救急症例
『バイク事故による右足切断搬送事例について』
講師:三好正志
留萌消防本部:救急救命士
(本当は小平消防の勝原盛がする予定だったのだが、病院実習が遅くなって三好正志が担当した。)
はじめに
外傷によって完全離断の場合は、創面状態や感染危険などのいくつかの条件により、常温で6時間が再接着のゴールデンタイムといわれている。今回、バイクの転倒事故によりバイスタンザーから、右足切断の携帯電話通報により、救急車2台が連携活動した事例を経験したので報告する。
発生状況
12時04分携帯電話通報を留萌消防署で受信、12時05分支署に28歳男性がバイクで転倒、右足切断の模様である旨連絡する。
救急活動
事故現場は、直近消防から30km離れた場所で出動から20分かかって現着。
患者はJCS�ー1、顔面蒼白、顔面と両腕に無数の擦過傷(ヘルメットは脱着済)右下腿部完全離断状態(応急手当済み)確認する。血圧は100/80。
止血帯ベルトに切り替え止血と頸髄保護のためネックロックで固定する。切断肢については、乳酸加リンゲル液で創の異物を流し、滅菌ガーゼで被覆、ナイロン袋に入れ保存した。
搬送中のバイタルは、血圧収縮期120台/拡張期70台、SPO2は酸素マスクで10L投与100%を維持、HR100~110回、モニター観察を継続的に実施、励ましの言葉をかけながら搬送する。
一方、通報を受信した留萌消防署からも、50L用バケツ(水は半分程度)と氷7kgを準備、高規格救急車に積載し出動した。
事故発生から50分後の12時54分ドッキング、患者は高規格車・切断肢は小平救急車に収容搬送開始する。バイタルはJCS�ー2、胸郭変形・皮下出血(-)血圧117/71、SPO2100%(受傷機転記憶なし)12時56分血圧85/64HR104回、ショック体位をとる。(右足の痛みを主訴)通報から69分後の13時13分留萌市立病院に収容する。
救命処置後接合手術のため、防災ヘリ要請16時01分札幌医大付属病院到着する。(接合手術実施されたが、機能回復状態については調査中)
留 萌 消 防 | 小 平 消 防 | 防 災 ヘ リ | |
12時04分 | 119受信 | ||
05分 | 連絡 | ||
08分 | 病院へ連絡 | 救急車出動 | |
28分 | 現着 | ||
30分 | 救急車出動 | ||
40分 | 患者収容 | ||
54分 | ドッキング患者は留萌 | 切断肢は小平 | |
13時13分 | 留萌市立病院に収容 | ||
15時01分 | ヘリ搬送のため出動 | ||
15時20分 | 患者収容 | ||
15時28分 | 患者収容離陸 | ||
16時01分 | 札幌医大到着 | ||
所要時間3時間57分 |
接合手術は時間との競争である。このことから、バイスタンザーの切断通報を信頼し、救急車到着前に収容先病院に連絡、更には病院との協議内容を防災航空に報告、ヘリ要請の可能性を示唆した事が、事故発生から3時間57分で高度救命センターに収容することが出来た。
結語
今後は、更に時間短縮するための病院間と協議することが重要である。
質疑
Q1:現場の状況は
大きなカーブが続く山岳道路。
Q2:傷病者の様子は
意識清明。なくなった足が痛いと訴えていた。
Q3:小平消防から留萌消防へ出動依頼はあったのか。
なかった。下肢切断の無線から留萌の上層部が出動を判断した。氷は途中の氷屋で買っていった。
Q4:下肢を入れる容器はあらかじめ用意してあったのか。
なかった。大きなポリ袋も用意していない。今回は非常用飲料水の容器を積んで出動した。
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