051101 心マなくして蘇生なし

 
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心マなくして蘇生なし


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心マ:呼吸=30:2 現場についたらまずCPR 心マなくして蘇生なし 変わる救命講習 新しい応急処置 日本版救急蘇生ガイドライン


 先月、先々月とこの項で強調したのは心マの重要性であった。患者に取り付いた瞬間から心マを開始すること、心マを中断することなく継続すること。そのためには心マを中断する人工呼吸の回数を減らし、AEDのパッドを付ける前に1分間以上の心マをするように求められる。ガイドライン2005(G2005)特集の3回目は二つの勧告を紹介する。一つは「3連続ショック」から「ショックの間にCPR」に変わること、もう一つは「脈の確認は省略」されることである。

 家族はつらい

 現在のACLSのアルゴリズムではAEDの場合除細動のパッドを付けたあと3回連続して通電することになっている。3回の放電の間はAEDによる心電図解析のためCPRは行われない。
 この夏に救急隊員によるAEDデモを見せてもらった。そこではAEDのパッドを付けたあとは隊長が「CPR中断」と言ってから2回の放電と自発心拍再開を確認するまで2分間、心マは中断していた。これが3回連続となれば単純に考えて3分間の心マ中断となる。愛する人が死ぬか生きるかのときに、救急さんは胸にぺたぺたと何か貼った後は何にもせずに見ているという光景を家族はどう思うのだろうか。

 心マは中断してはいけない

 心マの中断時間が長ければ蘇生率が低下する。643例の病院外心停止症例の解析から、心室細動で自発心拍再開の率は心マを中断した時間が20秒を越えると明らかに悪くなることが分かっている。この結果は動物実験ではさらに著明で、人工呼吸のため心マを中断すると冠状動脈の血流量は急激に低下し、16秒間心マを中断すると神経学的な後遺症が残る危険性が増す。だが、AEDでは脈の解析のために心マの不可能な時間がどうしても存在する。96例の病院外心停止症例でのAEDモニターでの検討では、AEDを装着している間にCPRを行ったのは36%に過ぎなかった。さらに、AEDのパッドを付けてから剥がすまでに心電図波形解析のために費やす時間は装着時間の4割を占める。この心マの空白時間をなるべく少なくするようにガイドラインは求めている。

 3回連続ショックとAEDの進歩

 G2000の勧告で3回連続ショックとなっていたのには理由があった。現在救急隊員が用いている二相性除細動器が世界で広く用いられるようになったのはこの5年ほどであって、それまでは最初の放電で3-5割しか心室細動(VF)や心室頻拍(VT)から離脱できない単相性除細動器が用いられていた。ついこの間までは医師から特定行為の許可をもらい救命士がパドルを握って出力を上げながら何回も放電していたのである。ところが二相性除細動器はVT/VFに対し初回放電で9割以上有効なので2回目以降の放電を迫られることは以前に比べて激減した。逆にいえば2回以上放電を迫られる症例では心拍再開を得られる可能性がほとんどないことを示している。つまり、ショックを複数かける場面は少ないし、一回のショックで反応しないのはもうショックは無効と考えてCPRを行い、体勢を立て直した上でまたショックをかけるように勧告が変わるのである。放電は何回まで許されるかについては、残念ながらワークシートには記載がないのでG2005の正式発表を待つしかない。
 そうなると問題となるのはAEDそのものとなる。いかに早く心電図解析を行い充電をして放電指示を出せるかが生死の分かれ目と考えられるからだ。現在のAEDは進歩したといえども心電図解析にある程度の時間を取られる。積丹町の勉強会でこの話をしたら「やっぱりマニュアル放電だ」と叫んでいた隊員がいたが、二相性除細動器を使う限りその判断は正しいと思う。

 パルスチェックも省略

 心マの大切さは、CPR中のパスルチェックも改訂させた。
現在のG2000では15:2を4サイクル行ったあとに10秒間循環のサインを観察するとしている。しかしこの循環のサインを観察することについてはすでにG2000出版段階で「極端に不正確」と結論し、一般のバイスタンダーは循環の確認をする必要はないとしていた。
 G2005ではさらに医療従事者でも循環の確認は不要になりそうである。この5年間で新しい研究もいくつか発表されているが、基本的にはG2000のデータと変化はない。救急隊員であっても経動脈の触知が10秒以内で行えたのは最大で8割、ひどい報告になると2割を切っていること、さらに自脈のない患者に対しての経動脈触知の正解率が55%しかないことも、CPR中の頸動脈触知を省かせる理由となっている。新たなデータが乏しいのに勧告が変わるのは、ひとえに「心マなくして蘇生なし」の原則が強調されるからである。呼んだり揺すったりして呼吸循環がないことが明らかな場合は脈の触診は行わずにすぐ蘇生にかかり、そして、明らかな循環再開のサインがない限り心マをやめてはいけない。

参考文献
C2005 evidence evaluation worksheets
日本蘇生協議会ガイドライン2005ダラス会議


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