3Jレスキュー2018年7月号 p54
特集 救急のスゴ技(9)
ポイント 1.一瞬で開く 2.4Lの容量がありこぼれない 3.材料費800円
目次
開発の経緯
私は救急隊として現場活動をする上で、傷病者が嘔吐する場面によく出会う。嘔吐や喀血は前兆なく突発的に起こることがある。嘔吐等に適切に対応できなかった場合には隊員への感染危険は高まり、汚染された車内および資器材の清掃、それに伴う救急車の運行停止など、救急業務に多大な影響を及ぼすことになる。
嘔吐等に対応しているのう盆やポリ袋には大きな欠点がある(表1)。
この欠点を克服するのがこの瞬間開口式嘔吐処理袋である。
機能
図1
瞬間開口式嘔吐処理袋
瞬間開口式嘔吐処理袋(図1)の構造は、テントや雨合羽で使用される薄手で丈夫な防水ナイロン生地の袋の口に輪上のワイヤーと固定具を取り付け、中程にゴム紐とコードストッパーで絞りを設けたものに、ポリ袋を2枚重ね入れただけの簡単な構造である。材料費は800円ほどである(図2)。
図2
用いる材料。ボンドはワイヤーが通るまちを作るために用いる
携帯時は口のワイヤー部分を8の字にひねりふたつの円を重ねる(図3)。
図3
口のワイヤー部分を8の字にひねりふたつの円を重ねる
袋の部分を折りたたみポケットに収納する(図4)。
図4
袋の部分を折りたたみポケットに収納する
使用時にはポケットから取り出すだけで、一瞬で袋の口が開くように設計されている(図5)。
図5-1,2,3
ポケットから取り出すと一瞬で開口する
袋の開口部は直径26㎝と大きく確実に吐物を収容でき収納時には直径半分の13cmまでコンパクトになるため、感染防止衣のポケットなどに容易に収めることができる(図6)。
図6
感染防止衣のポケットに入る
こだわりはここ
しぼりを締めた状態で4リットルもの液体が入り(図7)、この状態で床に置いておくことも可能なため繰り返し発生する嘔吐等にも迅速に対応できる。
図7
4L入る
開口部のスチールワイヤーの形状を傷病者の顔に沿わせることで、様々な体位の嘔吐にも確実に対応することが出来る(図8)。
図8
スチールワイヤーを傷病者の顔に沿わせれば様々な体位の嘔吐にも対応可能
ナイロン生地は丈夫で防水のため、ポリ袋が破れていても吐物が流出しない。使用後は吐物の入ったポリ袋のみを廃棄することで、次の出動にも使える。
揺れに強く、3Lの水を入れた状態でも中身が漏れ出てくることはない(図9)。
ナイロン生地は薄く遮光性が少ないため、正確に吐物の正常、色を確認することが出来る。
図9
揺れに強い
運用実績
現場で非常に役立っています。
終わりに
瞬間開口式嘔吐処理袋は、救急現場での感染防止と救急業務の推進に貢献できるものである。
筆者紹介
田中 岳大(たなかたけひろ)
金沢市中央消防署味噌蔵出張所消防士長
〒921-8042
石川県金沢市泉本町7丁目9番地2
TEL 076-280-5016(内線2022)
FAX 076-280-5043
出身地: 福井県
消防士拝命年 平成24年
救命士合格年 平成24年
趣味 音楽鑑賞
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