2001/12/21(Vol.89)号「膝の痛み(2)」
ひざの痛み(2)
治療は歩ける距離によって変わってきます。普通の生活ができるのならば、生活指導をして必要なときに痛み止めを飲む、痛みの強いときには膝に直接潤滑油を入れる方法をとります。私が使っているのは歯を抜くときに使う仲間とヒアルロン酸です。後者は膝の液のベタベタする成分の一つで、化粧品にも使われる安全な薬です。膝の炎症が強くて水がいつも溜まる場合には回数を限定してステロイドというホルモン剤も使います。ステロイドは乱用すると骨がもろくなるので、症状のひどいときしか使いません。その薬も膝にバイ菌が入らないように、そのつど新しい薬の瓶から吸って注射しています。ひざの痛みが取れれば運動もできますし、筋肉を付けて膝を守ることもできます。
100〜200メートルしか歩けないようなら手術の対象となります。その中でもまだ膝の軟骨が残っているようなら膝の骨を曲げて良い軟骨で歩くようにする手術を、もう軟骨も残っていないようなら人工関節の適応となります。人工関節を嫌がる人が多いのですが、やってみると今までの痛みがなくなることで患者に好評のようです。
以上が手術をしない場合の話です。でも、どうしても膝が悪くなっていく場合には、私たちは積極的に手術を勧めます。
通常膝が痛くなる場合には、膝の軟骨が減ってきており、ひどいと骨があらわになっています。軟骨にはクッションと同時に膝の滑りを良くする働きがありますが、軟骨が減ってくると逆に紙ヤスリのように骨を傷つけるようになってきます。膝自体はその痛みから逃れるために骨を硬くしたり新しく骨をつくったりして対抗しますが、ヤスリの力には勝てずに変形が進んできます。診察して、これは手術が必要だと判断したら、次に手術の方法を考えます。まだ減っていない軟骨が残っているようなら、その減っていない軟骨を使って歩けるようにすねの骨を切って少し向きを変えます。これが骨切術です。利点は人工物を入れずに自分の力で痛みが良くなることで、膝の中をいじらないためバイ菌が付くこともありません。欠点はいずれその軟骨もダメになる日が来ることです。この手術の前には、残っている軟骨が元気か確かめるため膝の中にカメラを入れて検査をします。ただ、この手術自体は次に書く人工関節の発達のために少なくなりました。
玉川 進(たまかわ すすむ)
旭川医科大学第一病理学講座
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