雑誌 健康教室 2020年11月号p48-49
目次
痙攣
今回は痙攣です。痙攣を起こしたからといってすぐに命を落とすことはありません。冷静に対処しましょう。今回も旭川近郊のH先生にアドバイスをいただいています。
002
初めての痙攣の場合は救急車の対象です。
003
痙攣自体でケガをすることはありませんが、周りの物にぶつかってケガをする可能性はあります。安全な場所に移動させましょう。
004
痙攣中は静かに観察します。痙攣の様子、痙攣が始まった時間と終わった時間を記録し、保護者や医師に伝えます。痙攣を繰り返す人は同じパターンの痙攣を繰り返します。もし違ったパターンの痙攣を起こすようなら速やかに医師の診察を受けます。
005
全身の痙攣を起こした後は、痙攣が治っても意識は戻らずぼうっとした状態が続きます。回復体位を取り安静にします。
熱性痙攣のアップデート1)
小児の痙攣は大きく熱性痙攣とてんかんとに分かれます。今回は紙面の関係で、熱性痙攣のアップデートをします。てんかんのアップデートは機会があったら書きます。読みたい方は「健康教室」編集室にご連絡を。
1.熱性痙攣の定義
アメリカ小児科学会の定義では「生後6ヶ月から満5歳までの小児に送る中枢神経感染によらない発熱に伴う発作」です。日本で信頼できるデータでは5歳までの有病率が3.4%と、それほど高いものではありません。名称が熱性「痙攣」で、必ず痙攣が起こるように思われますが、痙攣としても半身であったり、動作停止で痙攣を伴わないものもあります。
2.アップデート
読者の皆さんが気にするのは、うちの子が熱性痙攣を起こすか、一度起こした子が再び起こすか、てんかんに移行するか、の3項目でしょう。
(1)うちの子が熱性痙攣を起こすか(001)
どういう子が熱性痙攣を起こすかは明確な論文は見つかりませんでした。熱性痙攣は遺伝因子が強く、兄弟や両親に既往があればその子も起こす可能性が高いことはわかっています。
001
うちの子が熱性痙攣を起こす因子
(2)再び起こすか(002)
これははっきりわかっています。
1)両親いずれかが熱性痙攣を起こしている
2)1歳未満の発症
3)発熱しだして痙攣を起こすまでの時間が1時間以内
4)痙攣時の体温が39℃以下
002
再発因子
(3)てんかんに移行するか(003)
熱性痙攣の既往がある小児がてんかんに移行する割合は2.0-7.5%で、全人口に対するてんかん発症率(0.5-1%)の最大15倍の発症率です。ですが逆にてんかんに移行しないのが92.5%から98%なので、それほど心配する必要はありません。
てんかんに移行する発症因子は
1)熱性痙攣発症前の神経学的異常
2)両親(特に母親)・兄弟のてんかんの家族歴
3)複雑型熱性痙攣(i.焦点性発作、ii.発作持続が15分以上、iii.一回の発熱で複数回の発作、のいずれか一つ以上だがi.焦点発作が最も重要)
4)発熱しだして痙攣を起こすまでの時間が1時間以内
なお、これら発症因子があったとしても、初回の熱性痙攣から投薬を行うことはしません。てんかんに移行する割合が少ないこと、薬剤にてんかん発症阻止作用は認められないことがその理由です。
003
てんかんに移行する因子
引用文献
1)日本小児神経学会:熱性けいれん診療ガイドライン。2015年版
監督
原口良介(はらぐちりょうすけ)
hataguchi.jpg
唐津市消防本部消防署救急第一係
消防士長
消防士拝命:平成21年4月
救命士運用:令和元年7月
趣味:カメラ、動画編集
医学監修・解説
玉川進(たまかわすすむ)
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旭川医療センター病理診断科
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