151109気づける人

 
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151109気づける人

作)カロリーバランス

 就職したての頃は、日々仕事を覚えるので精一杯になりながら、来客の接待、庁舎の掃除、食事の準備など雑用もこなさなければなりません。私も新人の頃は何の疑問も持たずに雑用に精を出していました。ところがある日、職場の先輩から「雑用は新人の仕事だから、お前がやれ!」と、雑用は新人がするのが当然と言わんばかりの言葉を投げつけられました。この言葉を聞かされてから日に日に嫌な仕事へと変わっていき、後輩が早く入ってこないかなあと思うようになりました。そんな思いとは裏腹に、後輩が採用されたのは私が採用されてから5年後でした。

 これでやっと雑用から解放されると思っていたのですが、さすがに5年も経験すると気持ちに余裕が出来たせいでしょうか、雑用仕事がいつのまにか苦にならなくなっていました。だからといって、新人君にこの仕事を教えない訳にもいかず、引き継いでいくことになりました。しかし、以前先輩から言われたように強制的にやらせても、「大事な仕事」が「嫌な仕事」になってしまうだけ、しかも自分が「嫌な仕事」と認識してしまっていたので、どう伝えれば分かってもらえるか考えました。先輩に相談しても「そんなの、やらせておけばいいんだ!」と、説得力ゼロの回答。何か良い方法はないかと、模索する日々が続きました。

 ある日手にした雑誌に「雑用仕事の大切さ」について書かれていました。読んでみると、雑用仕事をこなしているうちに気付くことがたくさんあるということが書かれていました。例えば、お客さんが来て飲み物を出すときに、お客さんの飲み物の好みは温かいものか冷たいものか、出すタイミングはいつが良いか。飲み物を出すことだけでも観察が必要で、雑用とはこういうことに気付ける人になる大事な仕事と書いてありました。思い起こせば確かに私も雑用をこなしているうちに回りを観察して色々なことに気付くようになっていたようです。消防の仕事、特に現場活動では「気付く」事が大事で、隊長に言われなくても活動中に必要な資機材を気付いて準備ができる、話すことができない患者さんの仕草を見て何が必要か気付いて対応するなど、実は雑用は大切な仕事のようです。新人君にも「これを伝えれば、分かってもらえるだろう」と思って、次の勤務日に伝えることにしました。

 次の勤務日に新人君と一緒に話す機会があったので、雑用仕事について話してみました。「実は、自分は嫌な仕事だったんだけど、雑用仕事って大事なんだよね」と話しを切り出しました。そして、何故大事かを伝えようとしたとき新人君が「先輩、大丈夫ですよ。雑用仕事、俺大好きなんでやりますよ!」あれ?、そうだったの。自分が嫌だと思っていたので、新人君も嫌だと思っていたら、そうではなかったようです。でも、せっかく話す機会があったので、大事な仕事だと伝えると「ますます、やる気が出てきました。ありがとうございます。」と嬉しい返事が返ってきました。新人君にどう伝えたらよいか頭を悩ませていたのですが、どうやら今回は新人君が上手だったようです。「気付ける人」が増えてくれて、嬉しくなりました!


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15.11.9/11:34 AM

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