月刊消防 2025/01/01, 47(01)通巻547号 p17
四国のシェークスピア
リンク
『救急活動は、選択の連続である』
救急出動中の救急隊員は、選択の連続である。指令を受け、通報内容を確認し、緊急度を判断し、『スイッチをいれるかor入れないのか』の選択。その後、PPEの選定、出動経路の選択を行い、現場到着に至る。傷病者と接触すれば、どのような観察・処置をどんな順番に行うかとまた選択を求められる。さらに観察・処置結果に応じて搬送先の選択を求められる。また搬送先の収容依頼では、どのようなプレゼンを行うかなど、救急出動の中で多くの選択を求められる。この選択(意思決定)の積み重ねが救急活動を形成している。
救急活動における選択は、傷病者の生命に直結する点や時間的制約のある点、自己決定出来ない事象(本人同意や医師の指示など)が含まれている点など、意思決定をする救急隊員の心的負担が大きいと言える。また、昨今の救急統計を確認すると全国的に救急出動が増加し、救急隊員の現在・今後の労務環境は、厳しい状況であると言える。
しかし、この状況をポジティブにリフレーミングすると、前述した救急出動中という特殊環境下で選択(意思決定)するという救急隊員しかできない希少経験を積む機会が増え、さらにこの特殊環境下で生命に関わる重要な意思決定を短時間で行うというコモディティ化されないスキルを磨くことができる労務環境であるとも言い換えることもできる。
『人生は、選択の連続である』シェークスピアの名言のとおり、人生は、種々様々な選択の連続である。衣類の選択・食事の選択・住居の選択…衣食住の選択から、仕事・家庭…ワークライフバランスの選択など人生を送る上で選択は避けることはできない。選択するスキル、それは、人生を左右するスキルであると言える。この重要なスキルを磨くことができる救急隊員は、魅力的な仕事であるとも言える。(「ワークライフバランス」よりも「ライフワークバランス」としていく選択が、より良い救急活動に繋がるとも考えているのは私だけ?)
話を戻すと、少し強引なところもあるかもしれないが、このようにリフレーミングすると過酷な救急出動もポジティブに捉えることができる。なお、このリフレーミングも『どの視点で事象を捉え直すか』という『選択的要素』を含んでいる。『救急出動の増加』、『搬送困難事例の増加』、『救急隊員の労務環境悪化』など現在の救急体制に対して閉塞感が漂うワードがフォーカスされがちであるが、あえて今回はポジティブにリフレーミングして救急活動について考察し述べさせてもらった。
最後に、救急活動時の一つ一つの選択は、傷病者・家族・自分が納得できる選択になっているか?根拠に基づいた選択になっているか?自戒の念を込めて、名言を引用して締めたい。『救急活動は、選択の連続である』
リンク
コメント