191125今さら聞けない資機材の使い方(78) 消防用ホースとTS巻き ( 十日町地域広域事務組合十日町地域消防署南分署 俵山舜平 )

 
  • 7072読まれた回数:
基本手技

目次

1 はじめに

今回「今さら聞けない資機材の使い方」を執筆させていただくこととなりました、新潟県の十日町地域消防本部十日町地域消防署南分署の俵山舜平です。この度、このような貴重な機会を与えてくださった関係者の皆様に感謝申し上げます。

私の所属する十日町地域消防は、新潟県の南西部に位置する十日町市と津南町を管轄し、人口約6万3千人の「生命・身体・財産」を守っています。

この地域は、清津峡をはじめとして上信越高原国立公園に指定され、日本一長い信濃川によってもたらされた雄大な河岸段丘は、変化に富んだ美しい自然環境をなしており、日本有数の豪雪地帯でもあるこの地域では、時として冬は3mを超える豪雪になることから、その清らかな雪どけ水と豊かな大地がもたらす「魚沼産コシヒカリ」や「へぎそば」、「妻有ポーク・つなんポーク」、「日本酒」など、日本や世界に誇れる食や文化が数多く存在しています。

また、国宝である縄文時代の火焔型土器や当地域で開催される世界最大級の「大地の芸術祭」は、越後妻有地域の約762平方キロメートルの広大な土地を美術館に見立て、アーティストと地域住民が協働し地域に根ざした作品を制作しており(図1)、海外からも多くの方々が来訪しています。皆様からも是非お越しただき、おいしいお米とお酒などを楽しんでいただければ幸いです。

今回紹介する内容は、「消防用ホース」についてです。

2 消防用ホースとは

「消防用ホース」とは、消火活動をする際になくてはならない資機材の一つです。

簡単に説明をすると、水のある場所から火災等の災害が発生している場所へ水を送るための資機材です。

ホースは、ホースジャケットと呼ばれる構造でできています。ホースジャケットは、内側からライニングと呼ばれる樹脂でできている素材があり、ポリエステル製の縦糸、横糸、縦糸とあり、一番外側にコーティングがしてあります(図1、写真2)。

図1

ホース構成図

写真2

ホース構成写真

一般的に、ホースの長さは10m、15m、20m、30mがあり、ホースの直径は20㎜、25㎜、30㎜、40㎜、50㎜、65㎜、75㎜、90㎜、100㎜、125㎜、150㎜があります。また、ホースの結合部は、差込式(町野式)、ねじ式、ツイスト式があります。

表1 ホースを充水した時の重さ

表2 充水したホースの曲がりの限界

※注意事項

•ホースは、充水するとかなりの重さになり、一人で移動するには厳しい重さとなってしまいます。(表1)

•ホースに屈曲があると、数十㎝引きずっただけでホースに穴が開いてしまいます。ホースに穴が開いてしまうと、筒先で有効な流量を出すことができません。(表2)

•町野式ホースは簡単に接続することができるが、その分簡単に外れてしまうため注意が必要です。

•ホースを車などで踏みつけてしまうと穴が開いてしまうため、ホースブリッヂの活用やホース延長時にできるだけ道の端に寄せるなどの工夫が必要です。

3 当消防署の仕様

当消防署は、本署と南分署、しぶみ分署の1署2分署体制となっており、各署と消防団のホースを区別するためにホースの袴部分の色分けと名入れを行っています(写真3-6)。また、20mホースを主に使用しており、直径は40㎜、50㎜、65㎜の3種類を使用しています。

写真3

本署。赤

写真4

南分署。黄色

写真5

しぶみ分署。青

写真6

消防団。緑

4 TS巻き

当消防署では、「TS巻き」(TSは、十日町消防を表す)と呼ばれるホースの巻き方を使用しています。これは、平成28年度に開かれた全国消防技術者会議で神戸市消防局さんが紹介をしていた「KS巻き」を十日町消防仕様に改良した巻き方です。

 

(A)TS巻き作成要領

(1) 折り返し部から230cmのところにオス金具を置く。(写真7)

(2) ホースを基準0cmの折り返し部まで伸ばし、左ねじり方向に90度2回折る。(写真8)

(3) 折り返し部から右へ戻し、180cmのところで山折りにする。(写真9)

(4) (2)と(3)の工程をホース2本分繰り返す(ホース結合部が中央部、折り返し部、山折り部にならないように調整する)。(写真10)

(5) オス金具を残して中央部から折り返し部側に半分折る(輪が少し長くなるように折る)。(写真11)

(6) TS巻きの完成。(写真12)

 

この巻き方のメリットは、ホースが乱雑にならずコンパクトなホースラインを作ることができることと、広いところや狭いところでのホース展開が容易にできるところです。

(B)ホース展開

ホースバック内の輪の先端部分(写真13、14)を引き出します。

そして、出てきたホース(写真15)の輪の中に直接人が入り、ある程度の大きさの輪を作ります(写真16)。

通水をし、足で折れ曲がりをなくしながら充水していきます(写真17,18)。

充水後に容易にホース展開が可能です(写真19)。

写真13

TS巻き。ホースバッグに入っているところ

写真14

TS巻き。ホースバックから取り出したところ

 

写真15

ホースを展開している。

写真16

通水前展開。人が輪の中に入る

写真17

充水中。足で折れ曲がりを解除している

写真18

充水完了

写真19

充水後に容易にホース展開が可能

(C)雪上でのホース展開

十日町市、津南町は、冬になると積雪が3m以上となる全国でも有数の豪雪地帯です。この地域の雪は、気温が雪国にしては高いために水を多く含んでおり、足元やホースなどが埋まりやすい雪質となっています。雪が積もったところでは、ホースは雪の中に埋まってしまい、さらに自分自身の足も埋まってしまうため、雪のないところとは比較にならないほど、ホースを伸ばすことが難しくなります。このように、ホースが雪の中に埋まってしまうと動かすことも難しくなる(ホースが曲がったまま動かなくなってしまう)ので、ホースの屈曲にも気を付けなくてはなりません。

しかし、TS巻きにすることで、ホースをホースバックから取り出し(写真20)、輪の部分を肩にかけ(写真21)、充水をしてから積雪上に置くと(写真22,23)、上記の問題は解決できます。

TS巻きは、雪の上でも非常に簡単にホースを扱うことができる、豪雪地帯である十日町消防に合った巻き方となっています。

写真20

TS巻きによる雪上でのホース展開。輪の先端部分を引く

写真21

肩にかけ展開する

写真22

充水中

写真23

放水

5 まとめ

ホースは、消防活動になくてはならない資機材です。しかし、使い方を間違ってしまうと、自分自身がケガをしたり、仲間や地域住民の方にケガをさせてしまったりする可能性がある資機材でもあります。

そういった事故を起こさないためにも、日々の訓練に励み、「消防のプロ」として活動できるよう精進していきたいと思います。

今回紹介させていただきました内容が、少しでも皆様の現場活動や訓練の参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

著者

名 前:俵山 舜平(たわらやま しゅんぺい)

所 属:十日町地域広域事務組合  日町地域消防署南分署

出 身:新潟県十日町市

消防士拝命:平成29年4月

趣 味:アルペンスキー、旅行

コメント

タイトルとURLをコピーしました