241129応急処置アップデート Q and A 25 低血糖治療薬 バクスミー

 
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雑誌 健康教室 応急処置アップデートQ and A

2024年04月号(2024/03/10発行号)p6203

目次

Q

2024年1月25日付けで、教職員がバクスミーを使えるようになりました。この薬について教えてください。

A

糖尿病患者が低血糖発作を起こした時に点鼻する薬です。

解説

バクスミーの中身はグルカゴンです。インスリンに拮抗し血糖値を上げる作用があります。グルカゴンは注射薬として以前から使われていましたが、点鼻薬としては2020年10月に発売され、今年になって教職員の資料が認められたものです。

1.グルカゴンと血糖値の調整(001)

主に膵臓ランゲルハンス島で作ら出れるホルモンです。同じ場所でで作られるインスリンとともに、血糖値の調整を行います。

脳はエネルギーのほとんどをブドウ糖に頼っています。血中のブドウ糖濃度が低下すると、脳の機能が低下し命が危険にさらされることになります。そのため、血糖値を下げるホルモンはインスリンただ一つだけなのに対して、血糖値を上げるホルモンはグルカゴン、アドレナリン、成長ホルモンなど多数あります。

2.低血糖発作の誘因と症状

糖尿病で治療を受けている患者で以下のいずれかの原因で低血糖を起こします(002)。

(1)薬の過量

薬を飲んだことを忘れて2回分飲んでしまう、インスリンの注射器に付いている投与量のダイヤルを回し過ぎてしまうなど。

(2)食事量の減少・空腹の持続

インスリンの注射をした後に来客や電話などで食事までの時間が空いてしまう、ダイエット目的などで定められたカロリーを摂取しない、など

(3)カロリー消費量の増加

多いのは熱発です。また普段より多く運動することも低血糖を招きます。

低血糖の症状は、皆さんがお腹を空かした時のことを考えればわかりやすいでしょう。元気がなくなりイライラしてきます。また交感神経が緊張するので冷や汗をかいたり震えがきたりします。さらに下がると脱力、めまい、集中力の低下、強い疲労感が起き、そのまま放置すると意識が朦朧となり昏睡に陥ります。その際に痙攣を起こすことがあります。大まかに血糖値が45mg/dLを切ると強い脱力感、30mg/dLを切ると昏睡になりますが、どれだけの低血糖に耐えられるかは個人差があるため、症状を疑った場合には血糖値を測定するように心がけます(003)。

3.バスクミーの使い方

バスクミーは低血糖で意識がなくなった場合や自分でブドウ糖飴などを摂取できない場合に使います。24時間血糖値測定装置が付いていれば、投与前に血糖値を確認すると良いでしょう(004)。

バクスミーは容器に赤い封入フィルミが付いているのでそれを剥がし、容器から出します。ノズルを患者の鼻の奥まで入れ、底のボタンを押して薬を噴霧します。底のボタンは2段階になっています。1回押すとボタンの半分が隠れます。もう1回、緑の線が見えなくなるまで押すとパチンと引き金が外れたような音がして薬が噴霧されます(005)。

バクスミーは患者がどちらを向いていてもちゃんと効きます。座っていても、寝ていても、横を向いていても大丈夫ですので、患者を無理に起き上がらせる必要はありません。また鼻が詰まっていたり鼻汁が垂れていてもちゃんと効くとされています。

4.投与後には(006)

回復体位を取らせ、主治医に連絡して指示を受けます。投与10分以内に意識が回復してきます。意識が回復したらすぐ口からブドウ糖などを飲ませます。その後は必ず医療機関を受診させます。

患者に聞くと、バクスミーの副作用として最も気になるのは頭痛だそうです。結構な痛みが長時間続くとのこと。この場合には頭痛薬の投与も必要になりますので、患児が頭痛薬を携帯するのも方法と思います。

こんなことがありました

今年度(令和5年度)1型糖尿病の医療ケア児が入学し、低血糖時に使用する緊急時薬バクスミー(点鼻薬)を携帯しています。こちらは家族か看護師が使用となっており、養護教諭や教諭はまだ使えないようです(註;この投稿はバクスミーが使える前にいただいたものです)。今は補助員として看護師がついているので安心ですが、これらのように(今回のブコラムやエピペンもかつてそうでしたが)、医療行為が障壁となり学校で対応しづらい現状があります。命に関わる事態になりかねないのでどうしたら良いものか困っています。

ノーマライゼーションの理念が進み、インクルーシブ教育ということでさまざまな障害や疾病を持った子どもたちが入学する時代になってきた今、これらの緊急時薬について学校での取り扱いは現状位に合わせ変わっていくのでしょうか?医療現場から国に要望など挙げていくことはあるのでしょうか?先生は、どのようにお考えですか?

玉川より:有効かつ使い勝手の良い薬はどんどん使われるようになると思います。今学校で使える緊急薬では、エピペンが最も使いづらい薬剤です(針で刺す、心臓へ直接作用する、など。ブコラムはエピペンより安全(気になるのは呼吸抑制と傾眠)ですし、バクスミーは血糖値を上げるという生理作用をもたらすことからブコラムより安全です。エピペンより侵襲の少ない薬ならどんどん使われるようになってくるでしょう。

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