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測定部位と清拭方法から血糖値の誤差を検証

 測定部位と清拭方法から血糖値の誤差を検証

2018年4月11日水曜日

プレホスピタル・ケア 2017年12月号

研究論文 投稿

指先と耳朶で血糖値は異なる。また穿刺部位に付いたブドウ糖の拭き取り方で測定値は異なる。

田中万之1)木下真紀2)

1)奈良県広域消防組合 天理消防署

2)天理よろづ相談所病院 臨床検査科

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筆者連絡先

・氏名:田中 万之(たなか かずゆき)

顔写真

 奈良県広域消防組合 天理消防署

 救急課救急係長

 〒632-0072 奈良県天理市富堂町10番地3

 TEL: 0743-62-3322 FAX: 0743-63-5611

・昭和49年生まれ 42歳

・平成 9年4月 消防士拝命

・平成23年3月 救急救命九州研修所卒業

・平成23年5月 救急救命士国家試験合格

・平成27年1月 気管挿管認定

・平成27年4月 処置拡大2項目認定

・平成28年4月から奈良県広域消防組合天理消防署勤務

はじめに

救急現場における血糖測定は、低血糖状態の傷病者に対し重要な救急救命処置である。このため、測定値の誤差を少なくするためのポイントがいくつか指摘されている(表1)。

表1

血糖測定値の誤差を少なくするためのポイント1)

—————————

・指をきれいに洗っておく。

・手指を消毒した後は、消毒液が完全に乾いてから穿刺する。

・穿刺後、血液を強く絞り出さない。

・血液が点着した時のピッ音は、鳴りやむまで試験紙又はチップを血液に触れさせておく。

・血液量が足りなくても、2度付けしない。

—————————

果実を触ったり、砂糖が付着している食べ物等を触った後は、指先に付着した果汁や糖分が採血した血と混じり、測定数値が高く表示される場合がある1)。また同一人物であっても穿刺部位が異なれば血糖値も異なることも知られている2)。

私は以前、救急隊の血糖測定では低血糖が否定され搬送された傷病者を院内で検査したところ「低血糖であった」という症例を経験した。血糖値が異なった原因として採血部位とそこの清拭方法の差があると考え、医療機関の協力を得て検討した。

対象と方法

(1)研究1:穿刺部位による血糖値の違い

対象は健康な成人10名である。指先と耳朶から血液を採取し血糖値を測定した。

(2)研究2:測定前に果実に触った状態を想定

対象は同3名である。10gのブドウ糖を100mlの生理食塩水に溶解して、10g/dlのブドウ糖液を作成した。指先に付着させ手指を乾燥させた後、異なる5つの清拭方法で指先を拭った後に採血し血糖を測定した。

5つの方法は以下のとおりである。

1)清拭なし

2)アルコール綿で軽く2~3回拭き測定

3)アルコール綿でゴシゴシ10回以上拭き測定

4)濡れたタオルで10回ほどしっかり拭いた後、アルコール綿で軽く拭き測定

5)石鹸でしっかり洗った後、アルコール綿で軽く拭き測定

結果

(1)研究1:穿刺部位による血糖値の違い(表2)

表2に結果を示す。10名とも同じ数値ではなく、最大で35mg/dlの差が認められた。

(2)研究2:測定前に果実に触った状態を想定(表3)

表3に結果を示す。指に付着したブドウ糖は、アルコール綿で10回拭いても拭きとることはできなかった。その反面、濡れタオルで10回拭いた時は、石鹸で洗った場合とほぼ同等の効果が認められた。

表2

研究1:穿刺部位による血糖値の違い

表3

研究2:測定前に果実に触った状態を想定

考察

この研究では

(1)同一人物でも測定部位によって、血糖値が異なること、また、

(2)糖分をつまんだ指をアルコール綿のみで拭いても指に付着した糖分を拭き取ることはでないが濡れタオルで拭くことによって糖分は除去できることを示した。

私たちは血糖値測定では皮膚消毒の意味でアルコール綿の清拭を行うが、正確な血糖値測定のためには穿刺部位を水で拭く必要がある。これはブドウ糖が消毒用アルコール(エチルアルコールもしくはイソプロピルアルコール)にほとんど溶けず水に溶けやすいためである。

血糖測定は傷病者への侵襲が少なく、しかも傷病者の意識障害の原因を特定し治療に直結する重要な検査である。これからも血糖測定器での測定値に誤差が生じる要因を理解し、正確な測定に努めたい。

結論

(1)血糖測定値に影響を及ぼす要因として、採血部位と手指の清拭方法について検討した。

(2)指先と耳朶で測定値が異なる。また穿刺部位に付いたブドウ糖の拭き取り方で測定値は異なる。

引用文献

1)医薬品医療機器総合機構PMDA医療安全情報 No28, 2011年11月。血糖測定器の取扱い上の注意について

2)Bina DM, Anderson RL, Johnson ML, et al:Clinical Impact of Prandial State, Exercise, and Site Preparation on the Equivalence of Alternative-Site Blood Glucose Testing. Diabetes Care 2003 ; 26: 981-985

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