120603初学者のための車両救助法(6:最終回)総合的な破壊

 
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基本手技

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初学者のための車両救助法

第6回(最終回)総合的な破壊

講師

後列左から:田中健治(たなかけんじ)・浦辺隆啓(うらべたかひろ)原太志(はらたいし)越前洋介(こしまえようすけ)

前列左から:加藤洲和也(かとすかずや)・佐藤純二(さとうじゅんじ)

著者紹介

(株)日産クリエイティブサービス 陸別(りくべつ)Proving Ground・車両管理課 レキュー隊

日産自動車北海道陸別試験場の安全確保と万一の事故に備える自衛レスキュー隊として2006年7月に結成。地元消防署や外部講師の協力を仰ぎつつ、現在6名体制で訓練に励んでいる。


初学者のための車両救助法

第6回(最終回) 総合的な破壊

初めに

第6回目は「総合的な破壊」を解説します。
緊急事態が発生した場合、周囲の安全を確保し、要救助者の観察をして適切な方法で救助します。車の破壊は時間的・空間的に要救助者の負担の最も少ない方法を選択します。

1.現場到着

図1
実際の事故現場に到着してみなければどのような現状かは詳しく分かりません。これから始まる現場活動の妨げにならないように、交通量がない場合はできるだけ路肩にハザードを付け停車し、交通量のある場合は消防車などで道を塞いで活動スペースを確保する必要があります。

2.二次災害防止

図2
救助活動の最初は安全確保からです。隊員への危険や活動の妨げになる物を排除し、活動がスムーズに行なえるようにします。活動中に発生した危険に対してもそのつど処置を行ないます。

3.活動方針

図3
隊員の安全が確保できたら救助活動の方針を伝達します。事故現場では同じ状況はないため、いかに安全迅速に救助ができる方法を模索し、器材の準備や救助方法について周知します。破壊器材を使用しての救助活動も念頭に置きますが、ドアを開放できる箇所や破壊せずに救出できる箇所を見つけ出すことも重要です。

4.車内進入

図4
ドアを開放することが不可能な場合は窓からの進入を考えなければなりません。鋭利なガラス片で救助者も負傷する可能性があるため、進入前には破壊面の保護を行います。

図5
救助者の安全が確保された後に進入を試みます。


5.傷病者の状況確認

図6
車内進入後、要救助者に接触してすぐに要救助者がどれほど危険な状態か判断します。非常に危険な状態なら要救助者に負担をかけても早く救出し病院へ搬送する必要がありますし、状態が安定しているのなら要救助者にとって最も安全な方法が選択できます。近代消防2011年6月号をご覧ください。

6.車両工作

救助を容易に実施できる箇所、要救助者への負担が極めて低い箇所など含めて、どのドアを開放するか、または取外すか選定します。次にヒンジ、ラッチどちら側から作業を行なうか決めます。ラッチの切断が第一選択ですが、明らかにドアを開けることができない状態や要救助者の受傷状態、また隊員の活動のしやすさを考慮してヒンジ側から作業を開始することもあります。

図7
ラッチ切断のため、スプレッダで押し拡げ作業を行ないます。車両の衝突でボディが変形しているので、ヒンジ・ラッチ付近に隙間ができる可能性が多く、スプレッダでの押し拡げが容易に実施できます。押し拡げの隙間がない場合は、かなてこや弁慶などでスプレッダの使用範囲まで隙間を拡げます。スプレッダでの押し拡げは、カッターなど切断器具の刃が入りまた隊員も目視にて確認できる状態まで行ないます。

図8
ラッチの切断を行ないます。ラッチの切断は、刃でストライカー全体を覆うようにして行ないます。切断の際刃が奥に届かずに手前の部分のみ切断されることがないように注意します。

図9
ドア全部の取り外しが必要なければ、ラッチ切断後にドアが開くか必ず確認します。その後、必要に応じてヒンジ切断に進みます。

図10
次にスプレッダでヒンジの押し拡げ作業を行ないます。ラッチ側同様に、スプレッダ押し拡げの隙間がない場合は、かなてこや弁慶などで、行為的に隙間を作ります。また図10のように、フェンダーを「押し潰して」隙間を作る方法もあります。

図11
カッターでヒンジ上部・チェックリンク、ケーブル、ヒンジ下部の4箇所を上から下に向って切断します。カッターの刃でヒンジ全体を覆うように刃をかけて切断を行ないますが、ヒンジの種類や衝突の影響で切断が困難な場合は、2段階に分けてヒンジ切断を行ないます。

7.車外救出

図12
要救助者の「脊柱軸の安定」を保つことと、「脊椎・脊髄損傷」の悪化防止を重点に置いて、用手による救出を第一選択にします。ストレッチャーを車両近くに移動し、すぐ要救助者をストレッチャーに乗せます。頭部保持を確実に行なえるよう順次交代し脊柱の安定を保ちます。事故車内からの救出後に観察し、「意識」・「呼吸」・「循環」・「全身所見」に異常がないかを確認し、急な容態変化をいち早く発見するよう心がけます。


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12.6.3/10:08 PM

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