200410応急処置アップデート(22)アナフィラキシー

 
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基本手技

健康教室2020年1月号

応急処置アップデート

22

アナフィラキシー

 

目次

ポイント

1.死ぬのはごく僅か。落ち着け

2.疑ったらエピペンを注射

3.エピペンが効くのは15分間だけ

 

アナフィラキシーとは、原因物質(アレルゲン)に曝露後アレルギー症状が急速に全身に現れるものです。症状が重篤化しショック症状を呈したものをアナフィラキシーショックと言います。死亡例では、一番の原因が薬物、次に鉢、食物の順となっています1)。

新聞で大きく報道される割には死亡患者数はごく僅かです。落ち着いて対処しましょう。

1.多彩な症状

 

基本は皮膚もしくは粘膜の症状(図1)+他の臓器の症状(図2)です。皮膚症状の出ない人もいるようですが私は見たことはありません。

アレルゲンとの接触が明らかな場合は判断は容易ですが、明らかでない場合は判断に苦慮し症状を悪化させる可能性があります。過去にアナフィラキシーを起こした児童生徒で下記の症状が出た場合はアナフィラキシーと判断し対処しましょう。

 

(1)初発症状 2)

 

せき、もしくは嘔吐

 

(2)皮膚・粘膜の症状

 

皮膚と粘膜の症状は単独あるいは一緒に出ます。

全身の皮膚:じんましん、発赤、かゆみ

粘膜の症状:口の中、唇、舌、まぶたが赤く腫れ上がる

 

(3)他の臓器の症状

 

これらは基本の症状と一緒にでます。呼吸器症状が最多です。

呼吸器:息切れ、喘鳴、呼吸困難、咳

消化器:強い腹痛、下痢、嘔吐

循環器:血圧低下

中枢神経系:意識レベルの低下、失神、失禁

 

2.心停止は30分以内

アレルゲン接触から症状が発現するまでの時間が速いほど重症です蜂に刺されてすぐ倒れる人としばらくして具合が悪くなった人を考えれば理解できるでしょう。イギリスの死亡例124の解析3)では、アレルゲン接触から心停止までの時間は食物アレルギーで30分、蜂で15分、薬物で5分です(図3)。死因は食物アレルギーが呼吸困難(窒息)なのに対して蜂と薬物は血圧低下です。また死亡患者の24%は一度心臓が動いたのちに3時間後から30日後に再び心停止となり死亡しています。

3.エピペンを使う

アナフィラキシー を疑ったらエピペンを使います。エピペンを使う目安表が厚生労働省から出ています4)が表を見ている暇はありません。また厚生労働省の表ではエピペンは重症だけに使うような書き方をしていますが、現場で重症になるまで待つなんて恐ろしくてできません。

低学年の児童ではエピペンを見せると泣き叫ぶかもしれませんが、泣き叫ぶ元気があるのならまだ時間的な余裕はありますので落ち着いて注射します。暴れるようなら数人で押さえつけます(図4)。

エピペンは正しく使えば危険性はありません。打つ場所(太ももの外側)だけ気をつけましょう(図5)。

エピペンは15分しか効きません。エピペンを打つと決めたら必ず救急車を呼びます。エピペンを打っても症状が改善しない場合、もう1本持っているのでしたらその1本を打ちます。症状が改善したとしても15分後にまた症状がぶり返してきますので手元に用意しておきます。症状が悪化する前に救急隊が到着したら自分で持参するか、救急隊員に渡します。救急隊員(救急救命士)もエピペンを打つことができます。

4.救急隊を待つ

救急隊を待つ間、患児には楽な体位を取らせます。呼吸困難があれば座って腹に毛布を持たせて前かがみになると呼吸しやすくなります。ショック状態で血圧が低下している場合は仰向けにして寝かせます。仰向けで足を上げると7分間程度は血圧は上がる5)ことがわかっていますので行なってもいいでしょう(図6)。

文献

1)厚生労働省:人口動態統計2017年

2)J Allergy Clin Immunol 2016;137:1128-37

3)Clin Exp Allergy. 2000 Aug;30(8):1144-50.

4)厚生労働省:食物アレルギーの診療の手引き2014, p18

5)JRC蘇生ガイドライン2015 第7章ファーストエイド, p12

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