151227今さら聞けない資器材の使い方(23)可動式ウインチ(チルホール)

 
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基本手技
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151227今さら聞けない資器材の使い方(23)可動式ウインチ(チルホール)

可搬式ウインチ 【チルホール(TU−16)】

小久保貴幸
所属:埼玉西部消防組合飯能日高消防署
出身地:埼玉県
拝命:平成11年4月
趣味:登山

埼玉西部消防組合飯能日高消防署消防第1課消防担当、小久保貴幸と申します。

当消防組合の概要につきましては、本誌平成26年11月号に掲載されておりますので割愛させていただきます。

今回掲載するにあたり、どんな資機材を選べば良いか考えていたところ、あれもこれもといくつもの資機材が出てきてしまいました。そこで、選ぶにあたり次の3点にポイントを絞ってみました。

a.どこの消防署にもある物・・・広く全国の消防職員が共有できる内容とするため
b.頻繁には使用しないもの・・・頻繁に使用しないので、忘れてしまう
c.使用方法を間違えると重大な事故が起こるもの
以上のことをポイントとし選んだ結果、可搬式ウインチになりました。

目次

1 概要


可搬式ウインチは、動力(エンジン)を使用せずに、人力操作のみによってけん引作業を行う救助器具です。
主に交通事故現場で、要救助者が車両に挟まれている場合の救助時に活用される例が多く、一般的な障害物(重量物)の除去、資機材の移動その他ロープブリッジ設定時等にも使用される資機材です。

2 諸元

 

*1 最大能力とは、ワイヤーロープにかかる張力の意味
*2 テコ比とは、パイプハンドル取手部の操作力が、張力の1/40で操作ができることの意味

3 各部名称

(写真1)

・ 最大能力の2倍以上の張力がチルホール本体に作用した場合には、安全ピンの耐力を上回り安全ピンが切断するため、本機の安全装置が働きます。これにより、けん引操作が不能になるとともに作業が危険であると警告します。
・ ワイヤーロープに94.1KN以上の荷重がかかると、破断強度を超える力となり、ワイヤーロープが破断することがあります。

4 操作手順

1) アンカーフックのセーフティーキャッチ内側を外側に向かって押すとセーフティーキャッチが簡単に開放され台付けできるようになります。(写真2)

 

2) ワイヤーロープを本体内に通すには、開放レバーセーフティーロックを押し込みなら開放レバーを軽く引き上げ、開放レバーセーフティーロックから手を放します。その状態のままで、開放レバーをカチッと音がするまで引き上げます。開放レバーが直立状態で止まるとワイヤーが挿入できます。(写真3)

また、開放レバーを開放したままでの操作、中断、保管は禁止です。開放レバーのスプリングが弱くなり、故障の原因になるためです。

3) チルホール専用のワイヤーロープ先端をロープガイド側より入れます。必ず、ワイヤーロープ挿入前にキンク、素線切れなどがないか確認します。キンクや祖先切れを放置したまま使用すると危険である上にチルホールの故障の原因となります。
ロープガイドよりワイヤーロープを真っ直ぐに挿入します。(写真4)

ワイヤーロープが先端に当たって挿入できなかったり、挿入が重い(強く押し込まないと入らない状態)場合は絶対に無理やり挿入せず、ワイヤーロープの先端を上下・左右に少し移動させ、何度か差し戻しながら軽く入れられるところを捜します。

4) ワイヤーロープのたるみがなくなるまで、アンカーフック側に引っ張り出します。
(写真5)

5) ゆっくりと開放レバーを矢印①の方向に引き上げ、開放レバーセーフティーロックを矢印①方向に押しながら、開放レバーを矢印②の方向に戻します。(写真6)

6) 操作1〜操作5までの操作で、けん引準備ができましたので、パイプハンドルを前進またはバックレバーに差し込みます。

パイプハンドルを前進レバーに差し込む際には、根元の抜け止めにパイプハンドルの切り欠きと切り欠きを合わせて差し込み、180度廻して前進レバーからパイプハンドルが外れないようにセットします。けん引時、パイプハンドルが回転し外れる場合があるので注意しましょう。(写真7)

7) けん引時には、全体の安全員、けん引物監視員を必ず置くこと。(写真8)

8) 固定物として車両を使用する場合には、車輪止めは前輪だけではハンドルが左右に切れてしまう(動いてしまう)ため、後輪にも掛けておきます。(写真9)

 

5 取り扱い上の注意事項

 

a  作業過重に耐えられる本体支持物を選定し、本体を確実に固定します。
b  前進レバーと後退レバーの同時操作は避けること。
c  パイプハンドルは、微動操作以外は大きく動かします。
d  小さな動作を繰り返すことは、つかみ装置が磨耗する⇒磨耗してくるとワイヤーが滑り出すため避けます。
e  開放レバーは、使用しないときはロック状態にしておきます。
f  本体内部に土砂や水が入らないようにします。
g  前進レバーを操作するとき、パイプハンドルは差し込んでから180度回転させ、確実にロックします。
i けん引時は、けん引線上には操作員以外の者を接近させないこと。
j 必ず、ワイヤーロープ挿入前にキンク、素線切れなどがないかを確認してから使用します。
k  ワイヤーロープを鋭利な角部に当てて作業すると、大きな強度低下になってしまうため禁止です。

6 まとめ

以上でチルホールについての説明を終わりにします。いざというときに最大の効果が得られるよう正しく使用するとともに、事故を起こさないよう十分注意して使いましょう。

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