手技40:点滴の取り方ーラインの用意から固定まで
手技40:点滴の取り方ーラインの用意から固定まで
講師 炭谷貴博(中頓別)
協力 中頓別町国民保険病院 看護師
土屋里美 布広万紀子 八木紹美
目次
はじめに
救急救命士の特定行為の1つ、静脈路確保のコツとポイントを解説する。来年、救急救命士の薬剤投与が認められることもあり、救急現場や救急車内で静脈路確保を実施する機会はこれから増えると思われる。この原稿がスムーズな静脈路確保のお役にたてれば幸いである。
点滴の目的
1.出血性ショック患者に対する、循環血液量の確保
2.病院到着後、薬剤投与の迅速化
3.酸塩基平衡の保持
注意点
うっ血性心不全、肺浮腫、腎不全など、循環体液量が過剰になっている場合、投与量と投与速度に注意する。
点滴ラインの準備
1.輸液バックを確認する。使用期限、薬液の濁り、薬液の漏れがないかを確認する。(写真1)
2.輸液セットを準備する。クレンメ位置を操作しやすい位置に調整し、クレンメを閉じる。(写真2)
3.輸液バックの保護カバーを外す。(写真3)
4.ビン針を刺す。(写真4)必要があれば、エア針を刺す。
5.チャンバーをつぶして(写真5)
チャンバー内に3分の1から2分の1程度薬液を溜める。(写真6)
6.クレンメを操作して、ラインに薬液を流しエアーを抜く。(写真7)タコ管は球部を下にしてエアーを抜く。
7.クレンメを閉じる。(写真8)
穿刺の方法
1.駆血帯を巻く。駆血帯は、片側で蝶結びにし、端末を体幹側にすると操作しやすい。(写真9)
2.穿刺する血管を丹念に探す。血管は、二股に分かれているものが最もよく、その股の間から合流部を狙うと血管が逃げにくい。その他、太くまっすぐな血管を狙う。
3.穿刺部位は、遠位からトライする。失敗したら、その部位から近位を狙う。
4.穿刺する血管を、指の腹で確認し(写真10)、
アルコール綿等で丹念に消毒する。(写真11)
5.片手で皮膚を引っ張り軽くテンションをかけ、狙っている血管が逃げないようにする。
6.穿刺の角度は、30から45度にし、穿刺する際は躊躇せず一気に穿刺する。(写真12)
7.逆血が確認されたら、針を15から30度ねかせ、5ミリメートルぐらいすすめる。(写真13)
8.外筒をすすめ、内筒を抜いていき、外筒を根本まですすめる。(写真14)
9.内筒を抜く直前に、駆血帯を外す。
10.内筒を抜き、準備しておいた点滴のチューブと外筒を抜けないようにしっかり接続する。(写真15)このとき、外筒の接続部の下にアルコール綿を置いておくと、血液が漏れたきの対応がしやすい。
11.クレンメを操作して、薬液が流れるか、漏れはないかを確認する。
12.テープ等で外筒・接続部を固定する。接続部の下からテープを巻きクロスして固定する方法が一般的である。(写真16・17・18)
13.延長チューブは、ループを作成し(写真19)
テープで固定する。(写真20)
14.滴下速度を調節する。
コツとポイント
1.チューブ内に気泡があるときは、チューブを指で弾いたり、ボールペンや指などにチューブを先端側から点滴バック側に巻いて気泡を点滴バック内・チャンバー内に逃がす。(写真21・22)
2.チャンバー内に薬液を入れすぎた場合、クレンメを閉じて点滴バックを逆さまにしチャンバーをつぶすと薬液を抜くことができる。(写真23)
3.駆血帯はむやみに強く巻くのではなく、静脈の流れを止め、動脈の流れを止めない程度の強さに巻くのがポイントになる。
4.駆血帯を巻いても、血管が浮いてこない場合は、穿刺部位をなぜる、心臓より下げる、体幹から遠位に向かって血管をしごく、血管をたたく、駆血帯を巻き直すなどの操作をしてみる。
5.血圧計のマンシェットを駆血帯と使用してもよい。
6.穿刺する場合は、穿刺場所だけを「点」で見るのではなく、針が刺さる点と針が血管に入った先端の点を結んだ「線」をイメージしながら穿刺する。
7.現場で静脈路確保の処置にとらわれすぎて、搬送時間をむやみに延ばさない。
8.病院実習等で、積極的に静脈路確保を実施し経験を積み自信をつける。
講師:南宗谷消防組合中頓別支署 救急救命士 炭谷貴博
写真撮影協力:中頓別町国民保険病院 看護師 土屋里美 布広万紀子 八木紹美
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