近代消防2021/8
今さら聞けない資機材の使い方
傷病者を包むシールド
A
廃材を用いた飛沫防止対策シールド
坂戸鶴ヶ島消防組合 坂戸消防署西分署 救急担当
目次
著者
名前:中澤伸英(なかざわのぶひで)
A_nakazawa.jpeg
所属:坂戸鶴ヶ島消防組合 坂戸消防署西分署 救急担当
049-285―1119
出身地:埼玉県坂戸市
消防士拝命年:平成4年4月
救命士合格年:平成18年
趣味:ビデオ鑑賞、バイクツーリング
1.はじめに
新型コロナウイルスの感染者に対しては救急車内の汚染防止のため養生シートを車内に張っていますが、出場毎の消毒や養生シートの張替えに時間がかかり、搬送後の業務効率が低下することが課題となっていました。アイソレーター装置の導入を検討したのですが高額であったため、飛沫防止対策シールドを廃材等で作成することを試みました。
2.作成方法
飛沫防止対策シールドは活動の妨げにならないよう、簡単に収納と展開ができるベビーカーの日よけを参考にトンネル型とし、限られた予算内で作成するため廃材や使用不能になった資器材を利用しました(A_001)。
・購入したもの:ビニール製養生シート3m×2m、農作業用トンネル支柱、クリップ、固定ボルト
・廃材、使用期限切れとなった資器材:破壊訓練で使用した玄関ドアのアルミフレーム、トーマスホルダーの固定用マジックテープ、気管チューブ内径8㎜
3本のU字型の支柱を扇状に開くようにするため、支柱の端末に使用期限切れの気管チューブを接続し(A_002)、破壊訓練で使用した玄関ドアのアルミフレームを加工し基部を作成しました(A_003)。
基部と支柱を接続し、ストレッチャーの左右フレームに接続(A_004)、養生シートを被せ(A_005)、支柱とビニールシートをクリップで固定(A_006)し傷病者を覆う(A_007)ようにしました。
A_001
使用した材料
A_002
支柱の端末に使用期限切れの気管チューブを接続する
A_003
破壊訓練で使用した玄関ドアのアルミフレームを加工し基部を作成
A_004
基部と支柱を接続し、ストレッチャーの左右フレームに接続
A_005
養生シートを被せる
A_006
養生シートをクリップで固定
A_007
完成
3.結果
作成に要した日数は1週間程度、費用は小売店で材料を購入し、500円以内で作成可能でした。
実用化のため外気温30度以上の晴天時にエアコンの効いた車内で1時間使用した結果、多少の閉塞感はあるものの体温やシールド内の温度変化は見られませんでした。
このシールドのメリットとデメリットは表の通りです。
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表1
作成したシールドのメリットとデメリット
メリット:
軽量でストレッチャーに固定できるため搬送時から使用できる。
車内全面を養生するよりも活動しやすく、養生シートの節約にも繋がった。
廃材を利用したため低価格である。
雨覆いとしても使用可能である。
同乗者への飛沫拡散も防ぐことができる。
デメリット:
屋外環境では風に弱く、破損の危険がある。
車内搬入時にシールドの支柱や固定部が車両に接触しないよう注意が必要である。
エアコンで室内温度を調整しないとシールド内が籠ってしまう。
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本来の用途ではない廃材等を使用していることで実用化には到りませんでした。しかし、作成の過程において感染防止対策の重要性を救急隊以外の職員にも認識させることができ、組合として既製品(A_008)の早期購入を決断させるに至りました。
A_008
購入が決まった市販品
4.考察
コロナウイルス感染症に対し、傷病者やその家族、また救急隊への感染対策として、試作品を作成したところ、エアロゾルは完全に防げないが直接的な飛沫防止対策には優れていたのではないかと感じました。また、感染防止対策の重要性を救急隊以外の職員にも認識させることができました。今後も感染防止対策以外の救急事案に対して資器材への工夫も凝らし、安全で安心な救急サービスを提供していきたいと考えています。
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