211023応急処置アップデート the movie (15)頭部外傷

 
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基本手技

      雑誌 健康教室 2021年6月号p58-9

応急処置アップデート the movie

#15

 頭部外傷

 

今回は頭部外傷です。頭の外命に直結するだけに、保護者も神経質になります。重要なことは意識消失(脳震盪)の有無を確認することと、その有無を記録に残すことです。

目次

動画

 

   

001

一見して重篤な状態ならすぐ救急車を呼びます。心肺蘇生が必要になる場合もあります。

 

002

現在意識がある場合には、その子が頭を打った時の状況を覚えているか確認しましょう。記憶が欠けているようなら大きな外力がかかったことになりますので、保護者に連絡して病院受診を促します。

 

003

子どもはよく吐きます。悪心・嘔吐は重症度の目安にはなりません。

 

004

頭を打った後で出現する症状があります。最も恐ろしいのは頭蓋内で出血していて数時間経って意識障害を起こすものです。

 

005

そのため、保護者には24時間様子を見るよう伝えます。

頭部外傷アップデート

1.意識消失の確認

頭の場合、どんな小さなケガでも必ず確認しましょう。受傷後数時間経ってからの意識障害発生は、その前に必ず脳震盪を起こしています。旭川近郊のH先生によれば「明らかな重大症状は、救急車を呼んですぐ受診しますが、平気で話をしていても、受傷前後の記憶があいまい、覚えていないのが怖いなと思います。その子の性格(はっきり言えない、伝える能力が低い、オーバー表現など)も見極めつつ問診するのと、現場にいた友達や目撃者の話とのすり合わせが必要だなと経験上思います」。

2.学童期における頭部外傷

シンガポールからの報告1)では、頭部外傷で1年間にある病院を訪れた7~16歳の患者は1233例でした。平均年齢は6.6歳、男子が73%です。外傷の原因で最も多いのは落下(65%)でしたが、13~16歳に限ると交通事故の割合が高くなっていました。主訴は頭痛と嘔吐。患者全体の32%は入院を必要としており、また患者全体の22.5%は脳震盪を起こしていました。

3.頭部外傷後症候群(001), 2)

脳震盪後に起こる軽微な症状は頭部外傷後症候群と言われ、精神科領域の教科書にも記載されています。脳震盪を起こした人の15%に見られるものです。

症状としては頭痛、倦怠感、見え方の変化、体のバランスが取りづらい、めまい、不眠、神経学的精神的不調、気分のムラがあります。この症候群の90%は10-14日で消失しますが、さらに長引く場合もあり、3ヶ月を超えると慢性頭部外傷症候群とされます。また脳震盪を起こした回数が多いほどこの症候群になる危険性が高まることもわかっています。このため、一昔前とは異なり、部活などでの脳震盪後は厳重にフォローアップするようになっています。

 

文献

1)Ann Acad Med Singap 2021;50:119-25

2)Cara M Permenter: Postconcussive syndrome. StatPearls Publishing; 2021 Jan

 

 

 

 


原口良介(はらぐちりょうすけ)

原口良介(はらぐちりょうすけ)

 

監督

原口良介(はらぐちりょうすけ)

hataguchi.jpg

唐津市消防本部消防署救急第一係

消防士長

消防士拝命:平成21年4月

救命士運用:令和元年7月

趣味:カメラ、動画編集

 

玉川進(たまかわすすむ)

医学監修・解説

玉川進(たまかわすすむ)

tamakawa.JPG

旭川医療センター病理診断科

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