220806 今さら聞けない資機材の使い方 (105)デラックスサバイバースリング 男鹿地区消防一部事務組合消防本部 安田幸平

 
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基本手技

 近代消防2022/01/10  2022年2月号 p76-79

●今さら聞けない資機材の使い方 105

デラックスサバイバースリング 

男鹿地区消防一部事務組合消防本部

安田幸平

目次

著者

名前:安田 幸平(やすだ こうへい)

所属:男鹿地区消防一部事務組合消防本部 予防課主任

出身地秋田県男鹿市

消防士拝命:平成24年4月1日

趣味:釣り

 

 

 

1.はじめに

はじめまして、今回「今さら聞けない資機材の使い方」を担当させていただきます、秋田県男鹿地区消防一部事務組合消防本部の安田幸平と申します。

私が勤務する男鹿地区消防一部事務組合消防本部は、秋田県の西側に位置し、男鹿市、潟上市(旧天王町)、大潟村の2市1村で構成され、管内人口は約5万人、総面積452.16k㎡、職員数は149名、1本部、1署、6分署で組織されています。(写真1)救助隊は16名で編成され、日々活動しております。(写真2)当消防本部管内の特徴として、男鹿半島の西海岸と後背の山地、寒風山、北部の砂浜海岸が国定公園として定められ、一年を通して多数の観光客や釣り人が訪れます。岸壁からの落下や滑落事故もたびたび発生しており、低所からの救助事案も少なくありません。(写真3、4)要救助者を低所から救出する際に使用する救助器具は、要救助者の状態や体型、活動環境に応じて最も安全で確実、迅速に救出できる器具を選定します。

そこで、今回はその中でも要救助者の意識があり、早期の救出が必要な場面で使用されるデラックスサバイバースリングについて紹介させていただきます。

001

男鹿地区消防一部事務組合消防本部の構成

            

002

救助隊救助隊は16名で編成されている

003

滑落による救助活動

004

転落による救助活動

2.デラックスサバイバースリングについて

 

1.概要

   先ほど述べた通りデラックスサバイバースリングは主に意識があり、早期に救助が必要な救助現場での使用に適しています。要救助者の脇の下にサバイバースリング本体を装着し、吊り上げて救助します。水陸共に使用が可能です。(写真5、6、7)

005

デラックスサバイバースリング。正面

006

斜め上から

007

閉じたところ

 

2.諸元

   スリング全長   200㎝

   重量       1.6㎏

   運用荷重(最大) 205㎏

   Dリング強度   2,900㎏以上

3. 特徴

  1.スリング本体の素材はラバーで作られており、体型に沿って要救助者を保持します。

  2.要救助者の落下防止のため、補助的に股下シートがついています。必要に応じて股下シートを使用することで、体力のない人や子供を確実に保持し、落下の危険性を排除できます。

  3.両側面及び中央後部に大型の取っ手がついており、スリングをつかみ易くなっています。

  4.胸縛帯の着脱はワンタッチになっており、要救助者を素早く固定できます。また、長さ調節も容易に行うことができます。

   5.救助者1人でも要救助者へ着装することができ、作業スペースが狭い環境でも使用することができます。

     (イヨンインターナショナル株式会社パンフレット一部引用)

4.デラックスサバイバースリングの取り扱い

  要救助者の体にスリングを通し、しっかり密着させます。背中と脇の下にかかっていることを確認してください。胸縛帯を着装し要救助者の体型に合わせ長さを調節します。(写真8、9、10)

 カラビナ、安全環が閉まっていることを確認し、体が上へ向く程度に救出ロープを引き揚げ最終点検を行ってください。この時、両腕をスリングの前でしっかり組んでいるまたは、取っ手を保持していることを確認し、カラビナの近くに要救助者の指や顔が近づいていないことを確認してください。救出が開始されると要救助者の体重は背中にかかります。(写真11、12)

  要救助者を保持する隊員は要救助者の正面に位置し、要救助者を上腕の上から保持してスリングの位置がずれないようにしてください。(写真13)

008

要救助者の体にスリングを通す

009

背中と脇の下にかかっていることを確認する

010

胸縛帯を着装し要救助者の体型に合わせ長さを調節する

011

救出ロープを引き揚げ最終点検を行う

012

要救助者は前で腕を組むか取っ手を持つ

013

隊員は要救助者の正面に位置し要救助者を上腕の上から保持する

 

5.注意点

  救出中、脇に体重がかかり腕が組めない状況や要救助者がスリングから抜け落ちそうになった場合または、要救助者が痛みや違和感を訴えた場合はすぐに引き揚げを中止し、要救助者を降ろして再度装着し直してください。

  要救助者の意識が無いまたは、非常に衰弱している場合は、要救助者がスリングをしっかりと抱えることができないため、股下シートをしている場合でも抜け落ちる危険性があります。救助者がしっかり保持しながら救出してください。(写真14)

デラックスサバイバースリングは要救助者への負担が大きいため男鹿地区消防救助隊では意識があり、尚且つ早期の救出が必要な場合にのみ使用します。

014

意識が無いまたは、非常に衰弱している場合は抜け落ちる危険がある

6.おわりに

 デラックスサバイバースリングは早期救出に有効な反面、取扱いを誤ると重大な事故を引き起こす危険性のある資器材です。訓練を重ね、しっかり習熟したうえで取扱いましょう。今回紹介させていただきました内容が少しでも皆様の現場活動や訓練の参考になれば幸いです。

 

 

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