健康教室2019年3月号
応急処置アップデート
尿蛋白
ポイント
1.学童は蛋白尿が出やすいが一時的
2.何度検査しても出るときは腎臓の病気
3.重大な疾患が隠れている場合あり
学校検尿シリーズの2回目は尿蛋白を解説します。
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1.正常では蛋白質は微量しか混じらない(図1)
血液が腎臓で漉されたものが尿です。腎臓の糸球体はふるいの役割を果たしていて、分子量が大きいものは通さず、分子量の小さいものを漉しています。蛋白のほとんどは分子量が大きいので糸球体の網目をくぐることはできません。蛋白質の中でも分子量の小さいものは網目をくぐって尿として流れて出すのですが、流れている途中で尿細管から再吸収が行われて、結局尿として体外に出て来るのは一日70mg程度です。
2.蛋白質が尿に混じる原因
蛋白質がたまに出るのか、常に出るのかで原因は異なります。
たまに出るのは学童に多く、「生理的蛋白尿」と言われます(図2)。激しい運動をした、ずっと立っていた、熱が出たなど、一時的に蛋白が混じる状態です。この場合、蛋白質の出る量は少ないので、検査結果は(±)(擬陽性)から(1+)(陽性)になります。また再検査で(-)(陰性)となることがほとんどです。
蛋白質が常に混じる場合、学童では糸球体の病気が考えられます。ふるいが壊れているので、ほとんどは尿潜血も陽性となります(図3)。壊れ具合によって出て来る蛋白の量が異なります。ネフローゼ症候群の場合では一日20g以上の蛋白が尿に出て来ることもあります。
その他の原因として、白血病や泌尿器科の癌、膀胱炎・腎炎などの炎症によっても蛋白質は混じりますし、薬剤で尿細管の再吸収が阻害されても蛋白質は混じります。白血病は専門医の元で治療を行います。膀胱炎・腎炎などは発熱や頻尿・残尿感などの症状を伴いますので容易に診断が付きます。泌尿器科の癌は高齢者の病気で、学童に発症することはまずありません。
3.蛋白が出たらどうするか
まず早朝一番尿を学校に持って来てもらい再検査をします。ほとんどはここで蛋白質は検出されずに検査終了となります(図4)。
再検査でも蛋白質が検出された場合は病院へ行って検査をします。前回の「血尿」で解説したとおり、尿を顕微鏡で見て蛋白尿以外の病気が隠れていないか探します。この時点で蛋白尿以外に症状はなく、出ている蛋白質の量も少なくて他に異常も診られないのならば経過観察とされ、半年後や1年後に再検査を行います。
尿に出ている蛋白質が大量の場合は入院の上検査を行います。出て来る尿を全て貯めていったいどれだけの量の蛋白が出ているか調べることや、腫瘍や奇形を探す画像診断が行われます。また病気の確定には背中に針を刺して腎臓の組織を採って顕微鏡で調べることが行われます(図5)。
4.スクリーニングとして貴重
腎臓の病気は自覚症状がほとんどなく、症状が出たときには腎不全手前・人工透析予定、ということがあります。学童の場合はこれから長い人生が待っていますので、尿蛋白の検査はスクリーニングとして貴重です。
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