小野寺紀幸:『正しい資器材の使い方』リザーバー付きバックマスク

 
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小野寺紀幸、玉川進:『正しい資器材の使い方』リザーバー付きバックマスク。プレホスピタルケア 2001; 14(4-44):77-79


プレホスピタルケア
『正しい資器材の使い方』リザーバー付きバックマスク

小野寺 紀幸★,玉川 進★★

旭川市北消防署★
旭川医科大学第一病理学講座★★

小野寺 紀幸:おのでら のりゆき
旭川市消防本部:救急救命士
078-0000旭川市大町3条5丁目
電話0166-51-8138
fax 0166-51-9835

<はじめに>
病院(手術室)では主にジャクソンリースが使用されているが,われわれ救急隊はコンパクトで持ち運びに便利であり,また自らが膨らむため大量の酸素を供給しなくても人工換気ができ,再呼吸が最小であるなどの利点を有する自動拡張式のバックマスクを使用している。
バックマスクの【正しい資器材の使い方】については,畑中1)が紹介しているため本稿ではバックマスクのリザーバーが必要不可欠であることを研究データー2,3)を基に紹介する。

<研究の概要>

小野寺ら2)と斉藤ら3)が行った研究を紹介する。

始めに小野寺らは病院で汎用されているアンブバッグにリザーバーを取り付けて(図1)人工肺に流れ込む酸素濃度を測定した 1)。その結果、各酸素流量毎に吸入酸素濃度で8〜30%の高値が得られた。また、リザーバーを付けることによってリザーバーなしのほぼ1/2の流量で同一酸素濃度が得られており、経済的にも有利であることが分かった(図2)。
同様に気管挿管されている患者では、リザーバーを付けないアンブではいくら酸素を送り込んでも吸入酸素濃度は20%のまま一定であった(図3)。患者にはリザーバーは必須であることを示した。
専用のリザーバーを有するホープ(図4)では,リザーバーのあり・なしで歴然とした差が出ており,簡易的なリザーバーを取り付けたアンブでも同様のことが言える。

次に、斉藤らは安価なホースをリザーバーに見立て、その性能を検討した。 酸素流量10〜15L/分で,100㎝以上のリザーバーチューブの場合,吸入酸素濃度は90%以上となった(図5)。このことから、リザーバーがない消防署であってもわざわざリザーバーを購入することなく安価なリザーバーチューブをつけるだけで高値な吸入酸素濃度が得られる。

<おわりに>
救急現場でのバックマスク使用はCPA事案が主であるが,その場合,早期に患者を酸素化することが重要である。その手段としてわれわれは,バックマスクにリザーバーバック又はリザーバーチューブを接続するだけで容易に目的を果たすことができる。
このデーターからリザーバーが必要不可欠であることは理解できたと思うが,今後リザーバーを使用しない救急隊がいないように願いたいものである。なお,上記データーの詳細については,文献2,3)を参照してほしい。

<文献>
1) 畑中哲生:手動式人工呼吸器・バックマスク(正しい資機材の使い方).プレホスピタルケア 2001;14(1):44-46
2) 小野寺紀幸,菊地和実,玉川進:バックマスクにおける酸素流量と吸入酸素濃度の関係.プレホスピタルケア 1997;10(4):41−44
3) 斎藤拓哉,川原淳二,桑野正行,他:バックマスクにリザーバーは付いているか.プレホスピタルケア 1999;12(3):45-47


図1
アンブと接続したリザーバー

図2
人工肺での研究。
アンブ(−)に比べアンブ(+)では,各酸素流量毎に吸入酸素濃度で8〜30%の高値が得られている。
ホープ(+)では酸素流量にかかわらず吸入酸素濃度80%である。
リザーバーありのアンブではリザーバーなしのほぼ1/2の流量で同一酸素濃度が得られている。 (以下)

図3
患者での研究
アンブ(−)では吸入酸素濃度は20%で一定である。

図4
専用のリザーバーを有するホープ。

図5
酸素流量10〜15L/分で,100㎝以上のリザーバーチューブの場合,吸入酸素濃度は90%以上となった。


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