月刊消防2001 5月号「最新救急事情」
HTMLに纏めて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします
目次
月刊消防2001 5月号「最新救急事情」
ガイドライン 2000とバイスタンダー教育
バイスタンダー教育について、ガイドライン2000を読んでみよう。
事例:北海道芦別市
芦別市では平成12年1月〜12月までの1年間に、33例のCPAに対し11例のバイスタンダ−CPRが行われている。
平成11年11月、温泉従業員から「浴室で女性が倒れている。意識の有無は不明。」と救急要請。9分後現着。傷病者は74歳女性で、既に意識は回復していた。発症目撃は
なく、バイスタンダーが発見した時は浴槽内に沈んでおり、1人で浴槽から引き上げすぐにCPRを行ったところ、まもなく嘔吐し、呼吸が回復したということだった。意識レ
ベルはJCS2(R)、脈拍は橈骨動脈で90回/分、呼吸30回/分、SpO2 94%。バイスタンダ−による呼吸・脈拍の確認はなく、CPRをどういう方法で知ったかは不
明。原因は浴槽内での転倒。
平成12年7月、家族(娘)から「風呂に沈んでいる」と通報。3分後現着。傷病者は86歳男性で、風呂場で娘が通信員の口頭指導を受けCPR実施中。傷病者はいつも長風
呂で、この日も2時間あまり入っているため妻が不安に思い見に行ったところ浴槽の中に沈んでいたらしく、すぐに市内に居住する娘に電話をし来てもらったということだっ
た。通報はその後だった。傷病者は搬送先病院で死亡が確認された。
この2つの事例は発見してから蘇生措置をするまでの時間が大きく違っている。事例1は,共同浴場ということで,叫べば誰かがいるという条件にも恵まれ、発見した後の通
報,CPRと大変うまくかみ合い救命できた。しかし、事例2は救命の鎖がかみ合わず救命することができなかった。特に悔やまれるのは、CPRの遅れもさることながら119
番通報の遅れである。
どこの消防署もバイスタンダ−の育成に力を入れているが、講習に行って感じることは、動かさない方がいいという考え方が未だに根強いことである。今の講習内容では理解し
にくい部分が多い。具体的には「気道の確保」「頚動脈の触知」「年齢による手技の違い」などといったことだが、「喉をまっすぐにしましょう」「心臓に耳を当てましょう」
「子供も15:2で行っても構いません」と苦肉の説明をしている。今以上にバイスタンダ−に手を出してもらいやすくするために、一般市民向けに簡潔で理解しやすい指導要
領内容・統一されたやさしい用語の検討をする時期にきているのではないか。
Phone First!
救命講習では脈を触れて口の中をのぞいて顎を挙げると教えている。ところが実際に病院でそんな手順でCPRを行う人は少数だろう。CPAを発見したらまず騒ぐ。先輩には「火
事だ!」と言えと教わった。必ず人が出てくるからである。脈の確認もそこそこにすぐ心臓マッサージを始める。バッグマスクが出てきたら人工呼吸開始となる。異物の確認は
それからだ。
ガイドライン2000成人編では”Phone First”を推薦(should)している。一般市民には脈を取ることも口を覗くことも免除している。また心マ:呼吸=15:2のみとなった。手順
はどんどん簡素化され覚えやすくなっている。
求める人に求められる講習を
ガイドラインでは救命講習は受講者の要求に合わせて柔軟に対処するように求めている。またターゲットを絞って重点的に教えることも求めている。窒息や溺水を起こしやすい
子供のいる家族・心臓病患者を抱える家族では蘇生技術の取得に強い動機を持っており、技術の取得率も高い。
学校での講習も強力に進めるべきである。これが最も手っ取り早くバイスタンダー人口を増やす方法だし、70-80%を占める自宅内CPAに対応する手段でもある。だが学校での
講習の方法は未だ試行錯誤が続いている。効果が明らかになるのはまだ先になるとしている。
3時間は長すぎる
34分間の一人法のビデオで勉強したほうが4時間でじっくり教えられるよりちゃんと覚えているという研究がある。まずビデオを見る。蘇生意識を高めるような内容があり、次
にビデオを見ながら真似てみる。指導者は補助するだけ。ビデオを見終わったら、指導者は核心を短時間で復習させる。さらに1年以内に再講習させることが奨められている。
日本では3時間。そのうち1時間はお話。義務でもなければ出たくない。免状を出すより講習者を増やすことが必要だろう。
結論
1)蘇生法は実態にあった方法に変わってきている
2)講習方法も変わっていく必要がある。
本稿執筆にあたっては 芦別市消防本部 下口一志 救急救命士の協力を得た。
参考文献
Circulaion 2000;102(8s)
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