170820_2014年版グラスゴーコーマスケール

 
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グラスゴーコーマスケール(Glasgow Coma Scale, GCS)は意識状態を3つの面から点数化する評価方法である。1974年に医学雑誌Lancetに掲載された1)。グラスゴーとはイギリスコットランドの都市名で、発表者がその大学に在籍していたことに由来する。当初は発表者が脳外科医であったこともあって脳外科領域で用いられて来たが、次第に救急現場でも用いられるようになり、今や世界標準の評価法となっている。

2014年版GCS

GCSは開眼機能・言語機能・運動機能の3つを点数化し、それらを足すことで意識状態を判断する。発表から細かい改変がなされているのだが、インターネットで調べるとその表現にはかなりの混乱が見られる。ここに2014年版のGCS 2)を掲載しておく(表1)。オリジナルでは最高で8単語で説明をしているが、現在は1単語もしくは2単語で表記されている。大きな変更があったのが運動機能の項目で、オリジナルでは屈曲を「引きずる」「屈曲する」としていたのに対し、2014年版では「正常な屈曲」「異常な屈曲」となった。考案者によると、当初から屈曲を正常と異常に分けようという気持ちもあったのだが、看護師や若い医師には判断が難しいとの理由で見送られたらしい3)。正常・異常には説明がついており4)、正常な屈曲とは迅速で行うごとに変化する屈曲であって腕が胴体から離れるもの、異常な屈曲とはゆっくりでやるたびに同じ動きをするもので、腕が胸を横切ったり前腕がねじ曲がったり拳を握ったり、腕とは逆に下肢が伸びるものをいう。

頭部外傷患者の予後予測としてのGCS

GCSは現在の患者の状態を示すものであるが患者の予後をも推測できるのではないかと考え、最近でも多くの研究が行われている。成人ではGCSの点数の低いものほど予後が厳しいのは多くの論文で指摘している。外傷性頭蓋内出血ではGCSの値が低いと予後が悪くなる5)。90歳以上の頭部解消患者でGCSが10未満のものは予後は非常に厳しい6)。

一方、小児の場合にはGCSはそれほど予後予測の役に立たない。ある論文7)ではGCSが5未満の場合には予後が悪くなる傾向は見られるものの有意差はなく、GCSより年齢や高血糖、出血傾向がその予後を決定したと述べている。また別の論文8)では死亡率に関係する因子として、GCSが8点未満では予後と死亡率が悪化すると述べている。小児の脳は可塑性が高く、事故によって失われた機能を脳の別の部分で代償できることが多い。来院時のGCSが低くても脳の中で組み替えができれば生命も機能も回復するのに対し、高齢者では可塑性がほとんど失われるため来院時のGCSで予後が決まってしまうのだろう。

評価方法はGCSとJCSだけではない

日本ではGCSよりもJapan coma scaleがよく用いられている。世界を見渡してもGCS以外の評価方法が知られている。GCSを含む5種類の評価方法を用いてどの方法が患者の予後を反映できるか調べた報告9)がある。筆者らは頭部外傷患者を1年間追跡し、どの評価方法が仕事復帰を予測できたか検討した。対象は65歳未満の頭部外傷患者207名である。その結果、仕事復帰の予測が最も可能であったのはInjury severity score(ISS)であり、GCSは最も予測が困難であった。ここでISSとは多発外傷の重症度を解剖学的に評価する方法で、患者の損傷部位とその障害度で点数化するものである。

世の中にたくさんの評価方法があるということはそれぞれに求めるものが違っていること。GCSは世界一有名であるが、全てをまかなえるものではない。今回挙げたISSなど他の評価方法を知ることで、GCSの正しい使い方もよく理解できるようになる。興味があったら調べてみよう。

文献

1)Lancet 1974;2;81-4
2)Lancet Neurology 13:844-54
3)J Neurol Neurosurg Psychiatry 1978;41:603-10
4)Nursing time 2014;110:12-6
5)J Clin Neurosci 2016;Sep;31:152-6
6)Worls Neurosurg 2016;94:493-500
7)Neurosurg 2010;67:1542-7
8)Dewan MC; Neurosurg 2016 Epubハ
9)Accid Anal Prev 2016;98:101-7


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17.8.20/7:15 AM

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