ノロウイルス感染症

健康教室 応急処置アップデート 2018/9

第6回

ノロウイルス感染症のポイント

1.外套を持たず、アルコール消毒がやや効きづらいため二度拭きする

2.安価な塩素系漂白剤が第一選択

3.培養不能。そのため研究が遅れている

A ノロウイルスの一般的知識*1

1.ノロウイルスとは

ノロウイルスはノロウイルス族に属するウイルスです。外套(エンベロープ)は持たず、外膜(構造蛋白)の内側に1本鎖RNAを持っています(図1)。ノロウイルス族に含まれるウイルスはいくつかありますが人に感染するタイプのノロウイルスは未だ培養が不可能なため、ウイルスの基本的な性質や治療方法の探索には限界があります。

また旺盛な繁殖力や乾燥に対する抵抗力のため、集団感染が大きな問題として取り上げられています。患者は例年11月から急激に増え始め、1月にピークとなってその後4月になると激減します。

図1

ノロウイルスの構造

2.ノロウイルスの感染経路

ヒトからヒトへ移る経路と、食物や水を介して移る食中毒があります。

(1)ヒトからヒト

・患者の便や嘔吐物からヒトの手を介して

・患者の痰・唾液を吸い込む飛沫感染

(2)食中毒

・患者が触った食品

・二枚貝。生ガキに当たったときの主な原因

・井戸水

3.ノロウイルスによる感染症状

感染から症状発現までの潜伏期間は24-48時間です。主な症状は吐気・嘔吐・下痢・腹痛で発熱は軽度です。1-2日で治癒します。

しかし症状がなくなっても、便からは3-7日間、長い人では1ヶ月間ノロウイルスの排泄が続くので、調理従事者は食品の加工から離れることが望まれます。

4.感染を防ぐために

(1)加熱する

ノロウイルスは85℃90秒で失活します。ノロウイルスによる食中毒を防ぐ最も効果的な方法です。

(2)消毒する(図2)

次亜塩素酸ナトリウム(ハイター・ブリーチ=次亜塩素酸ナトリウム6%溶液)希釈液に汚染箇所を拭きます。

ハイター・ブリーチいずれでも、

・便や嘔吐物が付着した—500mLペットボトルにキャップ2杯のハイターを入れる(0.12%溶液)

・リネンの漬け置きやドアノブなどの消毒—500mLペットボトルにキャップ1/2杯のハイターを入れる(0.024%溶液)

バケツを利用する場合はバケツ半分の水(5L)にハイター・ブリーチのキャップ2杯で0.06%溶液ができます。

(3)処理する

嘔吐物や便を処理する場合には、使い捨てのマスク・ガウン・手袋を装着し、ペーパータオルで静かに拭き取ります。その後0.02~0.1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液で汚染部分を浸すように拭き、さらに水拭きします。拭き取ったペーパータオルはビニール袋に入れ、さらに0.02%次亜塩素酸ナトリウム溶液でペーパータオルを浸漬させて密封します。

図2

ハイター・ブリーチの希釈方法

*1

厚生労働省:ノロウイルスに関するQ & A(最終改訂 平成30年5月31日)

B.知っていて得する知識

1.消毒薬はアルコールより次亜塩素酸ナトリウムが効くわけ(図3)

「ノロウイルスにアルコール消毒は無効」という話がありますがこれは嘘です。

アルコールがよく効くウイルスは外套(エンベロープ)があります。エンベロープは油(脂質)が主材料で、アルコールは油を良く溶かすのでよく効くのです。インフルエンザウイルスは外套を持っているのでアルコールがよく効きます。

ですがアルコールは油を溶かす以外にもタンパク質を変性させるなどウイルスを失活させる作用を持っていますし、汚れを落とすという優れた作用を持っています。患者が触った部分ではアルコールで二度拭きすることが勧められます。

2.感染しているのに検査でノロが出ない(図4)

現在病院ではノロウイルスの簡易的検出法としてノロウイルスの粒子に反応して発色するイムノクロマト法キットを使用しています。インフルエンザの簡易検査や妊娠検査も同じ原理です。この検査方法は簡便ですが、ある程度のウイルス数がないと陽性になりません。ある製品*2では、感度93%*3、特異度89%*4としています。またウイルスにもたくさんの型があり、型が異なると検出できない可能性も国立感染症研究所では指摘しています。

病院で行われる検査で最も敏感なのは遺伝子増幅法で検体1mL当たり100個のウイルスで検出が可能です。しかしイムノクロマト法では1mL当たり100万個のウイルスが必要とされています。このため感染初期では陽性にならない可能性が高くなります。

イギリスでは3種類の検査キットが発売されていて、いずれもいい成績を収めています*5ので、日本でも発売されるようになるでしょう。

*2

ノロウイルス抗原キット「ラピッドテスタ(R) ノロ」

*3

感度:ノロウイルスがある状態の検体において、ノロウイルスが「ある」と判断できた割合。ここでは93%なので、ノロを含む100検体で7検体はノロを検出できなかった。

*4

特異度:この製品の場合は、ノロウイルスを含まない検体でノロウイルスが「ない」とした割合。ここでは89%なので、ノロを含まない100検体中11検体では「ノロを含む」と判定された。

*5

J Clin Virol 2018;105:72-6

3.ノロウイルスのワクチンはないの

ノロウイルスは培養ができませんから、ポリオワクチンのような弱毒菌を用いる方法は不可能です。現在はノロウイルスの体の一部を複製しそれを抗原とするワクチンの開発が行われています。論文を読むとまだPhase II (特定の人を相手に投与する段階)なので、市販までにはまだまだ時間がかかりそうです。

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