学書院。東京。2021, pp100-101
4)Trials 2020 Nov 26;21(1):977
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