case25:腹部大動脈瘤破裂

 
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症例

case25:腹部大動脈瘤破裂

74歳男性
高血圧、糖尿病で薬物治療中。また長距離を歩くと両下肢が痺れる。
庭いじりの最中、腰に激痛が走り、腹に何かできて足も痺れてきたので救急車の出場を要請した。
現着時、患者は今に仰臥位でいた。意識清明、顔色不良。汗をかいている。腹部には拍動性の腫瘤が触れる。両下肢は冷たい。
血圧220/150mmHg, 心拍数80回/分。SpO2 94%。

Q1:考えられる疾患は
Q2:搬送時の注意点は

A1:高血圧、糖尿病で連想されるのは血管疾患である。歩くと足が痺れるのは間欠性跛行といい、血管が詰まって下肢の筋肉に十分血液が供給されなくなる血管性と、腰椎が変形して下肢に行く神経が圧迫される神経性の2種類がある。
腰に激痛が走り、腹部に何か触れるようになったことと、上述の血管疾患から考えあわせると、腹部大動脈瘤破裂が考えやすい。動脈瘤破裂ではほぼ例外なしに極端な血圧上昇が見られる。

A2:破裂部位は拡大する。腰の痛みが移動しないか訴えをよく聞く。さらに、破裂がひどく腹腔内に穿破した場合には急激な腹部膨満に続きショック状態になる。血圧の推移も確認する。

解説
腹部大動脈瘤は高度の動脈硬化に続き、動脈壁が血圧に耐えきれずに変成しゆっくり瘤状に膨れてくるものである。大動脈を形成する内膜、中膜、外膜のうち、中膜の変成が原因とされる。
大部分は無症状で、なんらかの検査の際に発見される。やせ形の患者の場合では拍動性の腫瘤が腹部で触れることがある。破裂した場合には急激な腰痛がおこり、それが大出血になるとショックとなり死亡する場合もある。
破裂の危険性は瘤の直径が5.5cm以上の場合とされている。予定手術での腹部大動脈瘤手術は現在非常に安全な手術であり、死亡率は0%に近い。
本症例では間欠性跛行の精査によって以前より腹部大動脈瘤が指摘されており、直径も6cmあることから手術を強く勧められていた(図1:腹部大動脈造影。膨らんでいるところが大動脈瘤)。

今回のエピソードは腹部大動脈の破裂である。患者は救急外来搬入直後にはショック状態となり、大量輸血を余儀なくされた。

緊急手術では瘤の上流の正常血管部分から両下肢への血管に人工血管を繋ぐ手術を施行した(図2:手術後。瘤が切り取られて人工血管になっている)。

術後呼吸状態が悪く、気管挿管のうえ人工呼吸管理を余儀なくされた。抜管後も無気肺や肺水腫などを繰り返し(図3:術後肺水腫。右肺に水がたまって白くなっている)、1ヶ月近くICUでの滞在を余儀なくされた。


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